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#5 Be Quick, But Don't Be Hurry


皆さんこんにちは、冨田開です。最近の悩みは自分のフルネームを入力するときに一気に変換できない事です。冨高い、冨田会、冨田開界。特に冨他界と出た時は縁起が悪くて仕方がありません。自主隔離をしているのでこれくらいしか身近なニュースがありませんでした。自主隔離が明け練習を開始しました。氷上に乗るのは2ヶ月ぶりです。



北米育成システム USA Hockey

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さて今回は「アメリカの育成」に焦点を当てて話していきたいと思います。アメリカのアイスホッケー界は USA Hockeyという組織を基盤として、リーグや試合の運営や選手の育成などを行なっています。USA Hockeyの主な重点はホッケープログラムのサポートと開発であり、ユースホッケーが主な焦点ですが、USA Hockeyには全ての能力レベルのプレーヤーに機会を提供するジュニア及び、アダルトホッケープログラムもあります。その中でも近年、長期間かけてより良い選手を輩出するための「指導者教育プログラム」というものが存在します。これは「選手の育成のために指導者が何をすべきか」を表した指導者の教科書のようなものでもあります。日本のアイスホッケー界でも若林弘紀コーチを筆頭にアメリカの育成システムが導入されていますが、まだまだ認知されていないように感じます。



世界レベルの選手を育成する

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USA Hockeyは世界レベルの選手を育成する為に重要な年齢は4 歳から26歳と挙げています。実際は26歳では少し遅すぎで、ユースと呼ばれる年代もしくはそれより遥かに下の年齢で基本的なスポーツレベルは定着します。その為、自分で判断するのが難しいとされる若い年代の育成に重要になってくるのが指導者、コーチの存在です。世界で通用する選手を育成・発育する為に何を考慮すれば良いのかはコーチングとしての大切な指標です。

コーチングといってもただがむしゃらに、一生懸命指導すれば良い訳ではありません。選手の年齢や年代によってトレーニングする分野を細分化していく必要があります。USA Hockeyは長期的な指導を年齢によって次のように分けて考える事を推奨しています。

・身体力
・認識力
・社会性
・技術力
・戦術
・習慣

どの分野においても言われているのはPhysical Literacy(フィジカルリテラシー)を若い年齢で身に付けていくという事です。Physical Literacy(フィジカルリテラシー)とは心身ともに健康で幸福な社会生活を営む上で持っておく基礎的要素、それは生まれながらに持っているものではなく教育や指導によって育まれ、使いこなせるようになる物です。日本語訳すると「体の賢さ」とも言われているようです。自分の体を自由自在に操る能力、これは小さい頃が一番身に付きやすいと言われています。例えば、今から目を瞑って両腕を肩の高さで地面と平行になるように挙げてくださいと言われて一回で完璧にできる人は少ないと思います。簡単にいうとこれを如何なるとき、如何なる場所でもズレなく、完璧にできるというのがPhysical Literacy(フィジカルリテラシー)、体の賢さなのです。北米では幼少期に1つのスポーツに絞らず、複数のスポーツをさせることが多いのはこの為でもあります。夏期はラクロス、冬季はホッケーなど違うスポーツをする事で体は賢くなり、身体的能力も飛躍的に上がるのです。私自身も幼少期はサッカー、バスケ、野球など沢山のスポーツをさせてもらいました。唯一触れ合ってこなかったのは音楽で、リコーダーのテストは中学時いつも最下位でした。ギターを最近始めましたがなんだかよく分かりません。因みに彼、Deion Luwynn SandersはNFL選手とMLB選手として活躍したマルチアスリートで、ワールドシリーズとスーパーボウルの両方に出場した選手です。世の中にはこのようなお化けもいるのです。スポーツに詳しくない人にどのくらい凄いかを簡単に説明すると、僕がこれからピアノとヴァイオリンの発表会で全国で一位になる10倍くらい難しいという事です。

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ユーススポーツにおける選手育成


1. 何がユーススポーツで素晴らしい経験を生み出すのか

2. ADM(Architecture Development Method)とは


1. 何がユーススポーツで素晴らしい経験を生み出すのか

・年齢にあった選手の育成方針
・選手に焦点を当てた環境(コーチ中心ではなく)
・ポジティブな経験(勝利と育成のバランス)

適切な育成トレーニングとは、子供達の年代・年齢の範囲、個々の能力、経験、その範囲で伴って変化する能力を考慮した上で適応するコーチングの能力です。例えば、大人と子供のスポーツにおける違いは何でしょうか。6歳のまだ体が出来上がっていない子供に、大人と同じサイズのフィールドやリンク、ゴールネットでスポーツをさせる事は果たして良い育成と言えるのでしょうか。次の図はUSA Hockey が提唱した年齢におけるフィールドのサイズの早見表です。

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フルサイズのリンクでできるのは最低でも10歳から、それ以下はクロスアイス(半面)が推奨されています。また8歳以下はブルーパック(普通よりも軽いパック)での試合、6歳以下はゴールキーパーも必要としていません。近年、ユースホッケーではクロスアイスゲームが多くなってきてはいますが、小さい子供にフルアイスで試合をさせるのは育成には向いていないという事です。


