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そんなこと起こってない日記を書いてみた

この日記はプレイバック・シアター・ラボで行われるオンラインワークショップゆりうららの8月の内容「そんなこと起こってない日記」を発表しあうために書いたものです。


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石川県に旅行に行った。

ぜひとも行ってみたい場所があったのだ。
真脇遺跡。

縄文時代前期から後期の間にあったとされる、巨木が輪になって建てられていたとされる遺跡だ。

昔から巨石や巨木が積み上げられて残っている場所には惹かれている。たとえばイギリスのストーンヘンジ。これは巨石を積み上げ夏至の太陽の角度なども計算されて作られていたらしい。そこで何が行われていたのか、知る由もないけれど、イギリスに行くとなった時、真っ先に行き先にいれた。



真脇遺跡は能登半島の突端から少し入江に入ったところにある。
そこではイルカの骨がたくさん出土し、日本最古の仮面も発見されたという。
その輪の中に入って空や海を眺めてみたかった。

8月の初め、石川県は台風の影響もあってすごく暑かった。フェーン現象で37度、38度という気温。
こんな中、遮るものが何一つないところにある遺跡に行く人は我々だけだった。
ふらふらしながら近づいて行った。
大きな木が輪になって建っている。ただそれだけの遺跡だ。

吸い寄せられるようにふらふら歩いていくと、巨木のてっぺんに動くものがあった。鷹だ。鷹がこっちをじっと見ていた。
相当近づくまで鷹はこちらを見たまま動かなかった。

とうとう着いた。木の柱を触るわたし。でも、これだけではないなと思った。何かもう少しある、でもそれはなんなのだろう、経験なのか、何か情報を集めねばならないのか?

わからないままじっとしていると、友人がこの中で一人ずつ踊ろうといった。
この暑さなのに、まず友人が踊り、わたしはその動画を撮った。
次はわたし。



輪の中でじっとしていると地面から湧き上がってくるものがあった。それはエネルギーのようなものだった。それによって少しずつ自分の体がうごめいていく。自分ではコントロールができない。やめられない。ちょっとしか動けないが、止めることができない。
いつのまにか鷹が頭上にやってきた。2度私の上を飛んだ。踊っているわたしはその影しか見えない。
ふと、ここに来てから感じていたのは、どうやら何かに見られているという視線だと気づいた。

鷹だと思っていたけれど、どうやらそうでもないらしい。
なんなのだろう。
周りは見渡す限り草原で、そこに人の気配はない。
なのに、視線を感じるのはなんなのだろう。
いきなり舞は終わった。鷹も飛び去った。

我々は我に帰ったようにいきなり暑さを感じた。
そこから歩いて10分くらいのところに資料館があるのでそこに避難した。
資料館ではそこで出土されたものや昔の暮らしなどが展示してある。
涼をとりながらゆっくりと展示を見ていくと、そこで一つのものと目があった。
仮面だった。土で作られて、顔は左半分しかない。目は吊り上がっていた。顔のまわりには、刺青のような線が何本も入っている。日本最古の仮面だという。目はくり抜かれてないのに、そこからの視線があった。
感じていた視線はこれだったと気づいた。

これを見届けるためにここまできたのかと何故か思う。

そこでようやく気が済んだ。