見出し画像

【ほんわか】 たぬきときつねの童話 【大人も感動する】

こんにちは。はれのそらと申します。
今回、一度公募に応募しましたが、選外になってしまった作品を再度修正して公開します。
色々悩みつつ書きました。よかったら、感想いただけると励みになります。

本編


ひゅっ、ひゅっ、とぽつぽつゆきが、ふるきせつ。
あるやまのふもとに、たぬきさんときつねさんが、いました。
ふたりは、なかよしでした。いつも一っしょ。二人は、おそばがすきです。とても、きがあって、あそんでいました。
すんでいるばしょが、はんたいだけれども、たくさん歩いて会っていました。

ははは。
ははは。

ふたりは、とてもたのしく、あそんでいました。
まいにち。まいあさ。いつも。いつでも、いっしょでした。
しかし。
あるとき、ふたりは、あそべなくなりました。
こほこほこほん。こほこほん。
きつねさんが、かぜをひいてしまったからです。

たぬきさんは、おみまいにいこうとしました。
きつねさんのいえは、たぬきさんのいえからせいはんたいのばしょにあります。
ふかいもりや、やまみちをこえなければいけませんでした。
きつねさんは、たぬきさんにてがみをだしました。

『たぬきさんへ いつもあそんでくれて、ありがとう。 わたし、かぜをひいちゃった。びょうきをうつしちゃうかもしれないから、わたしが、げんきになったらまたあって。またあそぼうね。 きつねより』

たぬきさんは、まちました。
いついつ。
まだかな。
しっぽをふったり。ふらなかったり。
ふりふり。ふるふる。
じっとしたり。とてとてと、いえのなかをあるいたり。

ひとりですんでいる、きつねさんのてがみが、とどくのをまっていました。
とちゅう、たぬきさんはてがみをおくろうか、まよいましたが、やめました。
そのかわり、きつねさんといきたいところややりたいところを、かみにかいていました。

たぬきさんは、きつねさんのことを、ずっとおもっていました。
あさ、たぬきさんが、おきると、きつねさんとあかるいみらいをそうぞうしました。
きつねさんは、げんきになったかな。
げんきになったきつねさんと、いっしょにあそびたいな。
きっとたのしくて、あたたかいオレンジみたいな、パァンとしたおとやにおいで、いっぱいになるだろうな。

ふわっとたぬきさんのこころが、かるくなりました。

しかし、たぬきさんが、よるねるまえに、もうひとつのみらいをそうぞうしてしまいました。
きつねさんが、いなくなるかもしれない。
きつねさんと、もうあえなくなっちゃうかもしれない。
さびしくて、つめたくなったこいしみたいな、ピシャッってしたおとやにおいで、いっぱいになっちゃうのかな。

ズシリとたぬきさんのこころが、おもくなりました。

しばらくたった、あるひ。
きつねさんからかぜがなおったと、てがみがとどきました。

たぬきさんは、とびおき、きつねさんが、すんでいるはんたいがわのやまへ、はしっていきます。

きつねさん。
きつねさん。

はやく。
はやく。

きつねさんのげんきなすがたが、みたいんだ。
たぬきさんは、やまみちをかけていきました。

にがいみずのにおいがするはっぱたちを、ズンズンすすみ。
あおいそらが、おいしそうなオレンジみたいないろにかわっても。

たぬきさんは、あるきつづけました。
むかし、きつねさんのいえに、しょうたいされたときのことをぼんやりおもいだして、あるいていきます。
このみちがあっているのか、たぬきさんにはじしんがありませんでした。
キーキーととおくから、みしらぬとりのこえがします。

それでも、たぬきさんは、あるきつづけました。
たぬきさんは、よるがにがてで、こわいのでした。
しらないみちへ、あるいていくのもです。

でも、それいじょうに、きつねさんのことが、ほおっておけませんでした。
なので、ガサガサとふかいもりのみちをすすんで、てがよごれても。
やまみちでなんどもころんで、からだがボロボロになっても。
たぬきさんは、もときたみちへかえろうとはしませんでした。

きつねさんと、はやくあいたい。
きつねさんは、ぼくとにてるから。
きっとあえたら、うれしい。
ひとりぽつんは、さみしいから。
きつねさんといっしょにいれたら、さびしいきもちよりもうれしくなったり、たのしくなったりするのが、わかってるから。
ほわほわとしているやわらかいこころが、だれもしらないまっくらなところで、つめたくなってしまわないように。

そんなことをおもっていたら、さみしくなっていたたぬきさんのこころが、いつのまにかあたたかくなっていました。
もうだいじょうぶ。
ぼくはだいじょうぶだとこころのなかでいいます。

たぬきさんは、はしりつづけました。
いきがしづらくて、ぜーはーぜーはーしていて、たくさん汗もかいています。

そして、ついに。
たぬきさんが、きつねさんのいえのちかくまでたどりつきました。
あたりはもうまっくらやみでした。


ポツンとひかりが、みえます。
きつねさんのいえには、あかりがついてました。

やった!
やった!
きつねさんだ!

