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子宮体がんになって考えた~「閉経」の話をしよう

【はじめに~子宮体がんになって考えた】
私は報道番組で「がん企画」を担当する度に
~がんの治療は早期発見が大切です~ という原稿を必ず書いてきました。
しかし2020年、55歳の時に私自身が子宮体がんになり手術をしました。 
今思うことは、がんは早期発見が大切。
「だから生理のこと、閉経の話をしよう」
女性同士、仲良しでも「月経」の話は意外としにくいものです。 
しかし、月経は体の変化を知らせる重要なシグナルです。場合によっては命に関わる病気かもしれないのですから、大切なパートナーや家族とぜひ一緒に考えて、話し合えるようになって欲しいと思い、 改めて詳しいがん発見の経緯を書くことにしました。

【閉経か?不正出血なのか】

がん発見のきっかけは「不正出血」でした。 
年明けから2週間ほど出血が続いたのですが、この出血は病気のシグナルなのか、それとも月経なのか、何なのか。これ、どっちなんだろう?
自分の体なのに、いったい何が起きているのかわからず悩みました。
55歳、そろそろ月経が終わりを迎える閉経の時期です。
スマートフォンのアプリで月経の記録をつけていたので確認すると、きちんとした月経があったのはもう1年半近く前でした。
そのあとは数か月くらい間が開いたり出血量もとても少なく、もう月経の事などすっかり忘れていたほどでした。
出血の量は少なくて、わずかに水分が滲む程度、薄いピンク色なので血液が混じっているんだなとわかる程度でした。その出血は、薄くにじみ出るようにずっと続きました。 
もう55歳だからやっぱり閉経なのかな、この薄いピンク色の体液はもう閉経が近いからなのかな・・・でもそんな事を誰に相談したらいいのだろう。
わたし閉経の事、何も知らない。
「年をとったら月経は終わる」という事だけしか知らないと気づきました。
自分の母親がいつ閉経したのか、どんな悩みを抱えていたのか、一緒に住んでいた時も一度も聞いたことがありませんでした。どうしよう。
もしかすると子宮や卵巣のがんではないかという予感がしたのです。

【女性診療科のハードル】

よし、この出血が2週間続いたら病院へ行こうと決心したのですが、 いきなり産婦人科に行くのはちょっと怖くて、最初は会社の健康診断に申し込みました。でも子宮頸がんや乳がんの女性検診は予約がいっぱいで、最速で予約できたのが3か月後の4月末でした。 
相変わらず、ほんのわずかな体液がにじむような出血は続いていたのですが、痛みや倦怠感などの自覚症状はありませんでした。だから3か月なんてすぐだから待てばいいかとも思ったのですが、「早くして」と体の声が聞こえたのです。それで私は健康診断を待たずに大学病院の女性診療科を受診しました。
2月7日最初の診察ですぐに「細胞を取ってがんの検査をしましょう」と言われました。その結果、子宮の内膜でがん反応が出たのです。
 健康診断は子宮頸がんや乳がん検診はありますが、子宮体がんや卵巣がんの項目はありません。健康診断を待っていたらがんの発見は遅れて、もっと進行していたでしょう。
しかも、4月末に予約していた健康診断は新型コロナウイルス感染拡大の影響で当面延期になりました。その影響は医療崩壊を招く状態まで悪化して今も続いています。結果論ですが私は“体の声”を聞いて行動して本当によかったと思います。

【独りぼっちで悩んだ】

がん検査の結果がわかるまで3週間。
「がんかもしれない。でも違うかも・・・」一人で悩むのは辛い時間でした。
最初にがんかもしれないと思った時から、いつ家族に話そうか本当に迷いました。私は夫と二人暮らしですが、悩んだ末に、夫には検査結果が出る前の晩に打ち明けました。
「実はがん検査を受けていて明日結果が出るの、黙っていてごめんね」と。「一晩だけ付き合って。がんかもしれないって不安な気持ち、一晩なら耐えられるよね」
夫は「うーん黙ってたのね、そういう人だよねもう。一晩ならジタバタする時間もないよね」
その晩は安心して二人ともぐっすり眠ることができました。
そして検査の結果は、予想していた通り子宮体がんでした。

3歳年上の姉にはがん手術の直前に直接話しました。 
「コロナで面会できないしさ、手術も立ち会えないから。でも必ず元気になって会いに来るから心配しないで」
2人に1人はがんになるし、私は初期だから大丈夫と精一杯の笑顔で。
すると姉は「私は何をしてあげられるの」と黙り込んでしまったのです。
私は夫や家族になるべく迷惑をかけずにがんばったし上出来だと、自分の判断に満足していました。 
でも今になって考えると一人で不安を抱えて耐えるなんて、 そんなこと他の人には勧められない。間違っている。

【閉経の話をしようよ】

我が家はよく「うんこ出たよ」「すごい立派な一本刀」とお互い無駄に報告とまでは言いませんが話題にします。
それなのに月経については「きょう月経2日目なんだよね」「もうすぐ5日目だから終わるよ」くらいしか話したことがありませんでした。
 50歳を過ぎて閉経が近くなった頃にはもう前回いつだったかさえ自分も忘れるほどで話題にもしませんでした。
私も「月経が終わってしまえば女としても終わり」というような、おかしな価値観に縛られて無意識に閉経や更年期について話題にするのをためらっていたのだと思います。
私は物わかりのいいオトナのふりをして社会や家庭で「閉経」を暗闇に押し込めてきた。
閉経だけじゃない「生きづらさ」も若い人たちに押しつけてきた。
体の生理のことを普段から家族と話せていたら、がんの告知も一人でこんなに悩まなかったはずです。
誰にも言えなくて我慢して、もう少し様子を見てからしにようなどと思っていたら自分で病気の発見を遅らせてしまうのです。
コロナ禍のいまだからこそ変えたい、変えられる。だから自分がまず声を上げよう。
みんな一人で抱え込まないで。
我慢するのはちっともいいことなんかじゃないから。
問題は、自分の悩みをどんな言葉で表現すればいいのか、いつ誰にどう伝えるか、その手段さえわからないこと。
だから勇気を出して声に出して行こう。
大切な家族の健康を守るためにも、きちんと向き合って「閉経」の話をしよう。

#国際女性デーによせて

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