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『明治神宮 内と外から見た百年』を出版なさり、それを読んで、私はこれこそ比較日本文化論だと思いました…今泉さんは最初から日本の方から外へ目を向けて、英語でも本をお出しになった。

今日の産経新聞に掲載された、正論大賞、対談、からである。
受賞者である平川さんが、対談の相手に選んだ、私には初見である今泉さんが、私の隣県である岩手県出身である事も読了を促した。

日本国民のみならず世界中の人達が必読。
見出し以外の文中強調は私。
「霊の人」と評され面白く
ーこのたびは正論大賞の受賞、おめでとうございます
平川 
受賞記念対談はご意見番的な大家と行うのが普通でしょうけれど、私はこの機会に若い方とお話ししたいと思いました。
今泉さんは私が60歳で東大を定年退職する前の半年間だけ、東京・駒場の後期課程の比較日本文化論分科でお教えしました。
当時、東大の2年生で、30年も昔のことになります。 
比較日本文化論というのは、世界の中の日本を、外国を知った上で複眼で見て論ずるという学問的アプローチです。
私は「和魂洋才の系譜」を今から50年前に博士論文で書き、そうしたアプローチをずっと続けてきました。
本論に入る前に、今泉さんの学問的な遍歴といいますか、学問的関心をお話しいただけますか。

明治神宮で比較日本文化
今泉
平川先生、正論大賞受賞おめでとうございます。
過分な紹介をいただきましたが、私は学生のころからボンヤリしていて比較日本文化が何なのかよく分からないまま卒業しました。
その後、ご縁をいただき、明治神宮(東京・代々木)に奉職しました。
 
平川 
その前に国学院大学で神職の資格を取りましたでしょ。 
今泉 
はい。
30歳で明治神宮の研究所に奉職し、シンポジウムの開催などを通して再び平川先生に教えをいただく幸運に恵まれています。
この20年間、調査や執筆を通して内と外の視点から明治神宮を見つめ直す作業を自分なりに続けてきました。
そして今、50歳を過ぎて「これって比較日本文化ではないのか」と改めて気づいているという次第です。
 
平川 
今泉さんは平成25年に『明治神宮「伝統」を創った大プロジェクト』を刊行しただけでなく、同じテーマで英語の学術書をオランダのブリル社から出しました。
日本の神道が、大正から昭和初期に明治神宮造営で生きた形で受け継がれたことを、実に客観的に記述なさった。
この神道再生は日本国民の大事な歴史の1コマです。
昨秋は『明治神宮 内と外から見た百年』を出版なさり、それを読んで、私はこれこそ比較日本文化論だと思いました。
私は20歳代の、昭和20年代の末から6年間、フランス、ドイツ、イギリス、イタリアに留学したもので、出自は西洋学者のようですが、比較日本文化論を扱ってきました。 
今泉さんは最初から日本の方から外へ目を向けて、英語でも本をお出しになった。
実は私も同じブリル社から主著『Japan‘s Love Hate Relationship With The West』を出しました。
日本と西洋との愛憎関係、という題が関心を呼んで、かなりの売れ行きでした。
今泉さんとは、このような関係です。 
今泉 
平川先生の著作の中で私の印象に残っており、今も大切にしているのが『西欧の衝撃と日本』(講談社学術文庫)です。
先生の講義を受けるために買い求めました。
後に明治神宮から派遣されて英ロンドン大学に留学した際も持参し、現地で、学生時代の自分の書き込みを見つけたのです。
フランスの駐日大使、ポール・クローデル(1868~1955年)による明治神宮の描写で、先生が「日本人の神道観、天皇観を見事に表した」と書いておられるページに丸印を付けていたのが、ロンドンで目に飛び込んできたわけです。
私にとってこれが西欧で受けた日本の衝撃でした。
平川
私は比較文化史家と自称していますが、私の理想は一本の足は日本に下ろし、もう一本の足は外国に下ろす二本足の学者でした。
それだから日本も、天皇も、神道も、世界大の視野の中でとらえようと思いました。
いろいろ読み比べて、クローデルの神道観というのは非常に優れています。
私、実はフランス語で『西洋人の神道観』を刊行し、のちに同書の日本語版も出しました。
私は戦争中に理科教育ばかり受けた人間で、宗教のことなど分かるとは思っていなかったのですけれど…。 
私が『著作集』を出しますとき、各界の方々が「平川には文科系の深い共感と理科系の鋭い分析がある」「学術作品にして芸術作品」「政治、外交に携わる人も平川の本は読め」などとほめてくださいました。
そうした中で、今泉さんは面白いことに私を評して「霊の人」とお書きになった。 
「へえー」と思いました。 

「ゴーストリー」な日本 
今泉 
その背景を説明しますと、平川先生は神道について述べるとき、ラフカディオ・ハーンの「Ghostly Japan(ゴーストリー・ジャパン)」という言葉を訳して、「霊に満ち満ちた日本」と表現なさいます。soul(ソウル=魂)でもspirit(スピリット=精神)でもなく、しかも形容詞でghostly。
日本は霊に満ち満ちているという、神道を表すのにこれほど適切な表現はないなあ、ととても感動したのです。


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