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カルト宗教が牙をむく時・9~翻弄される宗教2世

【救出されたオウムの子どもたちの行方】
1995年4月「児童福祉法25条・要保護児童発見者の通知義務」により、オウム真理教の教団施設から児童112人が一時保護されました。
要保護児童発見者は山梨県警など。
通告・保護をした判断基準は『劣悪な環境での栄養不良、義務教育の問題、保護者の監護不適切』でした。
子どもたちは親から隔離されて全く別の施設で集団生活をさせられていました。子ども担当の信者が面倒を見ていましたが、食事や勉強、修行などすべてオウム真理教の教祖・松本智津夫の教えを中心にした環境で育てられていたのです。

子どもたちが保護されてからおよそ2年後の1997年、私はオウム真理教の在家向け勉強会に来ている児童が多いことに気付きました。両親や父母などのどちらかに連れられて道場に来ているのです。
年齢はそれこそ乳児から2歳、3歳、小学校低学年の児童もいました。この中には95年に一時保護された子どもたちもいるのではないかと思いました。

厚生省や児童保護施設に取材をしてわかったのは、保護児童を退院させる基準に信仰心は関係ないということでした。
各児童相談所の児童福祉司や心理判定員が判断して里親や、親元へ帰します。その時『引き取る側がオウムを脱会するしないは判断基準には関係ない』ということでした。栄養不良や学校の不登校などの問題がなければ、オウムの教祖・松本智津夫を信仰していても、問われることはないのです。

アフターケアは児童福祉司が家庭訪問など個別指導で対処をしているとはいうものの、通常の虐待事件などでも慢性的な人員不足で手が回っていないと見受けられるケースもあります。当該家庭を訪問しても子どもに会えない、または引っ越してしまって行先も不明というケースも起こり得るわけです。
オウム真理教被害者弁護団の弁護士などに話を聞くと、精神面の歪みや衛生、健康面でのケアはされているが、「オウム」の宗教面に関しては踏み込んでいない。重要視してケアをするべき。
しかし児童相談所での「オウム」のマインドコントロールに対するカウンセリングは行っていないとのことでした。

実際にある支部道場を取材すると、1995年当時3歳で保護された子どもと、その両親が出入りしていることがわかりました。
両親は道場の近くにアパートを借りて働きに出ていました。
道場の信者に話を聞くと、子どもの両親はオウムを脱会したと親族らに噓をついて修行を続けているのだといいました。出家をやめて在家信者になったからといって、一生懸命働いてお布施をして功徳を積んでいるから宗教的なエネルギーは決して低いわけではないということでした。
子どもは5歳になってもオウム以外の子どもと遊ぶことは許されませんし、テレビや漫画、ゲームもさせてもらえません。小学校に就学しても両親がオウムと決別しない限り友達を作ることは難しいでしょうし、多くの自由を奪われたまま生きることを強要されるのです。
この家族がその後どうなったのかはわかりません。
いま連日報道されている統一教会・宗教2世の訴えを聞くたびに思うことがあります。あの時オウムの子どもたちの一時保護は、信仰という心の問題に少しでも踏み込むべきだったのではないか。保護施設を出た子どもたちのその後をきちんと見守って対処すべき問題を、ないがしろにしてしまったのではないか。自問自答する日々が続いています。

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