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土の中の子供 書評

私たちは自分自身の光を見つけるまで、闇を掘り下げなければならない。
By カール・ユング
「無意識の痛みを解き明かす旅は、自らの光を見つけ出す旅である。」
By someone

.「土の中の子供」は、幼い頃に虐待を経験した「私」が無意識に求めていた
ことに気づこうとする主人公の葛藤を描いた作品だと考えられる。この本の冒頭で主人公
は故意に暴力事件に巻き込まれ、そこから意味を見出そうとする。また、コーヒーをこぼし、
そのコーヒーと自己同一化を試みるシーンもある。本の中の対話を通じて、主人公は自身の
命を危険にさらしてまで、無意識が何を求めているのかを探っている。

 精神医学者ポール・コンティは著書「trauma」で、トラウマを「感情的または身体的な痛み
を引き起こし、その痕跡を残すものすべて」と定義している。このトラウマはその後の人生
にネガティブな影響を及ぼし、行動を制限し、悪い方向へ導く。まるで頭に寄生するウイル
スのようだ。特に幼少期にはこれが起こりやすい。本作の主人公「私」や登場人物はまさに
トラウマを感じており、幼少期の体験が自傷行為を及ぼし、 また白湯子はアルコールに依存
している。彼らの体験は、脳の無意識の部分を大きくし、意識的な部分を制限している。
ポール・コンティによれば、このトラウマから解放されるためには、無意識が作り出した幻
想とそれに対する解決策を自己探求によって掘り下げ、見つけることが必要だ。主人公の
「私」は、それに対する答えを必死に探し「克服」という形を見つけた。彼は、ある意味で
は幸運だったのかもしれない。他の解釈によっては破滅にも行きかねないのだから。 例えば、
ドイツの元指導者ヒトラーも幼い頃に虐待を受けた。彼はその子供時代の経験から、自分が
生きる世界は安全ではないと感じ、他の人種を迫害することで、幼少期のわだかまりを消そ
うとしたが、それによってさらなる破壊をもたらした。同様に、ロシアの指導者スターリン
も非常に貧しい環境で育ち、何人も処刑したが、その行動は彼の幼少期の不足感に由来する
ものだった。

 私たちは誰しも子供時代のわだかまりを持ち、大人になってから無能間や自己の不完全さ
を隠そうとするナルシストになることがある。私たちの無意識の部分は、知らず知らずのう
ちに脳内で独自のストーリーを編み出す。この本の主人公「私」はその極端なトラウマを描
き、子供の頃に形成された無意識に縛られ、それにアクセスして答えを探すことで、私たち
の意識には上らない考えにアクセスする手助けをしてくれる。私にはそう感じられた。

土に埋められた幼子の声、
ささやく無意識の深淵を抱いて、
暗闇の中で求めた光は、
痛みの記憶、抗えぬ過去の証。
散らばるコーヒーの滴に自らを見て、
救いを求める各章の対話、
虐待の影が踊る静かなる夜に、
主人公は自己と向き合い、問い続ける。
トラウマの鎖を断ち切る旅、
ポール・コンティの言葉に導かれ、
幻想の迷宮を歩き、真実を探す。
解放への鍵、自己探求の道。
過去のヒトラー、スターリンの影、
子供の心に刻まれた恐怖と欠如、
彼らの選んだ解は、世界を震わせた。
しかし「私」は別の道を模索。
内なる子供の叫びに耳を傾け、
無意識の海を航海する。
悩みを解き放つその日まで、
「私」は闇に光を求め続ける。

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