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ハラマキ写真館 川崎工場地帯に現れる獣たち

新しいミラーレスカメラOM-D E-M10Mark Ⅳ とはまだあまり親しくなれず接し方がわからないままです。お互いの距離を縮めようと、40-150mmのレンズをバッグに入れて川崎の工場地帯に出かけました。きょうから11月だというのに日差しが強く汗ばむ陽気です。JR南武線の浜川崎駅で電車を降りてのんびり歩き始めると、まだまだ小さな鉄工所もあって作業に追われていました。
JR鶴見線・昭和駅までおよそ1.5キロを歩くと、扇橋の上から巨大なプラント群が煙を上げているのが見えてきます。

扇橋から眺める 昭和電工プラント

川崎の工場地帯は私にとって若い頃から慣れ親しんだ風景です。バイクで時々ふらっと走りに行って工場を背景にバイクの写真を撮ったこともありました。念のため申し上げますが私は暴走族ではありません。蛇行運転やクラクションを鳴らす迷惑行為はしませんし、バイクを盗む犯罪者は断じて許しません。バイクを盗んだ歌も大嫌い。Zを盗まれた悲しみは永遠に消えることがないから。

さて川崎工場地帯の写真ですが、最近はインターネットで検索すればどの場所でどんな画角が撮影できるかすぐに情報が集まります。でもそれではイメージした通りの映像しか撮れなくなってしまうしつまらない。下準備をし過ぎるとわざわざ撮影に行かなくてもよくなってしまうんじゃないかしらと。だから自分の足で歩いて後ろを振り返って、行きつ戻りつ自分の好きな風景を探しに行こう。

扇橋から 水面に映る景観
フェンス越しに見る煙突

工場の夜景は最近人気が高く、川崎市と企業が協力して「川崎工場夜景」のカレンダーを発売しています。その魅力に触発され夜景クルーズや撮影ツアーが次々企画されています。
その一方できれいな写真を撮影する目的で工場の敷地に不法侵入する人もいるようです。この写真の太く頑丈な金網は3か所ほど切られて穴が開いていました。ちょうどカメラのレンズが入る大きさで、金網に邪魔されることなく煙突がきれいに撮影できるベストポジションです。これほ意図的に道具を使って金網を切り、押し広げたのだと思います。
私は、その場所でシャッターボタンを押すことはできませんでした。
夜景は美しいけれど闇に紛れて隠れてしまう顔もある。日の光に照らされた本来の姿も美しいものですよ。
ああ、折角足を運んだのに面白くない気分。
この辺りじゃうまい珈琲店も見当たらないし。何年も前に廃業したような食堂前の自動販売機で缶コーヒーを買って、さて帰ろうかしらと歩き始めました。ところがすぐに心がときめく出会いが待っていたのです。

 JR鶴見線 昭和駅付近

煙突の上に弧を描くように太いパイプのような配管が見えます。右から2番目の煙突。なぜだかわかりませんが、ドキッと鼓動が跳ねるほど胸がときめいたのです。そもそも、なぜ私は川崎の工場地帯を被写体に選んだのか深く考えもしなかったのですが、さらに次の出会いではっきりトキメキの正体がわかりました。
昭和駅からさらに歩くこと4.5キロ。

夜光三丁目のプラント
複雑な配管の造形美

ビジュアルを意識しないからこその無骨な造形に美しさを感じるのでしょうか。このむき出しの配管が、私の記憶の中にある映像とぴたりと重なったのです。
それが次の写真です。
2014年 種子島宇宙センターで撮影したH-Ⅱロケットの第二段エンジンです。
一般市場に量販されるエンジンではないのでFUELパイプ一本をみても特別な美しさを感じます。私のバイク好きもエンジンやキャブレターなどの造形美が大きな要因を占めているのでしょう。

H-Ⅱロケット第二段エンジン LE-5A
ROCKET FUELの文字にドキドキ

なにかを好きになるって気分が高揚する。
配管の造形美をもっと撮影したいと思い、私は水江運河沿いで初めて150mmの望遠レンズを装着しました。その直後のことです。

水江運河と東亜石油のプラント

んっ?ファインダーの左下方で何かが動いた気がしてあわててシャッターを押しました。連写設定にしていないため次のシャッターが切れるまでの間がもどかしく感じます。

左端の建造物奥から出現

望遠レンズを動かして標的を探すと…
まさかアイツ?

発電所の上に 翼を持った豚

♪Pigs on the wing1
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空飛ぶアイツは 翼を持った豚

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