ハラダ ショウタ

1,000字程度で自由に書いています。読後感なんて求めないでください。どうかご機嫌を損…

ハラダ ショウタ

1,000字程度で自由に書いています。読後感なんて求めないでください。どうかご機嫌を損ねないようにお願いいたします。

最近の記事

僕は猫を触ったことがない

「先生って、犬派? 猫派?」  塾の授業中、僕の分かりやすい解説を遮るように、この質問が飛んできた。  台形の面積よりも、ふと頭に浮かんだ犬や猫に興味を持っていかれたのだろう。小学生にはよくある話だ。  走らせるチョークをぐっ、と止めた。 「犬派かな。でも今は目の前のことに集中しようね」  僕はさらっと笑顔で答えて、解説に戻った。子どもの興味をぞんざいに扱わず、全体の雰囲気もしっかり守る。我ながらスマートな対応だったと思う。  無駄に何年も塾講師をやっているわけではない。年々

    • (詩)好き嫌いの王様

      人を好きになるのは楽だ。俺が王様になって、あの人に会いたいと言えばいい。王様だから、あいつを追放しろと言うこともできる。そうすると反乱が起こって俺は王様ではなくなる。それなら俺は女王になればいい。あいつが嫌いだから。女王になってあいつをまた追放しよう。好かれたいわけじゃないんだ。嫌われたくないだけなんだ。

      • (詩)ブラックな白旗

        嬉しいことって、嫌なことには勝てない。そういうときばかり頭は冴え渡って、白旗を振る準備を着々と進めていく。だから私は嫌なことをする。嫌なことをして嬉しくなって、嫌になる。そんな自分が少しだけ好きかもしれない。

        • (エッセイ)矯正の感覚

           歯の矯正が進んできて、たった今下の歯の裏側に装置がついた。  上の表側に装置がついたときは、煩わしさこそあったものの、そんなに困ることはなかった。  下の裏側の装置はやばい。  これは俺の歯並びが異常だからこんな装置がついているのかどうかは分からないが、口の中が要塞と化している。  舌がうまく動かないから、もちろん上手く喋れない。ご飯を食べてみたが、口の中の食物を今まで通りに飲み込むことができない。時々ピキッて音が鳴る。  先生は慣れますと言っていたが、これは慣れる慣れない

        僕は猫を触ったことがない

          (短編小説)電気代が高いのは時代のせいではない

           たまに、意識が分かれることがある。  俺は今後の人生で二度と使うこともないであろう公式を語りながら、つい5分前に確認した今月の電気代の請求額を思い出した。  高校時代にバンドでギターボーカルをやっていたからだろうか。歌いながらギターを弾く、みたいに2つのことを同時に行うのが得意になっているのかもしれない。  だから、黒板に11,732円と書くことは決してない。  ひと月の電気代。一人暮らしにしては異様に高い。この冬からの電気代の値上げがあるにしてもこの金額はあまりにもだ。

          (短編小説)電気代が高いのは時代のせいではない

          素直になれないあなたへ

           中1のとき、部活の先輩に「ダルいので帰ります」と告げて家に帰った。本当にだるかったからだ。  同期が1人、先輩が6人しかいない弱小バレーボール部で、しっかり干された。6人で試合をするバレーボールで試合に出させてもらえなくなった。別に実力があったわけでもないから、シンプルに試合に出られなかっただけかもしれないが。    大学生コーチにもしごかれた。それなりの段数があるラウンジの階段をコーチを背負って登らされたこともあった。7コ上のがっちりした大人を、まだ成長途中の13歳が背負

          素直になれないあなたへ

          ネタバレと銃乱打

           こんにちは。なんか面白い芸人さんのYouTubeない?って言われて、分かりやすいのがいいかーと思って、佐久間さんのトルコアイス渡さない選手権を見せたでお馴染みの私です。  なんか普通に暇だから、年末ということで、今年を振り返ってみることにしました。あまりみんなやってないことだと思うので、少し不安ですが、頑張ります。  とはいえ、今年はほとんど何も覚えていないので、昨今話題のネタバレ問題について考えてみます。  そもそものきっかけはあの映画です。なんだっけ。タイトルがぼんや

          ネタバレと銃乱打

          ふと過去の出来事を思い出す感覚

           ドラッグストアで乗り物酔い止めを探す。乗り物酔い止めがどのコーナーにあるかすら分からない僕は店内を隅から隅まで物色する。気まずいコーナーを幾度も通りながら店内を1周。  ないわけはないな、と2周目に突入する。店員に酔い止めがある場所を聞けばすぐに終わる話なのだが、それがそうでもない。  「乗り物酔い止め」という名称は正解なのか、その確証がない限り店員に聞けるわけがないのだ。  仮に「あの、車に乗ったときの独特のにおいから幕を開ける運転と自分が生きるテンポの違いから生じる気持

