鼻毛は最強のウイルス防御である

2020年3月に子宮体がんで手術を受け5月から抗がん剤の投与を始めました。
基礎疾患に1型糖尿病を抱え、次々と合併症に見舞われる初老女の闘病記です。
一度点滴を打つと２週間は体を起こすのも辛く、ほぼ寝たきりの状態が続きます。副作用ですっかり鼻毛とまつ毛が抜けてしまいとても困っています。
エアコンの風が直接鼻の奥を直撃し喉まで一直線。ホコリも直接入り朝は喉がカラカラで咳き込んでしまいます。まつ毛もないので目にゴミが入ってゴロゴロ痛い。
１日中ステイホーム、なのに何度もうがい手洗い目も洗い…這いずるように床のホコリをウェットシートで拭き掃除しています。
鼻毛は最強のウイルス防御です。その兵士を失った私は鼻の孔や目の周りにワセリン、馬油などを塗って防御しています。抗がん剤が終了した後もしばらく毛は生えてこないと思うので、外出には「つけまつ毛」が強い味方になるのではないかと思って物色しているところです。
副作用でもっとも目に付き精神的ショックも大きいのが頭髪の脱毛です。
医師も看護師も薬剤師も、口を揃えて言っていたのが
「このパクリタキセルという薬は必ずゴッソリ抜けます。脱毛に向けて髪を短く切って準備したほうがいいですよ。帽子やウイッグもカタログとサンプルありますから」
ほとんど例外なく抗がん剤を打って１～２週間で抜け始めるというので、退院してすぐよろよろと美容院に行きました。
美容師さんに「抗がん剤でこのあと脱毛するので短くしたいのだけど、どこまで切ったらいいですかね、そういう相談受けたことはありますか」と相談しました。
いきなりがん治療の話をするのはかなり勇気が必要でしたが、美容師さんはすぐヘアカタログを持ってきてくださいました。
「グレーヘアーの女性も意外と最近はやりのツーブロック多いんですよ」と楽しく談笑。
そして私の襟足の毛流を見て「この生え方なら短く刈り込んでもチクチクしませんから大丈夫ですよ」ということで方針が決定。
入院生活で伸び放題だった髪をすきばさみで刈込みベリーショートにしてもらいました。気分もすっきり前向きになりました。
美容師さんありがとう。感謝の気持ちでいっぱいです。髪とファッションの専門家ですから、思い切って抗がん剤の治療相談をして本当によかった。

スキンヘッドのお手入れ

毛髪がなくなったら頭は何で洗うのが良いのだろう。ふんわりしなやかさらさらシャンプーを使う意味なんてもはや無いわけだし、ボディソープで頭を洗おうかと、これに関してはネットでいろいろ調べました。
免疫力が弱っている頭皮には普段使うボディソープなどは刺激が強く、保護バリヤーの皮脂まで汚れと一緒にはがしてしまうそうです。
スキンヘッドになって初めてわかったのですが、頭皮はとても柔らかくて傷つきやすいのです。顔の皮膚よりもフニャフニャした感じかもしれません。
夫がいうには「ちんちんの皮とか赤ちゃんのほっぺと同じくらい」
いや、その2つを同列に扱うのはどうかと思うよ。
夫の個人的な質感はさておいて、刺激の弱いベビーシャンプーがよいとか、頭は顔の皮膚の延長なのだから洗顔せっけんでよいとか…強い刺激はよくないらしいことはわかった。ぬるま湯で優しく洗い流すだけでも清潔を保てばよいらしい。
私の結論は、皮膚のヒリヒリ感が落ち着くまではぬるま湯、しばらく様子を見てから無添加の固形石鹸を泡立てて洗うことにしました。
洗った後は保湿ローションやクリームなどを塗って保護が必要です。
夏の紫外線や冬の乾燥から守るには保湿が第一。
山林の樹木を伐採すると山の保水力が失われるのと一緒で、毛根の無い皮膚は保湿力が低下しているのです。

山笑う。育毛マッサージ考

毛髪が抜けてしまったら、あとは抗がん剤が終わるまで耐え、毛が生えるのを待つのみ。
抗がん剤による脱毛は加齢による抜け毛薄毛とはまったく違います。
私の場合は最終投与からおよそ1か月後、新芽が顔を出しはじめました。
まさに「山笑う」毛髪にも新緑の季節が到来すると、一気に心も晴れやかになります。発芽した毛髪は本当にいとおしく、毎日0.1ミリ単位の成長が楽しみで頭皮の写真ばかりを撮りました。
よく男性の育毛では、頭皮をポンポン叩いて刺激したり、海外の薬や漢方がいいとかちょっと効果が怪しい広告もよく目にします。
そして育毛剤はどれも高額です。
私は特に高価な育毛剤は使わずに、ヒアルロン酸のローションで保湿したあと、馬油を薄く伸ばしてマッサージをしました。手のひらで柔らかく大きな周期で頭皮をさするだけです。毛根にプレッシャーをかけず土壌となる表皮から数ミリ下の皮膚組織を活性化して育てる計画です。
頭以外でも、体の皮膚の柔らかい部分は免疫力が低下しているため湿疹や腫物ができやすく、寝ている間にかき壊したりしてしまいます。その傷跡がなかなか消えなくなるので、皮膚の保湿や手入れはとても大切です。