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サヴァン症候群とは。

サヴァン症候群とは

サヴァン症候群とは、自閉スペクトラム症などの発達障害や知的障害があり、かつある分野において突出した能力を持っている状態を指します。自分のほかの能力に比べ突出して高い能力を持つ「有能サヴァン」と、世間全体の中で見ても突出した能力を持つ「天才サヴァン」の2タイプがあります。
一口にサヴァン症候群といっても、その特徴や症状、能力の発達や困りごとの様相はさまざまです。

「有能サヴァン」と「天才サヴァン」、突出した才能には2つのケースがある

1つ目は有能サヴァンと呼ばれるケースです。その人の知的発達レベルから想定される以上の能力を、ある分野で示します。

“突出”という言葉から、人より優れた能力を持っているように思われますが、ここで言う突出とは、他人と比較して優れているという意味ではありません。世間全体で見たときにはそれほど突出した能力ではない状態であっても、自分自身の全般的な知的発達レベルに比べて、ある能力に関してのみ突出して高い能力を持っている場合、サヴァン症候群であると言えます。

2つ目に天才サヴァンというものがあります。これは有能サヴァンと同様に、能力がアンバランスになっていますが、有能サヴァンとは異なり、この突出した能力は世間全体で見ても優れていると言えるレベルにあるケースです。

天才サヴァンは珍しく、世界全体で見ても発見された人数は100人にも満たないと言われています。

サヴァン症候群というと、映画「レインマン」で描かれたキム・ピークさんや2014年に放送された中居正広さん主演の「ATARU」というドラマの主人公のようになにか特殊な能力を持っていると思われがちです。
しかし、サヴァン症候群だからといって必ずしも映画に取り上げられるような特殊な能力があるわけではありません。「特殊な能力」というよりは、能力に凸凹があるという特性を持っているのがサヴァン症候群だと言えます。

サヴァン症候群はどんな人に多い?

サヴァン症候群は自閉症と深く関わりがあると考えられています。サヴァン症候群の人には、なんらかの発達障害・知的障害がありますが、とりわけ自閉症のある人の割合が高いのです。

自閉症の人のうち約10人に1人がサヴァン症候群だと言われています。それに対してその他の発達障害・知的障害がある場合でサヴァン症候群に該当する人は、約1400人に1人だと考えられています。またもう一つ特徴的なのは、母集団である自閉症のある人に男性が多いため、男性のほうが女性に比べて約4~6倍多くいることです。

※2013年以降、自閉症より自閉症スペクトラムという言葉が一般的になりつつありますが、参考資料や参考にした論文がそれ以前に書かれたものもあるため、この記事では自閉症という表記にしています。


レインマンは実在の人物がモデル

ダスティン・ホフマンが演じた“レイモンド・バビッド”にはモデルとなった実在の人物がいました。

先天性脳障害として誕生したキム・ピーク氏(享年58歳)です。キム・ピーク氏は“サヴァン症候群”という特殊能力を持っていました。

サヴァン症候群の能力には様々な特徴がありますが、キム氏はレイモンドが電話帳を一晩で覚えたように、9000冊以上の書籍の内容を記憶しました。彼には“直感像”による記憶能力もあり、カメラのように画像化して記憶をしていました。

ウエイトレスの名前から住所と電話番号が言えたのも、記憶した映像を元に引き出せたのでしょう。床に落ちた爪楊枝の数を瞬時に言えたシーンは、キム・ピークの実際にあったエピソードが、そのまま映画に採用されました。

そして、作中でレイモンドがカメラで写真を撮るシーンがあります。その写真がエンドロールの中で流れてきますが、それはレイモンドの“記憶術”を映像化したのではないでしょうか?

原作者のバリー・モローは、キム・ピーク氏の取材から、インスピレーションを受けました。そして他のサヴァン症候群の特徴なども脚色し、レイモンド像が完成しました。

また、そのレイモンド役を演じるにあたり、ダスティン・ホフマンもキム氏と何度も面会し、役作りに励んだというエピソードがあり結果、主演男優賞を受賞します。

「Main man」なれる日までの旅

サンフォード・ダビッドは自分が死の淵にいる時、何を思ったでしょう? 施設にいるレイモンドのことは、遺産を残せば何とかなっても、20年間音沙汰のないチャーリーが兄の存在を知った場合を想定したら、それは悩みの種ともいえます。

チャーリーに残された“1949年型ビュイック・ロードマスター”は、親子の縁が切れた因縁の車ですが、兄の存在を知る鍵ともなりました。

レイモンドにずば抜けた記憶力があったおかげで、兄弟を引き合わせることができ、ビュイックには切れた兄弟の縁を取り戻す役割もあったということです。

父はいつかチャーリーのことを話さねばと思ったはずです。単に愛情だけを注ぐだけでなく、障害のある兄とどう向き合っていくか、厳しく育てたのかもしれません。

しかし、チャーリーは家を出て行き、音信不通になり手だてがなくなりました。父はビュイックに乗って、レイモンドを探し出すことに賭けたとも思えます。

兄弟の旅は雨の日には出かけない……雨の日にはレインマンがやってきて唄を歌ってくれる。そして、兄の記憶から施設へ行ったきっかけ、全てが旅の中で解明されました。

チャーリーはこの旅を通じ、レイモンドとの絆を感じますが、彼の病は感情的な部分の回復は見込めません。

それでもこの旅はレイモンドに、弟の存在を思い出させ、閉鎖的で同じルーティーンの中でしか暮らしてこなかった、彼の記憶は上書きされていきました。

レイモンドがカメラで写真を撮るシーンがありました。その写真がエンドロールで流れます。これはレイモンドが見た病院以外の世界であり、チャーリーと兄弟の絆ができる旅の証で、レイモンドの記憶そのものです。

「C・H・A・R・L・I・Eは“Main man”」と言って、レイモンドがチャーリーのおでこに、自分のおでこをつけたシーンが、絆を示す象徴的なシーンとなりました。

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