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5章第6話(最終回)もし、ここに

【目 次】 


かくして、人生最大の無謀な冒険は終わった。


◇ ◇ ◇ 

もし、ここに

この一枚の写真がなかったら…

僕たちはみんな

同じ夢を見たんだね

と笑い合うに違いない。

それほど信じられない

自分たちでさえ信じられない

嘘のような出来事だった。



けれど、思い返せば

これまでの日々も

あの瞬間と同じくらい

幸せだった気がする。

 …


もしかすると

幸せとは

 どれだけ夢中で過ごす時間を持つか――

 そういうことなのかも知れない。

 ◇ ◇ ◇

 

エンドロール

  黒池のメンバーが深夜の食事をしてホテルに戻ると、ロビーに世界チャンピオンのアルーナス&カチューシャ組の顔がありました。目が合ったので千葉ちゃんが目礼すると、カチューシャが近寄ってきて「あれは楽しかったわ」と褒めて下さりました。続いて「私たちこれからみんなで飲み明かすのよ。あなたたちも来なさいよ」とお誘いしてくれました。

 世界チャンピオンからお誘いされるとは、どれだけ恐れ多いことでしょう!!

(お断り:この物語用にアルーナス&カチューシャさんのお名前を使わせてもらっています(笑))

 しかし、どれだけ恐れ多いお誘いでも、それを謙虚に断るような人物が、このメンバーの中にいるでしょうか。

 そういう訳で、全員、調子こいて、ホイホイとレストランに入って行くと、決勝、準決勝で踊っていたトップ・ダンサー達が飲んで騒いで、しかも、パートナーを代えて踊っているではありませんか! 

 その光景は、素人の黒池メンバーにはウィンターガーデンで見たどの試合より数倍楽しいものに思えました。

 その内にサルサの曲が掛かると、カチューシャが「あなた、サルサは?」と千葉ちゃんを誘うではありませんか。なんという優しい心遣いでしょう。

 すると、千葉ちゃんは「少しだけ」と言って踊り始めたものですから、誘った本人のカチューシャは驚き、そして、笑い転げて踊っています。すると他のメンバーも仲間同士で、中には大胆にも競技選手をお誘いしてサルサを踊り出したではありませんか! この様子にレストラン中が大騒ぎとなりました。

 

 スクリーンには「サルサも密かに練習してたのさ」と自慢げに語るメンバーたちの顔が大写しになっています。その後ろには、目を丸くしているプロダンサーたちの顔、顔、顔!

 おわり

「北国ダンサー物語」(作:神元 誠)


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