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ジム・ワード(スパルタ)インタビュー

 ファンには説明不用のことだと思うが、今から20年ほど前、衝撃的な日本デビューを果たしながら、あっけなく解散してしまったアット・ザ・ドライヴ・インは、そのまま二組のバンドに分裂した。ひとつ目はマーズ・ヴォルタ、もうひとつがスパルタだ。やがて時は流れ、スパルタは3枚のアルバムをリリース後、2008年に活動休止。その頃から、アット・ザ・ドライヴ・イン再結成の話が動き出し、2012年になって正式に実現する。この時は、とある事情からあまりうまくいかないままフジロックを含む数回のフェス出演のみで終わってしまうが、やがてマーズ・ヴォルタ解散にまつわるドタバタを経て、2016年になると2度目の再結成が果たされ、今度は新作アルバムも完成し、来日公演も行なわれた。だが、ご存知の通り、この2度目の再結成ツアー直前になって、オリジナル・メンバーであるジム・ワードは不参加ということがアナウンスされる。
 ほどなくしてジムは、アット・ザ・ドライヴ・インの構成員と被っていない唯一のメンバーであるマット・ミラーとともにスパルタを再始動させた。ドラマーには、カーシヴ/オッカーヴィル・リヴァー/アフガン・ウィグス/ビーチ・スラングなどで叩いていた腕利きのカリィ・シミングトンが参加。この時のライヴの様子は、こちらでレポートが読めるので、ぜひチェックしていただきたい。
 そして2020年4月、スパルタはニュー・アルバム『Trust the River』を発表。アット・ザ・ドライヴ・イン的な勢い以上に、スパルタとして発揮してきた叙情性が、ジムの人生経験を反映していっそう深みを増した音を聴くことができる。この作品が、エモ・リバイバルとかとは一切関係ない地平で、ジム・ワード個人にとって本当に必要なものであったことは間違いない。そこに心を寄せられる人には、じんわりと染み入ってくるような味わい深さを持つアルバムだと思う。『Trust the River』の背景に一体どんなことがあったのか、以下のインタビューではすべてが語られている。

プロデューサーのダヴィード・ガーザは、僕の魂からネガティヴィティと不信感の最後のかけらを取り除いてくれた。


---まず最初に、現在は世界的なコロナ禍で、スパルタのツアーも延期になるなど大きな影響が出ていると思いますが、特に大事はないですか? コロナの状況に加え、さらにアメリカはBlack Lives Matterで激動の情勢を迎えているわけですけれども、あなたの町はどのような感じでしょう。

ジム・ワード:世界中どこでもそうだと思うけど、僕たちもまた、ここエルパソで、コロナ・ウイルスの影響にどう対応していこうかと苦闘している。これからどうなっていくのか、落ち着くまでにどれくらいの時間がかかるのか? いつツアーに戻れるかもわからないので、今のところは身を潜めて、可能な時には自宅からネットを通じてブロードキャストするようにしているよ。
BLMに関しては、地元でもいくつかの抗議行動があった。僕は、抗議行動、改革、平等、すべての人間への敬意を100%支持するし、人々が少しでも平和でいられることを願うのと同時に、何があっても変わるべき時だと理解している。僕の心はBLMとともにあり、できる限りの支援をしてきたし、これからも続けていくし、この先ももっと多くのことを学んでいくつもりだ。

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