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留置場の事故

元警察官で、数回の転職を得て、現在はバス運転手をしている傍ら、講演講師として活動をしている者が、思ったことを書くつぶやきです。
私個人の見解であることをご理解の上、読んでいただけると幸いです。

ちょっと遅くなりましたが、下記の事件がありました(URL参照)。
広島中央署で勾留中の警視正死亡、監視強めていたはずがなぜ? 事件の真相は闇に 管理体制の検証不可欠(中国新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

現職警察官の不祥事、かつ警察署長等を経験した幹部クラスの犯罪ということだけで、国民の方は許さないだろうと思います。
本当は生きて公判廷に出廷させ、犯人本人の口から真実を語ってもらうと共に、罪の償いや再発防止等の策を講じていくべき事件であります。
しかし本人が自殺してしまったため、真相は分からず、被害者への補償や再発防止策等も十分できなくなってしまったと思います。

この事件で出てきたのは、「特別要注意被留置者」という言葉です。
難しい言葉で分かりづらいかと思いますが、要は留置場で留置する際、
自殺等の恐れがあることから、特別に注意して監視しなければならない者と言った方が分かりやすかもしれません。

私は留置場での専従勤務の経験はありませんが、補勤(ほきん)と言う形で留置場で勤務したことがあります。
私が勤務していた時は「特別要注意被留置者」と言う言葉はありませんでしたが、それと似た様な言葉はあり、自殺する恐れがある者に対しては、特別な監視体制を取っていました。

通常の留置場では、勤務員による15分おきの巡回の他に、昼間は留置管理担当の幹部による巡視、最低1日1回は署長・副署長等の巡視があります。
当直体制になると、勤務員による15分おきの巡回の他に、当直幹部(警部補以上、署の規模によっては巡査部長以上)による巡視が行われます。

自殺等をする恐れがある者が留置された時、女性被疑者が留置された時は、勤務員による15分おきの巡視の他に、警察署の幹部や当直幹部による巡視の回数が多くなります。
私がいた県では当直幹部の巡視は、通常は2時間おきですが、上記の特異な時は1時間に1回は当直幹部の巡視が行われていました。
この辺は自治体によって多少違いがありますので、今回の広島の件が同じ様に行われていたか分かりませんが、似た様な態勢を取っていると思います。

自殺する恐れがある者については、房の出入り口にある遮蔽版を取り外して、対面に監視することもあります。
勤務員による15分おきの巡回の他に、対面監視は房の前に1人勤務員が張り付く形になります。留置管理係だけでは人数が対応できないので、交番や駐在所・自動車警ら班等に勤務している警察官が応援で勤務に就くことになります。これが補勤のひとつになります。
さらに人数が少なくなると、刑事課や生活安全課・交通課等の署内勤務の警察官が補勤に就くこともあります。

補勤に就くにあたっては、警察本部の担当課(たいていは留置管理課)から教養を受け、自殺等が発生した際の対応要領については学んでいるので、留置管理係以外の警察官が補勤に就くことは問題はありません。

今回の広島の件に関しては、「特別要注意被留置者」に対しての対応が適切だったかどうか、基本通りに巡視が行われていたか等が問題になるかと思います。
記事だけでは対面監視が行われていたかどうか、また勤務員による15分おきの巡回がちゃんと行われていたかどうか、署幹部・当直幹部等の巡視が適切に行われていたかどうか等が分かりませんが、これらのことを検証し、これからの再発防止策を取りまとめることがとても大切だと思います。
これは広島県警察だけではなく、全国的に考えなければならない問題であります。
広島県警察が検証をし、再発防止策等をちゃんと発表して行かなければならないと思いますので、マスコミをはじめ、県民・国民の方は注目して行かなければならない事件であります。

本当は、逮捕され起訴された被告人については、拘置所に移管しなければならないのですが、拘置所では収容人数に限界があることから、警察署の留置場を代用している問題もあることを知ってもらいたいと思います。
今回の被告人(被疑者)は、余罪があることから、警察での捜査の必要性があったことから、拘置所へ移管されなかったと思われます。

最後に元警察官の視点で言うと、現職の警察官、しかも警察署長を経験した幹部の捜査・留置等という者は、働いている者からしたら非常に取扱いづらいです。捜査にしろ留置しろ、警察の手の内を知っている人ですから、広島県警察の方は、本当に苦労されたと思います。
私も在職していた時は、現職警察官や警察OBの逮捕・留置と言った仕事をしたことがありましたが、本当に仕事しづらかったのを思い出しました。

講演に持っていただいた方は、
「一般社団法人 日本刑事技術協会」へ連絡をお願いします。
お待ちしています!

河野博紀の自己紹介

河野 博紀 | 一般社団法人日本刑事技術協会 (j-keiji.org)

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