ギョロ目ばぁと直視じぃ。
毎朝同じ時間に子供達を保育園へ送る。
3人いるので徒歩とベビーカーで向かう訳だが、10分ほどの道のりで皆んなと同じように10分ほどの中でも毎日同じ顔ぶれを見るようになる。
ギョロ目ばぁという60代くらいのおばさんがいる。目がぎょろぎょろしているので密かに心の中でそう呼んでいる。
歩き方にも特徴があり、なんというか、ひょこひょこ歩く。ギョロ目ばぁを覚えたきっかけは1年ほど前にその当時はまだ娘2人を保育園まで届けに行く道中に声をかけられたのだが、
「ふたり??ふたりなん?」「ふたり?」「ふたりなん?」
と子供は2人か?と言う質問を低音ボイスで二度三度言われた時にちょっと怖かったので覚えている。
「はい、2人です。」
と、見たらわかるやろが的な雰囲気を出しつつ冷静に対応した。
もう1人直視じぃと言うこれも60代くらいのおじさんがいる。
どこにでもいそうなサラリーマン風のおじさんだが、子供を連れているところに出会うとものすごく子供達を直視する。横断歩道で本当にずーっと見てくる。ちょっと怖い。
横断歩道で出会うだけで行き先は別なのだが、横断歩道を渡り切ってもまだ見てる。
ちょっと本当に怖い、と言うことをXで呟くと、それたまにあるんですよ。とネットの友人が教えてくれた。愛着障害?なるものらしい。怖いので睨み返したりしたこともあったが、それを聞いてなんだか悪い気がした。
でもそれ以降も会えばやたらじっと見てくるのでやっぱ怖いもんは怖い。
つい先日、同じように子供3人をベビーカーと徒歩で連れて保育園まで歩いていると、いつもの交差点に救急車が止まっている。
何事かと思うと人が倒れており、数人が心配そうに囲んでいる。
僕も心配になり近づいて声をかけようとすると倒れているのはあのギョロ目ばぁだった。
ギョロ目ばぁが地面に倒れていた。
僕が、「大丈夫ー??」
と声をかけると相変わらずの低音ボイスで
「もう・・・頭が真っ白で・・もう・・」
と言う。頭の前で手をパーでヒラヒラさせて言う。
そうしていると若い女性が近づいてきて「今救急車を呼びました。もう来ると思いますが最初に声かけられた方は事情を説明できますか?」
と「はい、わかりました、大丈夫です。私がいます。」
とハキハキした声で返事をした男性が、あの直視じぃだった。
いつも黙ってじっと子供達を見ている様とは段違いにハキハキと、自分が責任を持ってこの場を見ますと言った口調で喋っている。
もちろんこの2人はただの僕の登場人物なだけで赤の他人。
少しだけ呆気に取られながらも、僕は僕で子供達を保育園まで送らなければいけないので「じゃ、お願いしまーす」と言ってその場を後にした。
僕は他人をたかが第一印象で決めつけていることに少し後悔した。
数日後、またいつものように直視じぃと出会えばいつも通り子供達を気持ち悪いくらいに直視してくるし、救急車で運ばれて心配だったギョロ目ばぁもいつも通りのひょこひょことした足取りで横断歩道ですれ違う。2人とも僕のことなど1mmも認識していない。
別に後悔するほどのことでもないか、と思った。
なんでもない日常の話。
大阪で絵画制作や美術活動をしつつ、ARTspace&BARアトリエ三月を運営しています。サポート頂いた分は活動費やスペース運営費として使用させて頂きます。全ての人がより良く生きていける為に 美術や表現活動を発信し続けます。