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折り紙の技術を織り込んだ独自のブックフォールディングで世界へ。

幼少時代から好きだった折り紙作りを生かしたブックフォールディング。その制作技法およびブランド【OruFun】にて、作品をつくり続けるD.Hinklayさん。海外でも人気が高くInstagramのフォロワーは6.9万人。ブックフォールディングとの出会いや【OruFun】を立ち上げたきっかけをお伺いしました。

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父親の「ノーベル賞を目指したら」がきっかけで変わった視点

どんな幼少期でしたか?

トランスフォーマーなどに憧れを持っている子供でした。折り紙は小学2年生ぐらいから好きでしたね。ずっと夢中でやってて、そこから半年か1年くらい経ってから、それなりに自分らしい作品を作れるようになったんです。小学3年生の時にお父さんから、お前これ凄いからノーベル賞を目指したらと唐突に言われて。ノーベル賞って知ってるかって聞かれて、知らないと答えたら、世界を良くした人がもらえる凄い賞だよって説明されて、それ取れよって言われたんです。たまたま家にノーベル賞の図鑑みたいなのがあったのでそれ見たらめっちゃ凄くて。僕、勉強とか他のことは全然ダメで、続かないのに、昔から折り紙だけは続けることが出来て。折り紙は初めての作品からめちゃめちゃ褒められたんです。それが凄い嬉しかった。今までにない経験というか。あとお父さんに褒められたっていうのが一番大きくて。その言葉が響いて、今でも続けてるっていうのはありますね。

その後も、誕生日に折り紙の本を買ってもらったりして、どんどん折り紙の世界にはまっていきました。近所で通った折り紙教室で、先生にもう教えるものはないと言われたくらい。それくらい毎日夢中で折り紙をつくっていました。

あと、テレビチャンピオンで折り紙作家の神谷哲史さんが優勝した回を見たんです。その方の作品が、エルメスのショーウィンドウで飾られたことを知り、自分もいつか折り紙のプロになりたいと思いました。一方で追求すればするほど、理想との壁にぶち当たり、高校生になる頃には、まあ趣味でいいかなと半ば諦めてました。

大学は、外国語学部へ。なぜ英語を学ぼうと思ったのですか?

もともと高校生の時から、ヘヴィメタルとか、海外の音楽が好きだったんです。折り紙も好きだったんですけど、欧米文化も小さい頃から好きで。漠然と英語出来たらいいんじゃないってことで、そっちの方に進みました。

ヘヴィメタルと折り紙ってあまりリンクするイメージありませんが・・

ヘヴィメタルは、次男がその当時色々友達から音楽を教えてもらってて、その影響で僕も聴くようになったんです。その中で僕が一番好きな『SlipKnoT』っていうアメリカのヘヴィメタルバンドがいて、彼らはマスクしてて、めちゃめちゃ奇抜なんです。僕の知ってる音楽の世界からどう考えても逸脱してて。僕は小さい頃から折り紙をやっていたけど、周りはみんなやってなかったから、結構バカにされてるような感じだったんです、村八分みたいな。その世界観とリンクしたのがヘヴィメタルだったような気がして。すごい自分を肯定されたような気持ちになったんですよ。それでヘヴィメタルが好きになりました。

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起業を決めた理由や時期は?

僕、折り紙のノーベル賞だったりとか、自分はとんでもない人間になるんだって決めてたんで、就職活動は全然してなかったんですよ。ヤフー株式会社だけ受けたんですが、結局落ちてしまって。何かやろうかなって思ってた大学3年の時に映画『ソーシャル・ネットワーク』を観て、とても影響を受けました。懐かしい時代です(笑)その後、自分でwebサービスを立ち上げようと、現在【OruFun】の共同創業者として一緒に活動している青木と共に、起業のためのサービス開発に勤しみました。プログラミングも初心者だったため、大学の先生に相談してC言語の本を借りて勉強するなど、ひたすら手探りの1年間を過ごしました。でも結局サービスもうまくいかず解散することになりました。

その後もアルバイトをしながら趣味で折り紙は続けてました。そんな最中、ふと、インターネットでブックフォールディングと出会ったんです。折り紙の世界観とリンクするその作品にたちまち魅了されました。これなら途中で諦めてしまった折り紙でプロになるという昔の夢も叶えられる。この想いから折り紙の技術を織り込んだ独自のブックフォールディングの作品を作ろうと決めました。

