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ただいま/阿波シクロクロス

えーと。

1年ぶりのレースでした。

今シーズンここまでは、仕事やら家のことやらを優先してお休み。シーズンも終盤になってようやく開幕、というわけです。

久しぶりなので、わりと長めです。

ビヨーン。

と、笛だか電子音だかの合図が鳴った。正確な音の記憶は定かでないけど。

ぐっと右足を踏み込んで、それから左足を踏み込みながらクリートをねじ込む。パチリ。と音の出る感覚が来て一発で嵌ったことがわかる。10人出走で2列目スタート。前の列のすり抜ける隙間を探す。はずだった。

隙間は見えなかった。

前には壁があって、その壁が次第に離れていく。横からスタートした古川さんはすでに壁の一部に溶け込んでいる。どちらかというと、後ろからのスタートは得意だったはずなのに。初めての感覚だ。

ああ、これってレース勘がすっかりなくなってたってことか。と、不思議な感覚に包まれながら壁の後ろについていく。しだいに壁がぐにゃぐにゃと変形して、縦一列になる。その一列の棒は、横にスペースがあるのだが、抜く、ということがよくわからない。

このスピードが、自分の精一杯なのか、何パーセントなのか、よくわからないまま、付いていく。

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レース前1週間ほどは、通勤で歩きながら、スタートをイメージした。踏み込む。クリートねじこむ。スピード上げる。想像だけで、ドドドドドと明らかに心拍数が上がった。

思い返せば、そのときにも他者を意識していなかったな。

長い直線。踏んでいく。でも、踏む感じがふわふわしている。追いこんでるのか、流しているのか自分でも意識できない。
前には、若林さん。その前に、チームメイト・タケちゃん。さらにさらに前に、ちいさく古川さんが見える。そして、少しずつ離れていく。

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初戦に徳島・阿波を選んだのは、日程の問題だけではなかった。俺にとってちょっと特別な土地なのだ。

3年前に徳島・上勝でライドイベント「Rapha Prestige Kamikatsu」に参加した。レースではなく、チーム5人で長く険しいコースを走り切るイベント。直前3ヶ月はチームメイトの脚を引っ張らないように、そして終わった後は惰性で、以前に比べてずいぶん真面目にトレーニングをする癖がついた期間だった。それが続いて去年の桂川の優勝につながる。

そして、その時出会った徳島のショップ・シオカゼストアのゴリさん、古川さんに、次の年の阿波クロスで再会。当時みんなC4でボッコボコに置いていかれリベンジを誓ったのだった。

しかしまあ、というわけで、今年もさっそくボッコボコである。

シーズンも初戦で気持ちが切れる余裕もないので、レースコースを走ることに慣れる、に切り替える。コースウォーク、試走で描いたイメージと、実走のズレを確かめて、次戦に活かせるように。

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それにしても、なんと楽しいことだろうか。

たとえ、「今年は負けませんよ!」と言ったものの、スタート5秒で置いていかれようと。たとえ、情けないくらい踏めない脚で最後尾を走っていようと。

あー、帰ってきたなあー。と、コース脇からの声を浴びる。

半分くらいで徐々に慣れてきて、スムーズに走れるようになる。前が近づいてくる。

直線。腰を上げて加速して、下ハンで維持する。ギリギリ交わして先に連続コーナーに入る。追いつかれないように、最速ラインを考えて走る。

遠くに、チームメイト・タケちゃんも見える。追いつけるかーーーーーっと思っているうちに、結局差は縮められずゴール。

心地よい疲労感。データを振り返っても、そこそこ追い込めていた。その追い込みをスピードに変換しきれてなかったんだけど。

レースが終わるとのんびり観戦。これもシクロクロスの楽しみ。

そして寒くなる前に、古川さんには来年のリベンジを誓い、ゴリさんにはさぬきでの再会を誓い、なぜかコース脇にいたツグナリ選手には桂川での激闘を誓い、うどん屋に向かったのであった。

次回「桂川の奇跡、ふたたび!??」お楽しみに!

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'18-19 阿波シクロクロス カテゴリ:C3
9位/10人出走

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