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楽しかった寒い思い出(1)

今は「凍ったバナナで釘を打つ」ニュースや動画があるので、北海道の寒さは全国に伝わっていると思うが、やはり、自分の愉快な体験を自分の言葉で残しておこうと思う。



■濡れタオルも耳たぶも

外で吐く息はキラキラって光って落ちた。今はダイヤモンドダストなんて洒落た表現をしているけど、要は、凍って落ちるだけの話。吐く息が凍るのだから、風呂上がりの髪の毛は、銭湯を出て5歩も歩かないうちにパキン!と凍る。触るとバリバリと音がした。次いで、濡れたタオルを両手でパタパタ2,3度振ると広がった形で凍ったし、片手で振り回すと棒状で凍った。それって、普通のことだけど面白かった。

一度だけ、遊びまわって帰ってきたら耳たぶが凍傷にかかっていたことがあった。つまり、耳たぶが凍ってる。凍ったものは温めると溶けるので、溶けたら耳たぶをちょっと切って水を出して一件落着(笑)。


■ルンペンストーブ

紋別北高は木造だった。冬の暖房は石炭ストーブでルンペンと呼んでいた。ストーブの場所は教室の入り口とは反対側の教壇近く。ストーブを置く床はコンクリートだったと「思う」。昼前の授業辺りから、ストーブの周りには弁当が並んだ。

弁当も描けばよかったなー。

教室の後ろの席は寒かった。何しろ、そのすぐ後ろには窓があり、雪が吹き込むほどの隙間があった。後ろの生徒たちは寒すぎて、先生の許可を貰ってオーバーを着て授業を受けたこともある。反対に、ストーブの傍の生徒たちは、真っ赤に燃えるルンペンの熱で「暑い、暑い」と笑った。

それを見ていた若い副担任の先生が、ある時ニマニマしながら熱伝道の話を始めた ――  「熱には放射、伝導、対流があり、ストーブの熱は対流によって後ろに流れるから、後ろも寒くない」 ―― と、そこまでは言い切らなかったが、一応、慰めてくれた。しかし、生徒は皆「寒い説明」と聞き流した。後ろが暖かくなることはなかったから(笑)。


■お湯もたちまち…

高1、高2のバレー部の先輩が、運んでいたバケツの水を廊下で零すと、すかさず「拭いてこい!」と笑顔で命令してきた。こっちも笑顔で「はい!」と返事をし、雑巾ではなく、バレー部らしく回転レシーブの要領で、背中で拭いて立ち上がると、体操着の背中はたちまちパリン!と凍った、というホントの話。

お湯も同じだった。放課後の掃除の時間になると、用務員室からお湯を貰ってくるのだが、ある日、廊下でバケツのお湯を零したら、一筋のお湯は見ている間にサーっと白く凍っていった。校内でもそのくらい寒かった。せっかく凍ったので、一度その上を滑って楽しんでから氷を片付けた。


■家の中では

靴底の雪が溶けて凍るから、朝、靴を履て出かけようとすると靴が動かない。力を入れて剥がすと、床に靴底模様の氷が現れた。

鉄の水道は8㎝位の太さだったのでは?

水道が凍るので、防止策として、寝る前に水道を勢いよく出してから栓をギュッときつく閉める。すると、ゴロゴロと水が落ちていく音がした。時々、「しっかり水を落としたかい?」と母の確かめる声がした。

これで一安心。でも、朝起きて水道が凍っていると、水道の周りにタオルを巻き付け、上から熱湯をかけて水道の中の氷を溶かした。

水桶の水は朝には凍っている。「おお、今日はしっかり凍ってるな」などと評価しながら、割って食べるのも楽しかった。

厳しい寒さだったけど、どれもこれも楽しい思い出だ。

(まこと)


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