私の美脚を見せた。我が友の、愛する者のために。

時は平成、私が中学生だった頃の話でございます。

私は学校の演劇で、『魔女』を演じることになりました。

人の誕生日を強奪する代わりに願いを叶える、というキーマン的な存在で、「怖いご老人だし、声の低い男子が演じた方がいいかも」という話になり、ちょうど声変わりのしていた私に白羽の矢が立ったのです。

衣装もコスプレ好きのELTの先生が「サイズを間違えた」と寄贈してくれたものがあり、早速衣装合わせになりました。

 まさかのミニスカートです。
 プレイはプレイでもそういう用途としか思えないミニっぷりに思わず躊躇しましたが、見せないことには分かりません。

 とりあえず更衣室のドアを開けると、それを見た同級生の女子はこう言いました。

「○○、めっちゃ美脚じゃん!」と。

そして、私が美脚であるという噂は学年中に広まってしまい、ついには後輩にまで「美脚だってマジですか?」などという質問をされるようになりました。

……が、それはそうと膝上レベルのミニスカは動くのに問題があるということで、同級生の母親がお下がりで寄付してくれた黒いロングスカートを本番では着用することになりました。

そして、リハーサルの日。
しばらく休んでいた町娘役の女友達が一人、なぜか俺の方を何か言いたげにチラチラと見てきていたのです。

 その時は理由などわからなかったのですが、その子の彼氏に呼び出された時に、ようやくその理由を知ることになります。

「なあ、コイツさ、お前の脚みてねえんだよ」

私は、思わず「何?」と冷たい返事を返してしまいました。

「○○って美脚なんだよね?」
「ああ、コイツマジで美脚だぜ」

質問に答えられずにフリーズする俺の前で、二人の問答は続きます。

「いや、マジで頼む。ミニスカじゃなくなったせいで一回も見てねえんだよ、マジで」
「うん。お願いっ!」

理解に苦しみましたが、脚を見たかったというのです。
私はそっと控え室のスツールに腰掛けると、衣装の靴を脱ぎ、タイツを脱ぎ、脚を見せる準備をしました。

演劇のリハーサルで来ていた仲間もいつの間にか集まっており、謎の空気が流れます。

……勝手に口から深いため息が出たのは、本当に生まれて初めての事でした。

なぜ私は、休んでいた子にプリントを見せるかのように脚を見せなければならないのか?

私は、すごく深いため息を吐きながら長めのスカートを従来の膝上丈までたくし上げ、眼前の少女に脚を見せびらかしました。

「……どうぞ」

沈黙が走ります。
ほんの束の間の静寂を切り裂いて、彼女は少し嬉しそうな声を漏らしました。

「おー、ホントに脚綺麗だね」
「……どーも」

先生が来ていた事もあってそのまま制服に着替えると、私は深いため息を吐きながら会場を後にしたのでした。

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