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ジョージ・クラーク(デフヘヴン)インタビュー

2016年、フジロック出演の決定を受け、その時点での最新アルバム『New Bermuda』が日本盤としてもリリースされることになったタイミングで行なわれた、メール・インタビューです。その後『Ordinary Corrupt Human Love』を発表し、2019年に来日を果たした際に実現したケリー・マッコイ(G)との対面インタビューと合わせ、あらためて読んでみてもらってもいいかもと思い、再掲してみました。


 これまでにデフヘヴンは、2012年11月と2014年5月の、2度にわたって来日公演を行なっている。この間に出世作『サンベイザー』をリリースし、メンバーを補強して現在の5人編成のラインナップを固めたことで、再来日時のライヴ・パフォーマンスでは恐るべき成長を果たしていた。ブラック・メタルをベースに独自のサウンドを確立した『サンベイザー』は、多くの海外音楽メディアで年間ベストの上位にランクインする大ブレイク作となったが、ライヴの場においても高い評価に見合ったバンドになったことを、彼らは完璧に証明してみせたのだ。そして昨年に発表した、名門アンタイに移籍して待望の最新作『New Bermuda』が、今夏のフジロック出演が決まったことで、ようやく日本盤でも発売決定。さらに存在感を増したデフヘヴンを抜きにして、メタル・シーンの最前線は語れない。以下、ヴォーカルのジョージ・クラークへのメール・インタビューを掲載しよう。


ーー初めてインタビューさせていただくので、まずは、あなたが過去どんな音楽環境で育ってきたのか教えてもらえますか。サンフランシスコでケリー・マッコイとRise of Caligulaというグラインド・コア・バンドをやっていた以前には、どんな音楽を主に聴いていたのでしょう? また、自分自身でも音楽をやることにしたのはどんなきっかけがあったのですか?

ジョージ・クラーク:いろんな音楽を聴いて育って来たけど、やっぱり原体験はパンクとメタルだね。ケリーはデッド・ケネディーズやAFIが好きで、俺はスレイヤーやセパルトゥラを聴いてたんだ。でも、好みはどんどん変わっていったよ。高校の頃にはムームとか、ナグルファーなんかを聴いていた。なによりも音楽が大好きだったから、バンドをやることは自然な成り行きだったよ。

ーーケリーと2人でデフヘヴンを結成した時点から、ブラック・メタルとポスト・ロックとシューゲイザーを融合させたような音楽的方向性は、はっきりと見えていたのでしょうか?

ジョージ:ああ、はっきりとそういう方向性は持っていた。ポスト・ロックやシューゲイザーのバンドはもちろん、影響を受けた色んなタイプの音楽を取り込んで、自分達流のプログレッシヴ・ブラック・メタルを表現したかったんだ。

ーーデフヘヴンは、ジェイコブ・バノンが運営するレーベル=デスウィッシュからデビューしましたが、あなたにとってコンヴァージとはどんな存在ですか?

ジョージ:俺たち昔からコンヴァージは大好きだったし、今でもよくレコードを聴いたりライブを見に行ったりしているよ。俺たち世代には絶大な影響を与えたバンドなんだ。

ーー前作『サンベイザー』が、ピッチフォークなどの音楽メディアで絶賛された時、いわゆるメタルのフィールドの人々からは、なんとなく「ヒップな位置に行きやがった」というような揶揄があったのではないかと想像するのですが、活動当初からメタル・シーンの中で「自分たちが浮いている」という空気を感じていたりしましたか?

ジョージ:「自分達が浮いている」というより、俺たちはメタル・シーン中でニッチな居場所を築いたんだ。そのことについては、とても誇りに思っている。

ーー『サンベイザー』は、メタルらしからぬ色とデザインのジャケットも印象的でした。そして、新作『New Bermuda』のジャケットには、グリズリー・ベアのヴィデオを監督したこともあるAllison Schulnikという人の絵が使われていますが、アルバムのヴィジュアル部分のコンセプトについては、どういうふうにして決めているのでしょう?

ジョージ:俺の唯一の意図は、作品のコンセプトを正確にアートワークに反映させることだ。Alisonは『New Bermuda』のテクスチュアと苦悶を見事に表現してくれたよ。

ーーその最新作『New Bermuda』には、ポスト・ブラック・メタルとかブラックゲイズといったカテゴライズをさらにハミ出していってやろうというくらいの意欲を感じましたが、自分たちではどういう気持ちで制作に向かったのですか?

