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愛猫Mに起こった奇跡😺

 それはまだM君が 先住猫に受け入れてもらえなかった頃の話
 先住猫はみんなファミリーで しっかり上下関係も出来ていて 1番年上の母猫ケケの規律に従って平和が保たれていた。その子たちは牧場猫。
 一方、子猫Mは拾われっ子。本当の母猫のおっぱいも知らないでしょうし、もちろん父猫なんての存在も考えた事も無いでしょう。
 人間に命を救われ 気がついたらスポイトから出てくるミルクに縋り付いていたね。もしかしたら人間にこそ 母親と離されたのかもしれないのだけれど。
 縁あってうちに来た可愛い子。慣れてくると私のジーンズをよじのぼって肩まで来て そのまま肩に垂れて眠ってしまったね。キッチンでは私の料理ができるのを肩の上からずっと見てて、もうきっとレシピも覚えたね😺
 ほんとに可愛いやつ。そんなMにテレビ出演の話が舞い込んで、なんとMの外の世界への大冒険を撮る事になったのです!先住猫ケケファミリーと仲良くなる為に!!
 そして最初は5分 外の空気に触れるだけ それから10分 また10分と 徐々に徐々にと時間は伸びて行った。うちに来て2か月くらい経った頃だと思う。身体付きもしっかりしてきて 怖がりのくせに外の草原や木々にも興味深々 Mの冒険は無事に撮れた。ケケファミリーとの進展を除けば。
 相変わらずケケ母さんにはシャーっと怒られ 近寄れないし、オスの猫には追いかけ回された。仲良くなれるとすれば同じくらいの子供猫に違いないけど、兄弟猫たちは戯れあってケケ母さんの近くで遊んでるから、仲良くなるのは至難の業だ。Mにはハードルが高過ぎた。仕方なく虫で遊んだ。
 
 テレビ撮影は 夜通し追いかけられて行われ 半年後に終了した。Mの可愛く冒険する勇姿は無事に放映されたけど、それから時を待たずして Mに事件が起きた。

 外に慣れたMは、ここのところ頻繁に外に出たがった。外にはケケ母さんとその子供たち。またその上の兄弟たちと太ったオス猫タヌタヌがいたのに。
タヌタヌに見つかると必ず追いかけられて 逃げて帰って来るのだけれど それでもMは懲りなかった。この日の天気予報は芳しくなく 夜半にかけて風雨が強まり 朝まで続くとアナウンサーは伝えていた。
「Mが帰って来てない」
「夕方、タヌタヌとケンカする声が聞こえていたね」
「大丈夫かな、M」
みんなで外に出てMを探して呼んだけれども 見当たらなかった。他の猫たちも誰の姿も無かった。牧場猫たちは良く分かっていて こういう時は牛舎の安全な場所に身を寄せ合って一夜を過ごす。だから心配は無い。
「Mも 大丈夫だよ。明日帰って来るよ」

 ところが、Mは帰って来なかった。雨は次の日もその次の日も続いた。Mは帰って来なかった。牧場猫たちは相変わらず みんな揃ってご飯を食べ遊んで昼寝して 何も変わらなかった。変わったのはMがいないという事だけ。
 心に穴が空いたというのはこんな感じの事か。1週間経ってもMはいない。Mのご飯茶碗とお水のお皿がキッチンの床に置き去りにされて ご主人の帰りをそのままずっと待っている。
 2週間が過ぎ 3週間経った頃 奇跡が起きた。畑仕事に向かった夫が 胸に茶トラの猫を抱いて 突然私の目の前に現れたのだ。
「ママさん、Mだよ!」
私の目から涙が滲んで ぐしゃぐしゃになりながら 話を聞いた。
「俺がダンプで通りかかったところで、中学生の女の子が2人で、道の脇の駐車場で なんだか軽トラの下を覗きこんでいるのが なんか妙で、よく見たら軽トラの下に茶色でカギ尻尾が見えたから Mだーって思って 急いで行ったんだ。そして軽トラの下の猫に向かって「ムー」って呼んだ!そしたらMがスタスタ出てきたんだよ。女の子たちはびっくりしてたけど、これおじさんの猫だからって言って 連れて帰って来た」
 後で分かったのだけれど 3週間前の風雨の日牧場から2キロも離れたビニールハウスに隠れたらしい。雨風で何処へも行かれず何も食べられず1匹で 隠れていたMを見つけてくれたのが1人の女の子。女の子は怯えるMに優しく餌を与えてくれた。毎日毎日与えくれた。だけど 親に飼う事は許してもらえなかった。そこで女の子は同じ中学に通う友達に相談して 飼ってもらえる許しを得たのだ。その子の家は彼女の家から8キロも離れた街だったが、女の子たちは乗り慣れている自転車の荷台に猫の入った段ボールを乗せて Mの新しい家族の待つ家に向かってそれを走らせた。自転車は、ビニールハウスを出発して牧場の前の道を通って 踏切を渡り県道に出た。そしてずんずん進み ある駐車場の近くに来た時に段ボールの口が開いて猫が飛び出した。そして猫は一目散に車の下に逃げ込んだのだ。女の子たちは手の届かない猫に成す術もなかったところに 牧場主の夫が通りかかってムーと呼んだ。まるで奇跡の連鎖でMとの再会が出来たのです。
 自転車の荷台に乗せられたM  きっと牧場の前を通った時に 牧場の気配と匂いで気付いたんだ 牧場が遠ざかっていく。そして頑張ったんだね、脱出!まさに本当の冒険!

それからMは、何が起ころうとも牧場の敷地内から
出やしない!ww


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