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祝祭の擦過傷/Rapha Super Cross 野辺山

野辺山は祝祭だ。観客からも選手からも、日常を超えた熱狂の湯気が上がっている。

熱くて過激な声援が飛んでくるし、目の色の変わった集団はガチャガチャに荒れる。

泥と事情で試走はスキップ、代わりにいつもよりアップに時間をかけて体を温めた。コールアップに行くとどこからともなくチームメイト和尚が来てくれている。阿吽のありがたさ。

ギリギリ3列目。2列目にハードテイルの神の姿が見え、後ろに並びたかったが取られてしまいその横へ。前の選手、気持ちがはやりすぎているのかさらに前の選手の後輪の横に前輪をジリジリ突っ込んでいく。空回りしなきゃいいけどな、と思っているうち、笛が鳴る。

ピー。

スタートは舗装のフラット直線から、90度左に折れて舗装の上り。場が荒れる前にポジションを上げたいところだ。が、前走者は予感通りの空回り、さらにその左も仲良く揃ってフタをされた格好で隙間なく交わせない。そしてコーナー。「落車!」の声。コーナーの真ん中に横倒しの選手。ギリギリ止まらず避けて上り、腰を上げる。

芝のコーナーの内側は泥になっていて滑りやすい。大外の芝と泥との境目で速度を殺さずにまくっていく。が、内から信じられないくらい膨らんでくる選手、明後日の方向に突っ込んでいく選手、多数のラインが交錯して思うラインどころか、ラインの消し合いみたいになっている。まるで密集裸祭り。

序盤、位置取りや前走者の動きの予測は冴えていて、さらにコーナーのつなぎも上手くいって、まあまあ上位につけていた。上出来やん、と思った刹那、ハスる。しかも左がちょっと下がった地面で再乗車に手間取る。したがってゴボウ抜かれる。

コース脇からは色んな声が飛んで来る。「髭!」その通り。「ジーザス!」誰がやねん。「愛してる!」後にしてもらっても良いですか。テンション振り切れた見知らぬ人の声援と罵声と怒号の中間くらいの叫び声が、祝祭感を加速する。

名前で呼ばれるのは知人だけど、そのほとんどは1年ぶり。コーステープを挟んでのお久しぶりもまた風流なりけり。

その後も遠慮無くラインが交錯する展開で、2、3度転けた。多分そのどこかでワンピは切れ、皮の剥がれる擦過傷。終わるまで気づかんかったけど。

ドタバタしてるうちに、後ろから「ハリマックス〜」と声がする。出た。マツケイ。チームメイトでポンガなマツケイ。泥の直線で一気に腰ポンで抜かれる。流石の走破力。上手いなあ。と感心しつつ離されないように。

周りに位置する選手は、直線速い選手、悪い路面を上手く乗る選手(マツケイ)、ギャップにガンガン突っ込んで突破していくMTB、など得意分野がバラバラで、抜きつ抜かれつ入れ替わりが激しくて面白い。俺はとにかくセクションのつなぎだけ意識。下り混じりのコーナーなんかは出口の踏み出しが速いことの価値が大きい。なんとかそれだけで喰らいついていく。

最終ラップ、長い泥セクション。前方に乗っていくマツケイが見えた。上手いけど、しんどそう。スタート時より踏み固められた場所を選べば押しもそこまで辛くない。すぐ後ろまで追いついて、様子を伺う。やっぱり息が上がってる。

抜けて乗車すると同時に全力で踏んだ。腰ポンお返し。その勢いと上手く走れた林間の泥でポジションをさらにいくつか上げる。が、フライオーバー下る勢いを殺さずにつなげる部分で杭に絡む。ここまで上手くいってたところだったけど、気がはやるとあかん。

その位置で終わりかと思ったけど、ゴール前の直線で、10mほど前の選手が流しているのを発見。腰を上げてスプリントする。着にからまない位置で意味はないかもしれないが、最後まで全力を尽くすのが俺のレース。

近づいてくるが、ゴールまでの距離もない。さらににギアを上げる。脚を回す。ハナミズとヨダレが飛び散る。いつもより薄い空気でボウッと視界が白くなる中、ハンドルを投げる。




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‘19 Rapha Super Cross NOBEYAMA カテゴリ:C3

38位/71人出走

写真はツジケイ&和尚&オッチーさんから、いつもありがとう〜!


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