ジョージ:明確な目的意識はあったよ。よりヘヴィでライヴ感もあるものを創りたいと思った。過去作より濃密でソリッドなものにしたいと思っていたし、それを達成できたと思っている。

ーー『New Bermuda』は、5人編成のメンバーが固まって初のアルバムということになりますね。制作の過程で、過去の作品とはどのような違いがありましたか?

ジョージ:引き続きケリーがほとんどの作曲を手掛けているけど、メンバーがいることでこれまで以上に色々なアイデアが出てきて、自分たちにとっては前進だったし、よかったと思う。それとレコーディング作業がもっと楽しくなったね。

ーー歌詞を書く時には、どのような題材・物事からインスピレーションを受けているのでしょうか。最新作で、どういうテーマを扱っているのかも教えてください。

ジョージ:『New Bermuda』は、ロサンゼルスへの移住、大人になるプロセス、果たされない約束がテーマになっている。自分が過去の問題に囚われ、茫然としていることに気付いたんだ。歌詞は自分を取り巻く環境の中で感じていることや人生について書いているよ。

ーー先鋭的なサウンドを様々な形でとりこみながら、デフヘヴンの音楽は最終的に、キャッチーとさえ言えそうなポピュラリティを獲得していると思います。このことについては自覚的なものがあるのでしょうか? あるいは、好きなように音楽を作り上げてみると、自然にそうなってしまうという感じなのですか?

ジョージ:自分たちのやりたいように曲を書いているよ。キャッチーな曲を書くのは楽しくもあり、難しくもあるけど、チャレンジしがいがあるね。

ーークラリスやリタジーなど、他のポスト・ブラック・メタルと呼ばれるバンドで、特にシンパシーを覚えるような存在はいますか?

ジョージ:そういったバンドの中には友達も何人かいるし、シンパシーを感じる部分はもちろんあるけど、全然違う部分もあるし、全部ひとまとまりにされるのは違うかなと思う。彼らのことはリスペクトしているし、好きだけどね。

ーー最新アルバムからアンタイ・レコードに移籍していますが、トム・ウェイツからメイヴィス・ステイプルズまで所属する名門レーベルと仕事をしてみた、これまでの感想を聞かせてください。

ジョージ:最高だよ。俺達のやっていることを全面的にサポートしてくれている。

ーーこのたび発売されることになった『New Bermuda』の日本盤には、現在は日本に住んでいるマーティ・フリードマンが、デフヘヴンのことを絶賛する原稿を寄せています。元メガデスのギタリストに褒められまくって、どんな気持ちがしますか?

ジョージ:本当に嬉しいよ。マーティとはハングアウトする機会もあったんだ。すごくいい人だよね。自分たちが影響を受けたミュージシャンが、自分たちの音楽を聴いてくれてるってことは、自分たちにとって非常に大きいことだね。

ーーこれまでの日本公演で、envy、COHOL、STORM OF VOID、heaven in her armsといったバンドと共演してきましたが、それらの日本のバンドについて、どんな印象を持ったか聞かせてもらえますか? そのほか、日本での経験で印象深かったことなどを教えてください。

ジョージ:日本のバンドのレベルはめちゃくちゃ高いから、もっとアメリカに来てほしいよ! 日本では良い思い出ばかりなんだ。いい人たちと楽しい夜をたくさん過ごしたからね。

ーー今年のフジロックに出演が決定していますね。どうやら山や木に囲まれた野外ステージで真昼間に演奏することになりそうです。メタル系のバンドはあまり出ないフェスなのですが、過去にはアイシスやディリンジャー・エスケイプ・プランなどが同じような条件のもとでそれぞれ印象深いパフォーマンスを見せていました。あなたがたは、どんなライヴにしたいと考えていますか?

ジョージ:とても光栄だし、楽しみにしている。いつも通り、情熱的で、ラウドで、タイトなライヴを全力でぶちかますよ。

ーーまだしばらくはツアーが続くと思いますが、それから先のデフヘヴンはどんなふうに活動していきたいと考えていますか? 今後の方向性について現時点で、なんとなくでも思い浮かべているヴィジョンがあれば教えてください。

ジョージ:まずは、とにかくツアー! この作品を出来る限り多くの人に伝えたいんだ。


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