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逃避行

好きな人ができた。とはいえなんだか本物の恋心と違う。相手を知っていくと壊れてしまいそうな、付け焼き刃の恋心。
ただ2年ぶりに降ってきたフレッシュな気持ちをなるべく壊さず観察していたいと思った。まるで流れ星のようだ。

つい最近流れ星を見た。深夜、四国の田舎で、首が痛くなるぐらいに上を眺めた。星で埋め尽くされた空を見て思春期にきびみたいだと思った。いくつもの流れ星はあまりにも強く発光していて、中学の理科の授業で見た燃やしたマグネシウムを思い出した。

私は東京生まれ東京育ちで、つい最近まで東京を出たことがなかった。東京にはなんでも揃っていて、日本で1番東京が楽しいのだろうと思い込んでいたから、東京を出ようと思えなかった。

初めて自分の意思で東京を出たのは今年の4月だ。名古屋と京都に行った。その時のことはあまり覚えていない。たくさんのことがありすぎて、帰宅した瞬間全て忘れてしまった。けど名古屋や京都って案外近くで、世界中どこだって行けるんだと気づいた。

逃避行が好きだ。日常で負荷がかかると私は自傷行為や衝動買い、やけ食いに走る。そして限界になると逃避行をする。

10月の頭にまた京都に行ってきた。夜行バスに乗り込む瞬間、乗ってから目的地に着くまで、移動時間はとにかく何も考えなくていい。過食嘔吐を繰り返す人が、食べて吐くまでの間無感情でいられることを良しとする、そんな気持ちに似ている。

京都は人がひどいくらい優しくて。人と接していて辛いことが何ひとつなかった。だからこそ自分の稚拙な醜さを認知させられてつらかった。はじめて血が出るまでリストカットした。次の日、本当に死ぬことを考えながらも東京に帰ってきた。

私はストレスをうまく逃すのが苦手のようで、すぐ自傷したくなる。みんなどのようにストレス発散してるのだろう。きっとみんなは人と話したりカラオケしたりするのだろうと思うけど、私は「今」辛いことがあったら「今」楽になりたいのだ。明日の朝まで待てないのだ。
だし、カラオケしても人と話しても自傷してしまうのだ。どうしたらいいのだ。

いつでも逃避行がしたい。仕事で怒られた帰り道は新幹線に乗りたい。課題に悩んでいる今も新幹線に乗りたい。将来が不安で江ノ島に行きたい。終電に乗るなら夜行バスに乗りたい。遠くに住んでいるあなたに会いたい。何もなんとかならないのだけど、今だけ忘れていたいよ。

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