2023年7月30日　はじめてのスラムの予選で読んだもの

涙を流すと心によいと聞く
悲しみは日常に溢れていて
毎日、毒を飲み込んでいる
混乱や怒り、敵意が覆い尽くす

心は真っ赤に燃えて
情動が涙を目から蒸発させ、一滴の涙も出ない
それでも泣き続けたら
いつかじゅるじゅると涙が流れる

じゅるじゅると流れた涙はどこへ行く？
毒をはらんだ涙は
私の足元に落ちるだけ
足元に広がる水面が見える

水面を触るとドクンドクンと
まだそこにある
黒い記憶がそこにある
わああん、わあああん

波紋が広がる
涙の軌跡が広がり
記憶が乱反射する
悲しみは黒い記憶となり

レコードの針飛びのように
触った個所を
ズルズルと繰り返す
ズルズル、ズルズル、ズルッ

涙が乾くその日まで
記憶が心を呼び覚ます
涙の軌跡に深く刻まれた
旋律が静かに響き渡る

時の砂をかけて
癒しの旋律に変わるなら
手ずから砂をかけてやるのに
タクタク、タクタク、タクタクと

決められた分しかもらえはしない
砂が落ち、時は過ぎ去り
過ぎ去った涙と記憶が淀んで
胸に響く旋律は聞こえない

時の流れに身を委ねながら
涙の水面を見つめてる
遠い昔の記憶がそこにはあるが
ゴリッと、ガチリと、ジリリと

凝り固まってしまった涙は
もう音も奏ではしない
揺らめきもしない
心を乱すこともない

黒く固まった涙の水面を見ても
心は乱れない
ドット、ドット、ドット
歩いた軌跡には黒い水面が点々と存在する

ドット、ドット、ドット
涙を流し進んでいく
ドット、ドット、ドット
ドット、ドット、ドット