逆転移

230815
本人から聞いて想像していた姿とは、かなり違うな、というのが率直な感想だった。
僕の中でのイメージは、火を吹かんばかりに怒り狂い、レスラーのような逞しい剛腕を振りかざし、それでいて他者の動きを敏感に察知するアンテナを持ち合わせた...

と、ここまで思い返して、ふと我に返った。そんな人間は、いないのだ。まさに架空の生き物で、どう考えても現実には存在し得ない。
ただ、彼女はそんな生き物がいると言った。確実に、彼女の家に、いるのだと。
それは僕の眼前の、150cmに満たないであろう小柄で薄化粧の女性の、隠された姿なのか。それともこの女性は幻術使いで、これから僕も化かされるのだろうか。
実は僕に相談した彼女の目に問題があったのだろうか。そう言えば、彼女に「僕はどう見えますか」と質問をするのを忘れていたことに気づいた。いや、そもそも彼女とこの女性が共犯という可能性もある。

数秒の間にそんな思考を巡らせながら、改めて、対峙する。この違和感が最後まで消えないで残るのか、気づいたら違和感を抱いたことすら忘れてしまうのか、ひどく方向転換を強いられることになるのか。

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