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モノローグ「山のあなた」 第一稿

『山のあなた』

作:harlequin moom 

 冬の朝、ベットに父親が寝ている。母親がそばにいる。

父さん、息はしているみたいだよ、痰は引いたの
息は静かだから痰は大丈夫かも、酸素濃度あげとこうか
ストーブつけよ、母さんも暖かくして
雪かな、駅までいくの大変なんだよね
俺は大丈夫だよ
厄年は来年だよ
息、静かだね、肩で息してないもんね

 布団をめくる

チアノーゼ出てる、マッサージしないと
馬油ちょうだい
下から上ね、わかってるよ

 マッサージを始める

・・・冷たい足だ
ストーブもっと強くして
まだ大丈夫だよ、年越さないと
もっと馬油頂戴
(顔のほうに向かって)父さん、聞こえる?
聞こえてるさ
そんなことないよ
大丈夫だって・・・

 マッサージを続ける

・・・・・・伯母さんたちに連絡しないといけないかもね
悪いのは知ってるの
言ってないの
なんで
・・・そう

色がもどっってきたよ、もう少しつづけよう
息が深くなったようだよ
これなら大丈夫だ
足にも赤みが
診察時間になったら先生に電話しておこうか

母さん・・・父さんはね・・・ほんとはね、会いたいんだよ・・・
手紙呼んだんだよ
脳に転移してすぐに書いたんだろうね
近況と病状が書いてあった
出せなかったの?
出さなかったの?

・・・「山のあなた」
ん、詩だよ
そう、山のあなたの空遠く「幸い」住むと人のいう・・・
手紙に書いてあったよね
しゃれてるよね

・・・麦藁
麦藁で炊いてたんだって
麦藁でご飯を炊いてたんだって、毎日
麦藁だから、あっと言う間に燃えてしまうから炊き上がるまでずっとかまどの傍にいないといけないんだって
みんなが働きに出るから、父さんが炊いていたんだって

・・・伯母さんから聞いた、じいちゃんの葬式のときに
・・・みんなが働いて父さんの学費を出してくれたんだって
・・・だから
つらいって言わない人だって・・・伯母さんが
詩集読んでたって、麦藁くべながら

見つけたのかな
見つけられたのかな

【意識したこと】
※セミナーを受けたので、何か書きたくなって書きました。
※とにかく書き上げる

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