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ファンタジー短編小説2

紀淡のリリー7


漁師の宴は 実に楽しい

赤銅色に灼けた肌 澄んだひとみ

厚い胸板 そのくせに

男心の裏表 めっぽう弱い恋と人情

長老の乾杯で始まり

海明けを前に 活気に溢れている

オホーツクに咲く

銀鱗の華

スケソウが ごつごつやってくる


マイクを持ち はらはらしながら

宴会部長 北野純はステージに立った

ショータイム

本日のゲストを ご紹介いたします

紀淡海峡 遥々|《はるばる》と

由良の岬に 咲いた 百合の花

鳴門の渦に 引き寄せられて

踊るアホウに 見るアホウ

淡路島南淡連 若き踊り姫

南淡のリリー どうぞ


ひと昔前の 古い口上 演歌調

おどおどとした 司会者

あたたかい漁師達の拍手

小さな北のステージが

大きく盛り上がる

南国土佐を 後にして

ペギー葉山の 歌が流れる


ハァー ヤットセー ヤットセー

いちかけ にかけ さんかけて 

やっぱり踊りは やめられぬ

ねじりはち巻き 豆しぼり

南淡連の法被|《はっぴ》に半ずぼん

腰に印ろう ぶら下げて

網走港の 大漁提灯

大上段に エイヤと構え

女だてらに 

オットトットイ オットトットイ 見栄を切る

目元にっこり 口元ほろほろり

<続く>


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