12.習い事

 小さい頃の習い事はピアノの他にもいくつかあって、小学一年生の時に、お絵かき教室に行かされた。
私は絵を描くのは得意じゃない。
下手くそなのに好きだったりする。
誰が見たって下手くそなのに、なぜ、私をお絵描き教室に入れようとしたのか、謎。

お絵描き教室は、私は “森の中の教室” と呼んでいた。木が鬱蒼と茂っている中に家があった。
初めて母と一緒に行った時、5〜6人の子どもたちがいたように思う。
先生は年配の女の先生。

大きな真っ白のアクリル板みたいなキャンバスに、いろいろな色がつけられた絵の具のような液体を手に付けて、みんなで描いていく。

みんなはしゃぎながら、思い思いの色をキャンバスに乗せていく。
「楽しいでしょう?」
私はヘラヘラ笑って見せたが、ちっとも楽しくなかった。

だって…
全然知らない人たちと、打ち解けてもいないのに、いきなり手に色のついた液体つけて、何を描けと言うのだろう。
話もしたことがない人たちの中に、どうして私はここにいるんだろう
そう思いながら、描くのも躊躇していたら、
「こうやって描くのよ」
先生が自ら手に液体をつけて、真っ白なキャンバスに手をパーにして色をつけたり、指で何か描いたりした。

私も真似をしてみた。
紙とは違って、手触りがツルツルして気持ちがいい。
これが、知っているお友達となら、楽しいのかもしれない。
だけど…
ちっとも面白くない。

そんな私を見て
「またおいで」
と優しく私に笑いかけてくれた。

次からは一人でこの森の中に来なければいけない。
暗い暗い森の中のお家。

次の教室ても、同じお絵描きだった。
その後も頑張って通ったけれど、気が進まない習い事のせいか、この2回しか思えていない。
行き帰りの森の中のことはよく覚えている。

行きたくないなぁ…
絵を描くのは好きじゃないなぁ…
このまま帰っちゃおうかなぁ…

いつも歩きながらそんなことを思っていた。

どうにか辞める方向に持っていかないと、永遠と通わされる!!
ママを説得しないとッ!!

私が通っていた小学校は、今はもうない。
D大学附属の小学校。
この小学校では、クラブがあった。
放課後教室みたいな感じ。
私はクラブには入っていなかったが、お友達のMちゃんに
「ねぇねぇ…ヴァイオリンクラブに一緒に入らない⁇」
と、誘われた。
彼女は一人では入りづらいから、一緒に入ろうよと、毎日声をかけてきた。

そうだ!!いいこと思いついた!!

帰宅して母に言った。

わたし、ヴァイオリンクラブに入りたいの。
Mちゃんと一緒に。
ピアノも一生懸命頑張るから、お願い!!
でも、お絵描き教室は、ヴァイオリンの練習があるからやめてもいい?

母はそう簡単に首を縦に振るわけがない。
私は毎日毎日、母にお願いをした。
Mちゃんも毎日私を誘う。

やっと母の許しが出て、お絵描き教室を辞めることができた。
よかった!!
ヴァイオリンなら、頑張れると思う。

ママ、ありがとう♡

…続く……🎨

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?