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カーボンニュートラル時代の金属加工ビジネス(6)

金属加工業の企業戦略

前回の記事では、非調質鋼のもたらす変革(用途)について見てきました。今回は、製鉄面ではなく、製鉄メーカー以後、最終ユーザーまでのなかにある金属加工業の企業戦略について考えてみます。

企業の戦略は、過去の選択や経験が今後の選択肢や進むべき道を制約している面があります。

その企業の現時点でのポジションと将来利用可能な固有の機会の双方から強い制約を受けている。これは言い換えるなら、企業戦略は経路依存(path-dependent)性を有しているということである。

『イノベーションの経営学』,NTT出版,  2004, 第5章 経路:技術軌道を利用する より引用

これは、過去の選択や決定が現在及び未来の状況にどのように影響を与えるかを研究する概念で、関連性の高い概念として技術軌道という概念があり、しばしば絡み合っています。


先程、引用した書籍では、主要な技術軌道が5つに分類れされており、単純化しすぎる面は否めないものの、戦略立案の参考になります。

  1. サプライヤー支配型

  2. 規模集約型

  3. 科学依拠型

  4. 情報集約型

  5. 専門化サプライヤー型

自動車などは典型的に2の規模集約型であり、エレクトロニクスは3の科学依拠型に分類されています(エレクトロニクスは1の場合もとの記載もあり)。

非調質鋼を取り扱う金属加工業で考えると、おそらく5の特殊ニーズを満たしていく専門化サプライヤー型であり、その技術の主要な源泉は「設計」「リード・ユーザー」となっています。つまり、主要な課題は「ユーザーの要求をよく聞きながら、リード・ユーザーから学習し、新しい技術をユーザーの要求に対応させていくこと」(引用は上記に同じ)となります。

このような示唆から、非調質鋼の加工を担う製造は、カーボンニュートラルに向け次の一歩を踏み出すことが可能になります。

①リード・ユーザーとの強い絆
②顧客要求を満たす設計(おそらくはプロセス設計に力点が置かれます)

①に関しては、長年構築した顧客との関係性など、その源泉(その企業のQCDに関すること、非調質材加工後の材質調査のレスポンスの良さ、営業面の融通の利き具合など)を深堀しつつ、②使用シーンを見据えた材料性質を把握する力量を伸ばしつつ、QMSの質を高めていく、といった総合的な取り組みが必要になります。

こういった取り組みを通じて、現状のビジネスの質を高めつつ、新しい市場やビジネスチャンスに備えることが大切です。

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