2. ADM(Architecture Development Method)とは

ADMとはArchitecture Development Methodの略で育成のための適正年齢とパフォーマンス向上のプロセスの事です。大切であるのは2つで適正年齢を知ることと高い質の教育をすることです。
適正年齢=適切な時期に正しい努力をする
高パフォーマンス=高い質の教育・技術を全ての選手に提供する。



コーチングの基本

基本的なコーチングサイクル
計画ー安全性ー信頼関係ー説明ーデモー観察-分析・決断ー復習

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・どのように説明するか

1. 何を言うか計画する
2. 始める前に注目させる
3. 端的、シンプルに
4. 質問と理解度の確認


・どのようにデモンストレーションをするか

1. 全員が見聞きできる位置取り
2. 沈黙の中で正しいデモの提供
3. 異なる角度から数回、ポイントを絞ったでデモの提供
4. 質問と理解度の確認


・どのように選手を観察するか

1. 全ての行動を見る
2.  焦点を当てる部分やコーチングポイントを段階化する
3. 必要に応じて違う角度から観察する
4. 何回も観察する

・どのように分析し決断するか
・どのようにフィードバックを生成、提供するか


以下の流れから選手を分析し、正しいフィードバックを選手に提供。練習のプランを選択する。

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良い練習のための5つの練習デザイン

・楽しさ
・一定の意思決定(判断)
・競走
・ゲームを意識する
・パックを使う


Diversity, Equity, and Inclusion


Diversity=多様性
Equity=公正・公平
Inclusion=包括性

USA Hockeyが子供を育成する上で大切にしている事、言わば三箇条です。

「私達は多様性、公正、包括的なプログラムを設立し、全ての人が参加できる環境を促進する」

「私達は1つのコミュニティーとして全ての人種、性別、団体への背景を祝福する」

「私達はスポーツや日々の生活での意味ある行動が、重要な変化を作用する事を信じる」これらの三つは育成以前に社会で大切になってくると思います。」



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Diversity and Inclusion 多様性と包括性とは簡単に言うと異なる個人やユニークなグループを互いに認め合い、統合する事ですがそれぞれが全く異なる概念であり、別々の利点があります。ダイバーシティ(多様性)とは人種、宗教、国籍、性別、学歴など多様な個人を受け入れ、違いを認め尊敬する事です。一方でインクリュージョン(包括性)とは互いに認め合っていることを前提として組織として一体化し、協力して個人を生かすことになります。これらは決して対立した考えではなく多様性(個性を受け入れる)があるからこそ包括性(個性を活かす)に発展するのです。日本は島国であるので北米ほど多様性文化に触れ合う機会が少ないと感じますが、個性を受け入れると言う意味では同じです。子供の個性を受け入れることが指導者として大切になります。



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続いて、Equity=公正・公平についてです。これはよく耳にするEquality=平等とはまた少し違います。上図は北米で学習すると必ずと言って良いほど目にする Equality(平等) vs Equity(公正・公平 )vs Reality(現実)の図です。辞書によると

平等とは「条件に関係なく、全てを同じように扱うこと」です。左図では全員に対して平等に足場を与えることで、試合を見れない人がいます。

公平とは「偏りがなく、全てを同じように扱うこと」です。中図はそれぞれの状況に応じて待遇を変えることで全員が公平に試合を見る事が可能になっています。

スタート地点を同じにする(平等)も大切ですが、USA Hockeyが焦点を当てているはゴールまでの距離を同じにしよう(公平)と言う事です。スポーツの世界では全員のスタート地点、所謂、能力が等しい訳ではありません。その為に全員に対し同じものを与える平等は機能しにくいのです。例えば、初期能力が高いA君とあまりスポーツが得意ではないB君に同じ練習メニューを与え続けたとします。なぜならこれが皆が望む平等だからです。するとA君は成長しレベルアップしていきます。一方でB君にはA君には追いつかないほど大きな差が生まれます。勿論、「うさぎとかめ」の童話のようにコツコツ努力して最後には勝つというお話もありますし、そのような選手もいるのは事実です。しかし、この童話の重要ポイントは目指すべきゴールがあると言う事です。ゴールがなければどこに向かうのか、誰でもカメを見ているウサギにもなりかねないのです。明確なゴールを作ってあげるのも指導者の仕事でもあります。スポーツにおける平等は時に残酷で、判断するのは難しいですよね。公平に重視してリーグやチームレベルの平均値を上げれば、そのほうがシステムとして機能する、レベルの底上げになるという考え方なのです。




タイトルにある

Be quick, but don't be hurry
機敏であれ、しかし慌ててはいけない。

と言う言葉はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を10度全米王者に導いた伝説の名将 John Robert Woodenの言葉です。彼は全米中のスポーツ指導者から、リスペクトされるレジェンドです。

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彼はまた「成功のピラミッド」という哲学を作った人でもあります。一年生で入ってきた新人にはまずは靴下の履き方から教えるそうです。やっぱり伝説と呼ばれる人は変わってます。あくまでも成功するための準備を怠ってはいけない、細部に目を向けるという、基本ですがその本質に目を向ける事が大切だと教えてくれています。


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北米でスポーツマネジメントを専攻するとこのピラミッドは必ず出てきます。日本語で書かれてあるのを見つけたので貼っておきます。今ではビジネスでもこの「成功のピラミッド」は教訓として使われているようです・



Works Cited



最後まで読んで頂きありがとうございました。今回は病院を嫌がるアーサー君と共にお別れです。

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それでは! See you later!! #6





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