たぬきさんのあしは、かってにまえへすすみます。

しかし。
きゅうに。

たぬきさんのあしが、とまります。
くらやみが、こわかったのです。
くらやみともうひとつ。
きつねさんから、きらわれてしまわないか。
きつねさんがいやなかおをするのが。
もしかしてのはなしなのに、こころがいたくなります。
たぬきさんはとてもつらくて、ないてしまいそうでした。
じぶんのおせっかいなんじゃないか。
めいわくになっちゃうんじゃないか。
きつねさんは、だいすきなともだちだから、たぬきさんはきらわれるのが、こわくなってしまいました。
やくそくをやぶってぜっこうされちゃうかもしれない。
つかれたあしはぼうのように、ピクリともうごきません。

でも。
でも。
それでも。
たぬきさんは、ぐっとはをくいしばります。
じぶんのあしがにげださないように。
まるであしにくいをさしたように。
きつねさんにあいたい。

やだ。
やだ。
あうんだ。


ぼくはきみにあいたいんだ!


コンコンコンコン!
コンコンコンコン!

たぬきさんは、じぶんのこころのおととおなじくらいのはやさで、きつねさんのいえのドアへノックをしました。

まえにくらべてやせたきつねさんが、でてきました。
たぬきさんは、きつねさんのかおをおそるおそるみつめます。
きつねさんはくちもとがゆるんでいます。
わらっているようでした。
しかし、すぐにきつねさんがないてしまったのです。
いまからでもかえってしまおうとたぬきさんはかんがえましたが、からだはうごきません。
たぬきさんもなみだがとまりませんでした。

それなのに。
ふたりのこころは、もえるようなあたたかさでやさしくふつふつほわほわなのでした。

「あ!たぬきさん!たぬきさんだ!あえた!うれしい!」と、きつねさんが、でむかえました。
「きつねさん!きつねさん!ありがとう。またあえたんだ。げんきで、ほんとうによかった。あれ、なんで、ぼく、ないてるんだろう。」
「たぬきさん、わたしもわからないよ。でも、たぬきさんとそっくりだから、そっくりなんだ。わたしも、ないちゃった。」
「ははは!いっしょだね。あれ、このにおいは、おそばのつゆのにおい?」
「そうだよ!たぬきさんも、いっしょにたべよ」
「いいのかい、ぼく、どろだらけで、おうちのなか、よごれちゃうよ。」

きつねさんは、どろだらけのたぬきさんをギュッとだきしめました。
もうどこにもいってしまわないように。
じぶんもたぬきさんからいってしまわないように。
つよく、いたく。
でも、とてもあったかかったのです。

きつねさんはいいました。
「いいんだ。びょうきのあいだ、こころのなかで、ずっとたぬきさんと、またあって、あそびたいなっておもってたんだ。どろなんて、かんけいないよ。とってもきれいだよ。いっしょにごはん、たべて、またあしたからあそぼっ!」
「うん!それならね、ぼくが、ふたりでたのしくあそべるあそびを、かみにかいたんだ。それをみて、あそぼう。きっときつねさんも、きにいるよ。」
「たぬきさん。そのかみって、どこにあるの?」
「あ!うちにわすれてきちゃった!」
たぬきさんときつねさんはけらけらわらっています。
どちらもおおつぶのなみだをながしていました。

「はは!じゃあ、あしたはたぬきさんちにいって、たぬきさんのメモをみにいこうよ。あしたのたのしみがまたいっこふえて、うれしいね。」
「うん!」

いえのなかにいっしょにはいろうと、きつねさんはてをたぬきさんのまえにだします。
たぬきさんは、どろのついたてをつなごうとしましたがとちゅうでとまります。

とまどっているたぬきさんをみていたきつねさんは、ちゅうぶらりんになっていたてを、ぎゅっとにぎりました。

そして、きつねさんをせんとうに、いえのなかへはいっていきました。

きつねさんはにぎったてがとってもいたくなりました。
しかし、たくさんないていたのはたぬきさんでした。

そのよる、たぬきさんときつねさんは、なかよくおそばをたべました。


(おしまい)



サポートした資金はバーチャル界隈を盛り上げる為&バーチャル関係の費用に使用致します