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自分で「自分はなんとなく幸せ」と思えれればいい。だって、自分の幸せを決めるのは自分なのだから。

#老年学 #認知症 #幸せの形 #ライフデザイン #インタビュー #働く女性  

「これからどうしよう?」と迷ったときに何かのヒントを見つけてもらえればという思いで【L100】自分たちラボがご紹介してきた「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューエピソード。

今回は、会社の取り組みから超高齢社会に関心を持つようになり、そこで出会った人たちからたくさんの刺激を受けてきたAさん(仮名)のエピソードです。

Aさん(30代後半)*インタビュー当時
経歴:大卒後、和菓子製造販売の会社に入社。販売職を経て、人事の仕事に移り、その後高齢者施策の担当に。現在は一人暮らし。

高齢者について学ぶ中で出会った人たちから、自分をもっと解放していいんだという気づきを得たAさん。社外のプロジェクトで出会った人たちから新たな世界を見せてもらった様子を生き生きと語ってくださいました。それぞれの出会いに至った経緯とそこから見えてきたAさんの生き方とは?

―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?
浮き沈みなく、平坦だと思います。基本的に楽しい人生を過ごしていますが、そうは言っても、楽しい日もあれば楽しくない日もあるので、真っすぐな線ではなく、波々の線で描きました。
大学生の時は小学生の時が一番いいと思っていましたが、20代後半になって仕事で良い出会いがあってからは、今も普通に楽しいなと思えるようになりました。

Aさんが描いた人生曲線

老年心理学の先生方との出会い

20代:こうあるべきという考え方からの解放

―――今のお仕事を選んだのは?
小さい頃から和菓子が好きで、和菓子の魅力を若い人に伝えたいと思って、今の会社に入りました。

―――先ほど、20代後半に仕事でよい出会いがあったと言われたのは?
28歳で老年心理学の先生方と出会ったことです。自分が一番変わった、人生の転機と言えるかもしれません。

―――どういうきっかけで出会われたのですか?
会社のプロジェクトチームに選ばれたことが始まりでした。当時はお客様にご高齢の方が多いのに、高齢者について学ぶ機会がありませんでした。その機会をどう作るかをプロジェクトで考えていくんです。私は高齢者のことには全く興味がなかったんですが、先生方から学んだり、SNSで高齢者向けの活動をされている方をフォローしたりしているうちに、面白いな、と思うようになっていきました。高齢者の方のためにできることをしていきたい、それは自分たちのためにもなる、と考えが変わりました。自分が思っていない方向に興味が向いたので、この出会いは、すごくありがたかったです。

―――プロジェクトに参加して自分の中で変わったことは?
高齢者に興味を持つようになりました。興味を持ち始めるとその情報が目につくことを実感しました。自分が見えているものは、興味と関係あるんだなと気づかされた。
それと、「真面目にしなきゃ」「しっかりしなきゃ」という思いが昔から強かったのですが、もっと解放してもいいのかなと思い始めました。

―――それはどうしてですか?
先生方がとお話していると、自分の考えに対して、とても自然体に、「こういう別の考えもあるよね」と言っていただけることが多くて。正解は一つじゃないと気づかされました。
それと、このプロジェクトを通じて70代、80代の方とお話させていただく機会が増え、肩肘張らなくていいんだと思うようになりました。「こうあるべき」は自分の思い込みだったと分かったんです
年を重ねた何とも言えない多様な魅力にあふれた方と出会いました。一方で、人生の終盤になるにつれ、一人になっていく、人との関わりがなくなっていく方もおられることも知りました。その違いは何かと考えた時に、どうやって人と向き合って生きているかだと感じたんです。これが正解だ、と自分の価値観に固執して押し付けてしまうような人だと、だんだん周りから人がいなくなると思うので、人との接し方を考えなければと真剣に、切実に思うようになりました。

―――ご自身が「こうあるべき」と思うタイプだったと気づいた?
そうですね。ルールは守らなきゃというタイプでした。逆にルールは守るから、うるさいことは言わないで欲しいと思っていました。たとえば、学校の中で1人で休憩時間を過ごしていても、誰も何も言わないで欲しいとか。

社外での新たな出会い

30代前半:自分自身で次の場を探す

―――ほかに転機と言えるようなことはありましたか?
31歳で、認知症の状態にある方が、レストランでサービスをするという取り組みに参加したことです。
その活動は、元放送局のディレクターの方や、介護業界、広告代理店の方など、様々な業界の方が関わっているもので、社内にいただけでは、知り合いになれないたくさんの素敵な方々と出会えてとても嬉しかったです。
会社のプロジェクトは代替わりをして、ちょうどメンバーから外れた時でした。人生曲線の30歳過ぎで凹んでいるところです。会社としては、いろいろな人が関わった方が、プロジェクトの内容が社内に浸透するからということだったのですが、私は、自分にもっと能力があれば継続していけたのではないかと思って凹んでしまったんです。せっかく興味を持って取り組んでいたのにと、寂しい気持ちでした。でも、それだったら自分で面白い情報を仕入れてきて、会社に還元できるものがあったらいいなと思って調べている中で出会ったのがこの取り組みです。

