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『明かしえぬ共同体』の内容をひと言で紹介


①共産主義とファシズムは近代の社会契約というフィクションが生み出したが、そもそも共同体という概念も個人主義の要請から生じたという意味で基本的には同じ構図である。

②共同体が成立するのは他者との共同性が発生したからに他ならないが、そんなものは所詮は幻想か、もしくは一瞬だけしか生じなかったものであり、ほとんどの場合は反復しようとするけれど失敗する。最初は差異として認識されるが、それ以降は反復の経験となる。そして共同性は持続しない。構成する人間は有限な存在であり、最終的には構成員の死によって必ず解体される運命にある。合理的とは言い難いので、その性質について語ることも不可能になる。が、見方を変えると不在の共同体としては永続しているとも言えるのではないか。

③恋愛における男女の他者関係も根本的には同じ構図になっている。相手を知ろうとする主体と知られる側の客体が存在するならば共同性は既に失われているといえる。その意味でコミュニケーションとは主体と客体が消滅する瞬間と言えるが、そんなものは存在するのだろうか。男女の関係性の最初にあり得た、見返りを必要としない自己犠牲や贈与は目的性や合理性がない状態での話であり、恋愛関係が生じた瞬間に実は解体へ向かっている。④共同体について語ることは根本的に不可能であっても、どうしても語らざるを得ない。如何にして語るかという問題は本書が後世の人間に委ねる解決の難しい課題である。

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