【超短小説】年雄と福袋

年雄が子供の頃の福袋は、中に何が入っているか分からなかった。

それが好きだった。

お年玉を持って兄と近所のゲーム屋さんに行き、5千円の福袋を買うのが楽しみだった。

ファミコンのカセットが3本入っている。

何が入っているかは分からない。

兄と2人でカセットが一気に6本増える。

それだけで満足だった。

福袋を買って家に帰り、兄と1本ずつ出し合う。

聞いた事もないタイトルのカセットが出てくる。

その度「何だよこれ!ハズレだ!」と言いながら兄と爆笑していた。

年雄の好きな福袋はコレだ。

中身ではなく"当たりが入ってるかもしれない"というドキドキの共有。

無駄な買い物。行為。

それが楽しかった。

最近の福袋は中身が全部分かる。

無駄のないお得な買い物。

純粋に嬉しい商品。

年雄にはそれが合わない。

中身など知りたくない。

無駄だった、ハズレだったとただ笑いたい。

年雄の好きな福袋はそんな福袋。

浜本年雄40歳。

大人になった今でも、効率の悪い事を好む。

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