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ドイツ最古の街トリア②ドイツ三大大聖堂

ローマ帝国支配下のトリアについては、こちら。

コンスタンティヌス帝は、母ヘレナと共に、現在の大聖堂と聖母教会の場所に、教会を建てさせた。

ローマの栄光は去り、街はキリスト教中心に造り替えられていく。
5世紀頃には、フランク王国の侵入や破壊を経て、トリアはかつての栄光を失っていた。
しかし、造幣局の機能を持っていたため、キリスト司教区としては、他の街よりも地位が高いとされていた。

以下の目次★は、世界遺産登録された場所。

マルクト広場

958年、マルクト広場に十字架が建てられた。
これは、ハインリヒ大司教が市場を開く権利を与えた事に由来し、彼自身が建てさせたそうだ。

シャボン玉の大道芸人の姿も。

夜の雰囲気も素敵

広場にあるペトルスの泉は、1595年にシェーネンブルク大司教によって造られた。
街の守護神、聖ペトロが一番上部に、そして正義の女神ユスティティア、節度を表すテンペレンティアなど、知性と正義を表す様々な神がいる。
猿がこの泉で悪さをしている姿も見つけられる。

1030年、ポッポ大司教は、ギリシャ人修道士シメオンに敬意を表し、ポルタ・ニグラを教会として改築させた。
(記事①のポルタ・ニグラ参照)

大聖堂★

1235年、大聖堂の建築が始まる。
前述のコンスタンティヌス帝と、その母ヘレナが造った教会の跡地に、大聖堂とゴシックの聖母教会が建てられた。
ケルン大聖堂、マインツ大聖堂、トリア大聖堂が、ドイツ三大大聖堂と呼ばれている。

私がこの大聖堂を訪れ、一番驚きだったのは、祭壇下まで登れること。

祭壇に人がいる!

祭壇まで登ってみると、教会はこのように見える。

圧倒的な存在感

この祭壇には、キリストが断食の時に着ていたという聖衣 Heilige Rock が祀られている。写真では見えにくいのだが、祭壇下部の窓から、棺のような箱が見える。
この中に、聖衣が収められている。

こちらが、その棺と聖衣を広げた時の写真。

パイプオルガンも、圧倒的な存在感。

回廊

回廊中庭から見た大聖堂。

夜の大聖堂

聖母教会★

大聖堂と連結した造りになっている聖母教会。
ゴシック建築としては、ドイツ最古の一つ。

ステンドグラスの色合いが、とても温かい。
聖母らしい温かさだ。

エルツ城の天井画は、この聖母教会と同じものが描かれていると聞いたので、アップで写真を撮ってみたところ、本当に同じ模様だった。

13世紀、ドイツでは選帝侯制が敷かれ、トリアもその優位な地位を保つ。

15世紀の宗教改革の時期、大司教の介入があり、街はカトリック信者しか住むことを許されず、プロテスタント信者は街を去った。

30年戦争では、フランス、スペイン軍が駐屯し、街は疲弊していく。

聖パウリン教会

18世紀に入り、街は緩やかな回復を見せる。
1732年、建築家の巨匠バルタザール・ノイマンの設計による、聖パウリン大聖堂が造られる。
彼はヴュルツブルクのレジデンツ、ブリュールのアウグストゥスブルク城などの設計を手がけた有名建築家。

教会名は、トリアの司教を務めた聖パウリヌスにちなんでおり、教会前には銅像が建てられている。

外見はシンプルながら、内装はヴュルツブルクのレジデンツを思い起こさせる豪華な造り。

天井画のうち、十字架を中心とした図案が「殉教者の草地」(パウロの十字架)。
天井画を手掛けたのは、Christoph Thomas Schefflerで、彼はバロック、ロココ時代に活躍した画家であり、特にフレスコ画で有名。
十字架の左側で跪いているのは、シェフラー自身だそうだ。

選帝侯宮殿

1756年、選帝侯宮殿と庭の再設計がされる。
この場所は、コンスタンティヌス・バシリカの隣。

1768年、選帝侯にザクセンとポーランドのクレメンス・ヴェンツェスラウスが就任。
彼は、トリアの代わりにコブレンツを居城とした。
1801年、ライン川がフランス東部の国境として確定する。それにより、彼はほぼすべての選挙区を失う。
1806年、「ドイツ民族の神聖ローマ帝国」は終焉を迎えた。

モーゼルワイン

モーゼル川と言えばワインを思い出すが、ここトリアもワインの産地として有名。
この街がドイツワイン発祥の地と言われているのは、ローマ帝国がこの地を植民地とした際に、葡萄をこの地にもたらしたからだ。
当初、温暖なイタリアで栽培される赤葡萄は、寒冷なドイツの気候に合わなかったそうだ。
しかし、白葡萄はこの地でも育つ事が分かり、以後白葡萄が栽培されていく。
円形闘技場の近くにあるペトリスベルクは、葡萄畑が広がっている。

この街にはたくさんのワイナリーがあるが、ワイナリー直営のレストランが、大聖堂の向かいにある。
Weinstube Kesselstatt。

秋に訪れたので、この時期にしか飲めない発酵途中のワインFederweisserと玉ねぎケーキの看板に惹かれ、フラフラとお店に入ってしまった。

トリアを訪れた感想を一言で表すならば、驚愕だ。
トリアの観光スポットは、どのインターネットサイトでも5つくらいが挙げられていたが、それだけではこの街を知ることはできない。
この街に到着してから知った見るべき場所の多さに、私は困ってしまった程だ。
何故、どのように、何がきっかけで、この街が造られ、繁栄し、そして衰退したのか。
私はそういう事が知りたい。
スタンプラリーのような観光名所巡りでは、勿体無い。

そして、この街の観光名所の入場料設定の低さにも驚いた。
各施設の入場料は、ほぼ€4に設定されており、博物館だけは€8。
その上、アンティークカードを購入すると、€18で4つの施設に入場でき、それには博物館入場料も含まれている。
(2つの施設と博物館入場料込みの、€12のベーシックバージョンも有り)

多くの街、都市では一つの美術館や博物館で、€15前後の入場料である事を考えると、なんと良心的だろう。
欲張りな私は、たくさんの場所を訪れたいので、この価格設定はありがたい。
しかも、このチケットは1年間有効なので、滞在中に何日かに分けて、各所を訪れることも可能。

そして、ライン州立博物館にも驚いた。
オーディオガイドも無料貸出されており、展示品の詳細な説明は、これによって助けられた。見学しても、見学しても、まだまだ展示物がある。
私は館内に3時間ほど滞在したのだが、それでも一部は駆け足で見たほどだ。
できれば、この博物館を訪れてから、街の各所を見て回りたかった。
歴史を知り、どんな物がその場所にあったのかを鮮明に想像しながら見学できたら、私のトリアの旅はより一層充実したものだっただろう。
こうして記事にしながら、それぞれの記憶を繋ぎ合わせている。

ホテル 

トリア滞在は、ポルタ・ニグラ正面に位置するメルキュールホテルを選択。
部屋からは、ポルタ・ニグラが見える。

朝食も、大きなガラス張りの部屋から、ポルタニグラを見ながらいただく。

ローマ遺跡、大聖堂、多くの遺産を持つ街トリア。
次は、イーゲルの街の円柱を見に、この街を訪れてみよう。
その時までに大切な事を忘れてしまわないよう、旅の記憶をここに綴っておく。

*****

ドイツ三大大聖堂


秋の味覚

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