金運神社と呼ばれるところは結構多い。あちこち行かされることになる。はじめに行ったのは箱根の九頭龍神社。
毎月13日に行われる月次祭に行った。
箱根神社はコノハナサクヤヒメ様が祀られている。ツアーのパンフレットを見ていると、風を起こしては、そのページを出してくる。
「これに、行きたいんですか?」
と聞くと、ニコニコしている。行くしかない。
私は車の運転が苦手なので、出来るだけ公共交通機関で行くか、ツアーで回らせてもらう。
九頭龍神社の月次祭と箱根神社が回れるツアーを申し込んだ。公共交通機関で行けなくもないが、かなりアクセスが悪い。バスで行かねばならない。月次祭も行ったことないし、混雑するときいているので、慣れている人に連れて行ってもらった方がいい。私は姫神様に指定された場所に行きさえすればいい。戸隠の九頭龍神社は立派な龍が居ただけに、今回も楽しみだ。
バスの車内で予め封筒が配られる。祈願をしたい人はそこに記入してお金を入れて用意しておく。元箱根港に着くと、そこにはすでに物凄い数の人が列を作っている。そこに並び受付をする。受付を済ませたら遊覧船に乗る。1月の箱根は寒い。時折降る雪が寒さを加速させる。
箱根九頭龍の森という名の港に着いて、皆降りていく。一斉に同じ方向に歩きだすので、それについて行く。寒さも相まってキリっとした雰囲気がみなぎっている。雲が厚くて空に飛ぶ龍は見えないが九頭龍神社が近づくにつれて、龍の匂いが漂ってくる。
本殿がよく見える、割といい場所に立てたので、何が始まるのか見ている。寒い。しんしんと足から冷えていく。お腹と両手と3つもホカロンを持っているのに、温まらない。そうこうするうちに神主さんが4,5人現れて準備を始める。それまでガヤガヤしていたのが静まる。準備が出来たのか、祝詞が始まる。なんと、全員が一斉に祝詞を唱え始める。祈願の人が多すぎて、全員分読んでいたら時間が足りないので、複数人の神主さんが同時並行で祈願を読み上げていくのだ。私は祈願することもないと思ったが、これも経験と思い、金運上昇をお願いしておいた。耳を凝らして、自分の名前が呼ばれるのを待った。一斉に複数人が大きな声で違うことを言っているので、聞き取るのも大変だったが、自分の名前が呼ばれたことを確認出来た。なんかちょっと嬉しい。そんなに時間もかからず、終わる。あまりの寒さに凍りそうだったのは皆同じだったのだろう。なんか安堵の声が漏れ聞こえる。また、来た道を戻り、船に乗り、元箱根港に戻る。船の中の暖かいこと。ものすごく幸せに思った。

月次祭なので道が渋滞しているので、バスで移動は難しいので、徒歩で箱根神社に行く。
「ここにコノハナサクヤヒメ様は夫のニニギ様と祀られているんですよね?」
と尋ねると、そっぽを向いている。

箱根神社も凄い人数が来ている。この寒いのにと思うが、本殿に参拝する列に並ぶ。私の前のおじさんが、肩掛けの鞄にポメラニアンを入れていた。顔だけ出して、大人しくしている。参拝まで1時間くらいかかりますよと言われていたので、ひたすらポメラニアンを見ていた。本殿に近づいてくると、写真を撮り始める人が増えてくる。確かに立派な本殿だ。でも、周りに龍も見えないし、神様いるんですか?と聞きたくなった。すると、姫神様たちがクスクス笑いはじめた。
「笑ってないで教えて下さいよ。」
というと、今まで、姫神様の後ろに隠れていた年配の女性が現れて、落ち着いた口調で話し始めた。
「人間って欲深いでしょう?ここに並んでいる人も殆どは自分のお願いをするのよ。神様は、お金なんて要らないから、お賽銭はいくらでもいいんだけど、神様のいる所を守ってくれている人や、建物の補修とかお金が要るから、お賽銭を受け取っているの。なのにね、5円とか10円とかで、やれ金持ちと結婚させろとか、バカ息子をいい学校に受からせととか、豪邸に住みたいとか言ってくるの。これって、おかしいでしょ?そんなの真面目にきいてたら疲れちゃうでしょ。だから、こういう派手な本殿に人を引き付けておいて、強欲という名の呪詛というか、吐き出した悪い物をここで引き受けるわけ。もちろん神様にお願いをして構わないけど、こういう方法じゃないと思わない?」
もう、ぐうの音も出ない。
以前、ロサンジェルスに行ったとき添乗員さんが
「50円なんてチップ貰っても嬉しくないです。バカにされていると思ってしまいます。1000円からがチップです。」
と言っていて、日本人ツアーの参加者たちはドン引きしてたけど、そういうことだと思う。枕チップにコインを置いても受け取ってくれなかったし、お礼の気持ちはコイン程度では示せない。まして何かをお願いするなら、小銭じゃだめだ。
「どうしたらいいんでしょうね?」
と聞くと
「自分で考えなさい。」
と相変わらずの塩対応だった。
「私はタダでこき使われてるのに」
と言うか言わないかで、後ろからハリセンで叩かれた。
「ものすごく沢山のご褒美を受け取ってるだろうが、この罰当たりが!」
と怒鳴られた。姫神様たちはクスクスと笑っていた。

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