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ファンタジー短編小説2

紀淡のリリー6


そうですか

それは頼もしい

番外地健が やって来たら

競争をさせて みるか

料理長は ほほえみ 合格と言った

番外地健とは

誰だろう

百合はそう思いながら

料理の下働きに 一生懸命 励んだ

それから一ヶ月が過ぎた頃


支配人 大変です

宴会部長の 北野純が

青い顔で 飛んできた

歌手の 西京はるみが 病気で

本日 出演叶わないそうです

コロナか

それでは コロナイほうがいいなぁ

支配人の寒いギャグに

救われながら

困りはてていた


踵|《きびす》を返し

流氷が 去ってゆくと

助惣鱈|《すけそうだら》の漁が 始まる

網走港の 春の出陣の 宴会である

大漁を祈願し のんで唄い

士気を高める 儀式である

芸人がいないと 盛り上がらないなぁ

困ったなぁ

このあたりに 歌手はいないし

その時である

支配人 わたしにやらせて下さい



包丁を持った 百合がいた

おい 包丁は置いてこいよ

支配人は驚いて 身を引いた

歌と阿波踊りの夕べ

紀淡のリリー

の看板をお願いします

カラオケは

北の漁場 網走番外地

そして唄入り

ペギー葉山の 南国土佐を後にして

百合はまっすぐに

目を輝かせて 答えた

<続く>




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