―――どのように探したのですか?
SNSに「プレイベント」をやった情報があがっていて、すごく面白くて、自分も同じようにご高齢の方について考えていたのに全く思いつかないものだったので、「悔しいと思うくらいに、本当に素晴らしいと思いました」と主催者の方にお手紙を送ったら、「本格的なイベントをやるので話しませんか」と機会をいただいたんです。会社にイベント参加の可否を聞いたら、「ぜひ参加してきなよ」となり、参加させていただきました。
その方々とのつながりは今も続いています。かけがえのない出会いの一つだと思っています。会社にいるだけでは知らなかっただろう考え方や振る舞いを教えてもらえました。介護の方の仕事への考え方などを教えてもらい、自分の中の偏った思い込みがほどけていくために大切な出会いだったと思います。

―――具体的にはどんなことですか?
例えば、認知症の状態にある方が注文を取るので介護のプロの方がそばにいるんです。介護とは困らないように何でも先回りして代わりに実行することではなくて、その方が自立で行えることが今後もできるだけ長くつづくようにサポートすることだと教えてもらいました。仕事では、お客様が困る前に動くことを当たり前だと思っていたので、驚きました。

なんとなく幸せと思えるように

今後について

―――30代中盤で人生曲線が凹んでいるのは?
今コロナ疲れというか、いろんな制限があって、仕事もプライベートもちょっとやる気がなくなりました。介護職の方々の大変さも知っているので、それを想像するとモヤモヤ、ざわざわした気持ちになりました。ある種、少し休んだ上で、もう一度頑張ろうと思っています。

―――プライベートも含めて、今後の生活イメージは?
結婚しないと決めているわけではないですが、結婚したいと全く思わないんです。小さい頃からあまり「お母さん」に憧れなかったんです。母のことは尊敬していますが、家庭科が苦手だったし、子どももそんなに好きじゃない。だから結婚したいという理由がない。一人でいるのも楽しいし、仕事が終わったら気を抜きたいから一人でいたい。コロナ禍でテレワークをしてみて、ずっと一人は辛いなと感じましたけど、家で誰かと一緒にいるイメージはないですね。

―――働き方についてはどうしていきたいですか?
転職希望はなく、このままずっと1つの会社に勤めていたいです。人事で採用担当をしていたからかもしれない。1つの道を突き詰める方が楽しいタイプだと思います。
今の会社にいることで、老年心理学の先生方や外部の方と出会うことができました。その恩返しをちゃんとしたいと思います。

―――人生100年と言われますけど、先のビジョンは何か考えていますか?
あまり先のことを考えるのは好きではないです。漠然と、常に「何となく幸せ」と思える自分であろうというのが将来にわたる目標です。

―――「なんとなく幸せ」とは?
浮き沈みがあるから「絶対的な幸せ」というわけではなく、「総合的に見ると大体幸せだよね」と思って生きているので・・・。
子供の時から、常に「なんとなく幸せ」と思える自分であろうというのはありました。

―――そういう気持ちでいられるようになった経緯はあるのですか?
子供の時から人に恵まれていたからだと思います。あと、腹が立った時には怒れるタイプであることも関係しているのかなと。高校生の時、学校で不審者に暴行されたことがありました。咄嗟に“怒り“を発動し、犯人の隙をついて逃げたので、性的暴行は受けずにすみました。逃げた先で助けを求めた大人に拒否されたこともあり、事件後に複雑な想いを抱くこともありました。そのときに、「今こういう経験をしたのだから、この先こんな嫌な経験はしないですむだろう、神様はこれ以上嫌な経験はさせないですよね」と思い込むことに決めたんです。
あと、自分が幸せかどうかを決めるのは自分。自分がそう思っておけばいいんじゃないの?って。これは小さい頃から思っています。
こんな自分を認めてくれる、受け入れてくれる友人や仲間が常にいてくれるのは幸せだなと思います。

幸せの形は人それぞれ

女性たちへのメッセージ

―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
自分が選んだ選択でミスしても、それが最後ではない。また違う選択を試してみればいいと思います。そして、自分を大切にしてほしいです。
あとは、世の中に「勝ち組」「負け組」という言葉がありますが、それに惑わされないこと。幸せの形なんて、人それぞれ。「自分が幸せ」だと思えればそれでいい!それが一番大事だと思います。誰かに言ってもらうのではなくて、自分で。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか? 
私は人から「変わっている」と言われることがあるので、私がインタビュー対象で良かったのかなと思っています。
答えになっていないと思うのですが、インタビューを受ける前にイメージしていたことは、世間の価値観が変わって来ても、子供を生んだら育休をとるのは女性ばっかり、といったことがまだまだある中で、結婚してもしなくてもいいし、専業主婦でいくのもいいし、何か一つが正解だと思わないようにならなきゃいけない。それぞれに合った幸せを持てるようになってほしいなと思っていました。

(*文中の写真はイメージです)

インタビュアーズコメント

「なんとなく幸せ」という感じが、初めは掴みかねたのですが、浮き沈みはあるもので、「総合的に見たら幸せ」と思えればいいじゃない、人それぞれに幸せの形があるんだし、という考え方を受け容れてみると、ほんわかとした気持ちになってくるのが不思議でした。終始にこやかにお話されていましたが、それは社会人になって身に着けたとのこと。お年寄りも含めて、周囲の方のお話を吸収し、自分なりに思考しながら、自分の時を積み上げてこられたのだろうなと思いました。

【L100】自分たちラボ からのお知らせ

ライフデザイン研究会【L100】自分たちラボでは、働く女性に対するインタビューを行っています。詳細は『働く女性の人生カタログ』~プロローグ~をご覧ください。
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