その後、完成した作品をFacebookで公開して、色んな人の目に留まるようにしてみましたが、ほとんど反応がなかったんです。でもある時、その作品を友人が購入してくれ、facebookにUPしてくれた。その作品を、なんと、かつて起業を共にした青木が発見してくれて。改めて2人で話す機会をもう一度つくったんです。結果、本のページを折るという非常識な事でも楽しさを感じて欲しい、という想いから“本を折る with Fun”=【OruFun】というブランドを2人で立ち上げることになりました。

ネットで検索して、ブックフォールディングを見つけた?

アートとか全然興味ないんですけど、なんかカッコいい形をしてるものが好きで。「アート ブック」みたいな感じで検索した時に出会ったんです。そこでもうこれだ!と思って。こう考えると大学生時代の僕はほんとにアホだなと思います(笑)映画に触発されるし、めちゃめちゃアホな単語で検索するし、みたいな。今でもそうなんですけど。自分の好きな音楽だったり、アーティストだったり。あと『トランスフォーマー』とか『アイアンマン』の映画のコンセプトアートみたいなのを色々探してたんですよ。当時ネットで画像を漁るっていうのが好きだったんです。本当に偶然でしたね。

誰かに相談したりはしなかった?

全然ないですね。僕、人に頼るのが凄くのが苦手で。自分で思いついて、自分で完結させなきゃいけないと思ってるし。それじゃないと成果物じゃないって自分で思ってる節があるので。全然相談とかしようと思わなかったです。

かつて事業を企てたお2人、活動計画をたてられたのですね。

最初の頃はブックフォールディングがめちゃめちゃ面白いから、とりあえず僕が作って、青木は英語が僕より得意なので、Instagram経由で英語で対応してもらおうと。色々やってる中、青木がやっぱり自分は作る側じゃなくて、外向きというか、地盤を固める人間だと言ってきたんです。それで、こういうの目指そうよっていうのを、1枚の紙で提示してきてくれた。ざっくりした5年指標くらいの事業計画。今、改めて見ると意外とそれを今までなぞってきてますね(笑)2017年から2022年までの計画。僕たちがめちゃめちゃ有名になって、いつかこの紙に価値が出てくると嬉しいな(笑)

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それは2人でやる強みかもしれないですね。

そうですね。僕が作る以外本当に何も出来ないんで。もしかしたらやろうと思えば出来るかもしれないんですけど、やってくれる人がいるとマジでやらなくなっちゃうんですよ。その辺を彼が全部カバーしてくれているっていうのがあるので。その部分はすごい楽です。頼れる存在です。

Instagramでは何を心がけた?

まず、英語で発信しようということを決めていました。理由はパイが広いから。漠然と海外で戦いたいなと。実際に英語でやったら結構評判が良く、コミュニケーションが取りやすかったですね。そもそもInstagramは言語関係ないんですよ、写真が良ければ。それをやってるうちに最初の一ヶ月でフォロワーが300人くらいついて。うわ、こんなにいくんだと思って。2ヶ月ぐらいで1000人くらいになって。たまたまアメコミ系の映画の作品を紹介してるアカウントがあり、ちょうどそういうのを作ってる時期だったので、これ投稿してよってお願いしてみたら、あ、いいよって二つ返事で載せてくれたんです。今考えたら、めちゃめちゃ失礼なんですけど。その投稿後、今までそんなことなかったのに、1日にフォロワーが100人増えるってことがあって。フォロワーの多いアカウントに紹介してもらうとこんなことがあるんだなって初めて知りました。

そこから、色々調べて、アートを紹介するアカウントがあるって知って、コンタクトをとり始め、そのやり取りの後、4ヶ月ぐらいで1万人になりました。それでまた色んなところにお願いして、の継続です。たまたまその映画のアカウントがあって、たまたま良い結果が出たのがきっかけですね。ラッキーなんです。運がいいんですよ(笑)

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好きなことをひたすらに

昔、Instagramでとある高校生から「美大に行きたいけど経済的余裕がない。美大に行けないならアーティストになる夢を諦めなくちゃと思っていた。だけど、独学から始めたブックフォールディングでグローバルに活躍しているあなたの姿を見て、美大に行くことが全てではない。別学部で学びながら夢を叶えていきたい」要約するとこんな内容のDMがきたんです。僕たち自身、英語という武器が、自分達の活動をさらに広げていると思うし、歩んできた道に後悔はありません。自分達がただひたすら好きでやっていることが、知らない誰かにパワーを与えていることに、とても勇気付けられました。

製作にあたって気をつけていることはありますか?

