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「ぼくたちの哲学教室」をみる

見るのは2回目。
1度目は去年の秋。
今回は九度山町で上映されるということでもう一度見ようと足を伸ばした。

2度見ても全く飽きない。むしろ色々なことの確認をしたり、もう一度感心したり。
とにかくすごいドキュメンタリー映画だなと思う。

ここからは少し映画の中身の話をします。

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北アイルランド、ベルファストにある4歳から11歳までの男子校。
ここでは「哲学」が主要科目になっている。

ベルファスト北部には低所得者層が多く住み、プロテスタントとカトリックの住民の対立が長年続き、2001年には暴動にまで発展した。

今の生徒の親はその時の暴動のことを経験しているものが多く、哲学の授業をしている校長先生も若い時の後悔をもつ。

その校長先生と子どもを中心に映画は進む。
血気盛んな男子校。
何度も小さな暴力事件が起こる。
それに対してはダメなことはダメ。
ルールを破ると停学処分や、一週間友達と遊ぶことを禁止させられたりの
罰が下される。
その度に校長が何度も何度も問いを与え、考えて答えを導き出す彼らを励まし続ける。
自ら考え、言語化する訓練を繰り返し行う。

この校長が革新的に子どもたちや親に哲学の授業を行う一方で
スクールカウンセラーのような役割をする女性の先生の動きも素晴らしい。
生徒と二人きりになり
「今どんな気持ち?」
「何が一番最悪?端から上げていきましょう。そしてその対処法を一緒に考えていきましょう。」
「あなたが一番大切なものは?」
と生徒との対話を繰り返す。

校長先生は子どもたちから言葉を引き出し、
昔の人も同じ考えを持ってる人がいるよ!と、有名な哲学者の言葉に当てはめていく。

女性の先生は、子どもたちの言葉をきき、励まし、次のステップを共に考える。
それぞれのやりたいことがはっきりしていて、とてもいいチームワークになっている。


そんな中、生徒は同じ喧嘩を繰り返す。
親に「やられたらやりかえせ!」と言われるからだ、という男子生徒。
その後、その学年の哲学の授業で
「そろそろ自分の頭を使え。何かを言われたら聞き返せ。疑問に思え。でも、と問い返せ。みんなの家族は昔辛い思いをした。
暴力は暴力しか生まない。君たちにはそれを止める力がある。君たちにやって欲しいのは親の頭に入り込んでなぜと問うこと」
と厳しい口調でいい、
そして、実際に役割演技として生徒に父親役、校長が自ら息子役を皆の前で演じる。

〜一部抜粋〜

息子:今日学校で殴られた
父親:なぐりかえしたか?
息子:いいや。
父親:やり返せと言っただろう!
息子:親父は殴り返すとどんな気持ち?
父親:自慢と心残りが少し
息子:どんな心残りか教えてくれよ
父親:昔、誤って違う相手を殴った
息子:どんな気がした
父親:いい気はしない
息子:どんな気持ち?教えてくれよ
父親:申し訳ない・・・悲しい気持ちかな
息子:俺もそうなんだ。なぐった相手と同じ気持ちになって。それが嫌なんだ。昔は厳しい環境だから殴ったんだろうけど、俺は誰も殴りたくない。先生や仲間に相談して解決したい。親父とも話したいけど殴れと言わないで欲しい。
父:そうか、わかった。
息子:本当にいいの?
父:イエス!
息子:俺のこと嫌いにならない?
父:まさか!
息子:今も自慢の息子?
父:ああ!
息子:親父、大好きだよ

父親役の男の子は照れている。


後半では学校がコロナでロックダウンし、それが明けてからの子ども、たちの生活は一変していることが授業の中でわかる。
ネット上でのいじめ、性被害(未遂)、暴言、中傷。
どんなことが起きたのかを発言してもらい、
先生は、よく戻ってきた、よく乗り越えたと励ます。

この地域は薬物依存になる子、自殺をする子どもの数が多いという。
映画の中でも自殺した子どもの家を見舞う場面がある。

自ら問うていく力を養いながら、
子ども自らの力で身を守れるように大人が力を尽くす日々が映し出された映画だった。

すごい映画だった〜!!

何度でも見たい。