          ふと過去の出来事を思い出す感覚

          顔にモザイクのかかったサラリーマンは言う

           前回の記事から随分と間が空いてしまった。  別に毎日更新を掲げているわけではないし、ブログではないつもりなので間が空くことに抵抗はないわけだが、やや恥ずかしさみたいなものがあるようだ。    ふと「LINEを頻繁にしている人は心が健康」的な見出しの記事を見た。  この記事を書いている人は心がよっぽど健康なんだろう。    別に自分の心が健康なのか、不健康なのかはぶっちゃけどっちでもいいが、一応調べてみることにした。  調べてみるといっても、精神科を受診したわけではない。最後

          顔にモザイクのかかったサラリーマンは言う

          電子レンジと小さな幸せ

           電子レンジで30秒温めたい。  30秒温めたいんだから、30秒に設定するのが通常だろう。  30秒では温まらない気がするから、10秒追加して40秒に設定するという人もいるだろう。  上記どちらかに属している人は小さな幸せを見逃してはいないだろうか。    僕は30秒温めたいときは、50秒に設定する。そして35秒で取り出す。こうすることで、小さな幸せが生まれているのだ。  僕も30秒で設定したら、温まりきらない気がする。  内野ゴロを打ったら、スピードを保つために一塁ベ

          電子レンジと小さな幸せ

          表があれば裏があるというが、裏が表で表が裏だろうに。

           乗り換えを2回ミスった。  でも今日はなんだか音が鮮明に聴こえる。  高校時代、バンドを組んでいた。たいして練習しないからあまり上手くはならないし、お金はかかるし、機材は重いし、それでもなんだかんだ楽しかった。  大学でも続けようと思ったけど、色々な不具合が重なって辞めてしまった。その不具合は言えるものから言えないものまであるから、具体的には書くつもりはない。  今になって続けていれば良かったなと後悔することがある。バンドで有名になりたかったからとかではなくて、ただ人と

          表があれば裏があるというが、裏が表で表が裏だろうに。

          悩み師は今日も生きる。

           ピンクのベストを装った春日さんがゆっくり歩いてセンターマイクに向かう。それを早々に到着した若林さんが優しくツッコむ。  オードリーの漫才のつかみ、一見シンプルなようで、かなり練り込まれている。スピードはもちろん、どちらがボケでどちらがツッコミか瞬時に分かる。そして、春日さんの格好と髪型と歩速で、若林さんのツッコミのトーンとフレーズで、2人のキャラクターまでが瞬時に伝わる。面白いだけでなく、観客に「見やすさ」を与えてくれる。  それに比べて、「表参道のセレブ犬とカバーニャ要

          悩み師は今日も生きる。

          テレビ台までの感覚

           テレビ台の隅にちょうどいいスペースがあった。フィギュアを置くもよし、リモコンを置くもよしのスペースだ。そこにはコースターを置いている。材質が石のコースター、ストーンコースターだ。ストーンコースターを置いているが故にそこにはコップを置かなければならない。  置かれたコップは絶妙な距離感で佇んでいる。地震が来たら倒れて落ちてしまうだろう。ここ最近は毎日そんなことを考えている。  コップの中身は飲み干してから寝ること、下には濡れてもショックから立ち直れるほどの物を置いておくこ

          テレビ台までの感覚

          早起きは三文の徳の感覚

           いつもと同じはずのアラームで目を覚ます。まだ慣れてない身体を無理矢理に伸ばし、足音をたてる。布団に残った温もりが何とも気持ち悪い。  シャワーを浴びようと風呂場に入る。両眼で0.1ない視力が回復したかのような錯覚に陥りながら、少し熱い湯水を捻り出す。考え事は尽きない。2つ3つの悩むほどではない案件が頭の中に巡る。シャワーは電気信号を洗い流すことはないらしい。  それでも身支度を済ませ外に出れば、早朝独特の空気が気持ちいい。謎に万人が知る諺が思い出される。カップのコーヒー

          早起きは三文の徳の感覚

          Go To トラベルの感覚

           おれのnoteは主に終学活で読まれているらしい。終学活などと得意げに話しているが、所詮は帰りの会だろう。帰りにやる会だから、帰りの会。そんな分かりやすい名前をわざわざ終学活と称する意味を改めて問おう。  炊き立てのご飯に新鮮な卵をかけて食べるあの料理。おれのnote読者なら、この料理の名前を思い浮かべるに容易い教養を持ち合わせているだろうが、念のために言っておこう。卵かけご飯だ。卵かけご飯だ!!  ではここで、卵かけご飯をわざわざTKGと称する奴の気持ちになってみようで

          Go To トラベルの感覚

          埒が明かないの感覚

           「埒が明かない」おれのnote読者なら何の滞りもなく読めるほどの教養を持ち合わせているだろうが、念には念を入れて読み方を記しておく。「らちがあかない」だ。ここでボケても良かったのだが、考えるのが面倒だったのでやめた。  「埒が明かない」とは、「物事に決着がつかない」という意味である。まずこの言葉が生まれている時点で、この世の中に埒が明かないことが存在することは自明であるが、真に埒が明かないことなんてあるのだろうか。  「辛くないカレーはカレーじゃない」と貪り回る中級論者

          埒が明かないの感覚