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追跡の必要性との葛藤

元警察官で、数回の転職を得て、現在はバス運転手をしている傍ら、講演講師として活動をしている者が、思ったことを書くつぶやきです。
私個人の見解であることをご理解の上、読んでいただけると幸いです。

パトカー追跡中の車衝突、3人死傷 助手席の人物立ち去る 埼玉(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

昨日辺りからのニュースで話題になっている件です。
警察は「追跡は適正な職務執行だった」と言うのが、現時点ではそれ以上のことは言えないと思います。
これから捜査しないと分からないことがありますし、現にまだ1名が逃走中ですから。

この種の事故で皆さんが思うのは、「追跡は適正・適法に行われていたのか」という事だと思います。

元警察官から言わせてもらうと、追跡に問題はなかったと思います。
最初(端緒)は交通違反であるので、停止して違反事実の確認をしなければなりませんが、停止命令を無視して逃走を図ったので、私個人的には交通違反以上の何か(無免許や飲酒運転、大麻等のクスリ)があって、警察に見つかるとやばいと思って、逃走したんだと思います。
交通違反だけなら、停止命令に従って、違反を認めて青切符をもらい、反則金を納付すれば終わりですから。
警察官に声をかけられるとやばいと思ったから、停止命令を無視して、逃走を図ったと思います。
↑これって、コミュニケーションで言う「非言語コミュニケーション」のひとつでもあるんですよね!

このケースの様に、逃走した場合、追跡を続けなければならないのか、どこかのタイミングで追跡を打ち切る必要があるのではないかと思う方がいるかと思います。
逃走方法があまりにも危険で、逃走車両をはじめ他の車両を巻き込む場合や、逃走車両をはじめ追跡する警察官に危険が及ぶ場合、ナンバーを控え、違反事実等が明確に確認できた場合等は、追跡を打ち切る必要もあると思います。でもどのタイミングで打ち切るかは、現場ことに異なるので、統一した見解って言うのはなく、警察官や現場の判断になるかと思います。

今回の件は、事故になり死者が出てしまったので、最悪な結果になってしまったと思います。
交通機動隊の覆面車を振り切ろうとしたのですから、そうとう無茶苦茶な運転をしていたと思います。その結果の事故です。
亡くなられた方にやケガをされた方には、お悔やみやお見舞いを申し上げます。
警察から逃げるって時点で、異常な行動をしているってことを、家族の方をはじめ、世間一般の方には理解していただきたいと思います。
何もなければ、素直に停止していれば、こんな事故にはならなかったと思います。
交通機動隊の覆面車から逃走しようとしたのですから、無茶苦茶な運転・逃走をしていたと思います。
交通機動隊は白バイをはじめ、追跡訓練や運転技術や、一般の警察官以上に厳しい訓練を受けているので、ど素人が白バイや覆面から逃げるのは無謀なことであります。

警察で、違反車両や不審車両等の追跡訓練をしているのかと思います。
結論から言うと、訓練はしています。
県単位で緊急自動車(パトカー等)の運転訓練をはじめ、選ばれた人は茨城県にある研修施設(警察施設ではなく、国土交通省所管の施設です)で緊急自動車の運転訓練を受けます。
私もこの施設で運転訓練を受けたことがあります。
訓練の中で、違反者等の追跡訓練もありました。
訓練を通じて感じたのは、違反車両等の追跡をはじめ、緊急走行(サイレンを鳴らして走る)は非常に難しいということです。みなさんが思っている以上に難しいです。
この施設の教官が言っていたのは、消防等は赤信号では一時停止すれば問題ないが、警察の場合は対象車両(違反車両や逃走車両等)が走っているから、追跡は難しいし、教える方も難しいと言っていたのが覚えています。
それだけ違反車両等を追跡するっていうのは、難しいし、容易でないことを理解して欲しいと思います。

追跡する方も、違反(容疑)車両を捕まえなければならないと言う使命感と正義感とともに、無謀な逃走をしている時は、追跡する必要性と打ち切る勇気等と葛藤しているのを理解していただけると、ありがたいです。

違反(容疑)車両の追跡もですが、予測できない事象に対応すること・予測できない人間の行動にどう対処するかって言うのは、「安全管理」につながるかと思います。
死傷者を出さない様にどうすれば良いか、警察官は日々葛藤しています。
これって民間企業の方(特に建築関係等)にも言えるかと思います。

私の講演では、警察官時代の実体験をもとに、安全大会向けの講演をしています
興味があるようでしたら、ぜひ「日本刑事技術協会」へ気軽にお問い合わせください!

一般社団法人 日本刑事技術協会
一般社団法人日本刑事技術協会 | Japan Detective Technology Association (j-keiji.org)

河野博紀 プロフィール
河野 博紀 | 一般社団法人日本刑事技術協会 (j-keiji.org)

#元警察官 #講演#日本刑事技術協会


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