平成31年度 問1 解答作成方法解説と解答例

設問

次の枠に囲まれた文章は、フランス革命期(1789年~1799年)において、当時のフランスの言語状況に関する問題を提起する議会での演説である。フランス革命は歴史学研究において、身分制社会にもとづく地方分権の社会であった近世という時代から、人間の自由と平等の原則にもとづいて中央集権型の国家を目指す近代という時代への転換点と位置づけられており、日本の歴史に例えるならば1868年の明治維新に相当するものと言える。そのフランス革命期には、ほかにも、古い行政区画(旧州)の廃止や、メートル法の採用などさまざまな改革がおこなわれていた。また、フランス革命期には、フランスを取り巻く国々との間で常に戦争状態が続いており、自由と平等というフランス革命の原則を達成するためには、対外戦争に勝利する必要があったことにも注目する必要がある。次の問1と問2に答えなさい。

問1 枠に囲まれた文章を読み、フランス革命当時のフランス社会において、30もの地方語があることがなぜ問題とされているのだろうか。図1を参照しながら80~100 字で説明しなさい。

<枠に囲まれた文章>

「わが国には、いまだにおよそ30 もの地方語が存在する」
 フランス語は、ヨーロッパの尊敬を勝ち得たし、1世紀も前からフランス語は、ヨーロッパにおいて権威のあるものとなった。私の目的は、フランス語にこの特質を与えた原因を求めることではない。……もはや、旧州は存在しない。しかし、いまだに、旧州の名前を思い起こさせるようなおよそ 30 あまりの地方語が存在する。おそらく、それらを数え上げるのも、無用なことではあるまい。バブルターニュ語、ノルマンディー語、ピカルディー語、ルシ語、ヴァロニー語、フラマン語、シャンパーニュ語、メッス語、ロレーヌ語、フランシュ゠コンテ語、ブルゴーニュ語、ブレス語、リヨネ語、ドフィネ語、オーヴェルニュ語、ポワトゥ一語、リムーザン語、プロヴァンス語、オック語、ヴェレー語、カタルーニャ語、ヴェアルネ語、バスク語、ルエルグ話、ガスコーニュ語。<中略>  数々の地方語に、コルシカとアルプ=マリティームのイタリア語、オ=ラン県・バ=ラン県のドイツ語をつけ加えなければならない。<中略> 誇張でもなく、600万人のフランス人が、特に、農村においては、国民言語を知らないということを断言することができる。それと同数のフランス人が、筋道の通った会話に耐え得ないこと、その結果として、国民言語を話すことができる人口が300万人を越えないこと、そしておそらくそれを書くことができる人口は遥かに少数であることも断言できる。

 こうして、さまざまな 30もの地方語によって、われわれは、言語に関してなおもバベルの塔(*注)状態にありながら、他方では、自由に関して諸国民の前衛を形成しているのである。(1794年6月4日)
 *注 パベルの塔:旧約聖書に登場するバベルの町に建てられた塔。神の怒りに触れて破壊された。
その際、神は人々の言語をバラバラにしたとされる。

(歴史学研究会編「世界史史料6」より作成)

図1

攻略法(共通)


  1. まずは設問を完全に理解

  2. しっかりと資料から重要なポイントを読み取り抽出して箇条書きにする(正しい分析・考察)

  3. その箇条書きの点をつないで(根拠の明確化)線にし、洞察を加えて面にして議論を構築(意見の的確な表現)

  4. 設定された字数内に落とし込む(論理的文章の構成)


ステップ1 設問を完全に理解する

「枠に囲まれた文章と図1を参照しながらからフランス社会における地方語の多さの問題点を80〜100字で指摘する」と書かれている。

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