本のページを“切る“のではなく“折る“。絶対に刃物を使わないと心に決めています。ページ1枚1枚を、ミリ単位で折る箇所をずらし、何枚も折っていくと、滑らかな輪郭が出来てくるんです。ここは日本が誇る繊細な折り紙の繊細な技術の見せ所なんです。左右のページにかかる力を考えながら、爪を使ってかなり固くページを折ったり、指の腹を使ってふわりとした輪郭を作り出したり、全体のバランスを見てページを折っていきます。

今後どのような展開をしていきたいですか?

プロモーションビデオをつくりたいなと思っています。作り手がカッコよくないと意味ないので、まずは作り手に注目させたいです。あと、ヘヴィメタル・WWE(プロレス)・エナジードリンクが好きなのでいつかコラボしたいと思ってます。モンスターやレッドブルのスポンサードも目指しています。ストリートカルチャーもつくっていきたい。あと青木がNBA好きなのでNBAとも何かできたら嬉しいです(笑)

メディアへの露出も増えてきましたが、展開として何か変わったところはありますか?

基本的には変わってないです。でも、今後の展開として、ブックフォールディングが全てじゃなくて、他にも作れる作品形態があったらそっちもやっていきたいと思ってます。何でもぴょんぴょん乗り換えるつもりはないですけど。ブックフォールディング自体も、ちょっと前にInstagramにアップした大きい作品とか、60cm×70cmの本で作った作品とかを、もっとハイブランド化して、より可能性を高めつつ、他のことも模索しくというようなことをやっていきたいと思ってます。

視野が広がったきっかけは?

なんだろうな。余裕が出たかな。言うほどじゃないんですけど。前までブックフォールディングしかないと思いながらやってたんです。もっといえば、自分の手で作った作品を誰かに届けるしかないと思ってた。でも、例えば作り方が売れたりとか、制作動画を買いたいというオファーなどもあって。色々やり方、広げ方があるなっていう風に余裕が出てきて、考え方が広がったっていうのは、確かにあると思います。

テレビの影響が大きいですか?

テレビはあんまり関係ないかなと僕は思ってて。自分の好きなもの、音楽とかプロレスでもなんでもいいんですけど。そういうのを見てるうちに、これは自分たちと結び付けれるんじゃないかなって、漠然と思いついて、漠然と模索してるって感じです。

最後に、自身の作品で一番好きな作品は?

どの作品も好きなんですけど、どの作品も好きじゃなくて。その作品の中でここよく出来たなっていうのと、ここ全然だめだなっていうのが絶対どこかにあって。100%満足出来る作品とかお気に入りっていうのがあんまり自分の中ではないですね。カッコつけて言っちゃうと、作品の完成度より、思い出のほうが大事かなと思ってます。その作品を通して何があるかっていうのが僕はいいと思うんです。

先日、初めてご注文を頂いた方に、直接作品を手渡す経験をしました。今までは大体海外のお客さんが多かったので、配送して、あとで「ありがとう」ってメッセージがくる、とかが多かったんです。でも、今回直接お渡ししたら、目の前ですごく喜んでくれて。その反応を見て、ああ、いい作品を作れた。自分にも価値があったんだ、と改めて思いました。僕は作品があるだけでは意味がないと思ってて。それを通して、誰かが何かを思ってくれたら、初めて価値が出るんじゃないかなと思っています。

D.Hinklay
スパイダーマン:ホームカミング、現在、海外ドラマ『シリコンバレー(Silicon Valley)』にBertram Gilfoyle役として出演中のMartin Starrや『SlipKnoT』のCorey Taylor (Vo)のサイドプロジェクトである 『Stone Sour)』などへ作品を制作。多くの挑戦者に愛用されるブックフォールディングアーティスト。ルーツでもある折り紙の伝統的な作り方を尊重しながら、本のページを折るだけで作品を制作している。
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