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女子中高生向けファッション誌「Seventeen」の休刊を分析

30代後半且つ性別が男性である自分には、最も縁の遠い雑誌といっても過言ではないが、女子中高生向けのファッション誌である「Seventeen」が9月発売の号をもって休刊とすることを発表した。

以前、赤文字系雑誌の「JJ」が休刊を発表したときに、『赤文字系雑誌「JJ」の休刊を分析』という記事をアップしたのだが、そちらが思いのほか好評というか、かなりの人に読んでいただいたので、今回「Seventeen」の休刊も分析してみる。

以前の記事はこちらから

「Seventeen」とは

集英社から刊行されている女子中高生向けファッション誌である「Seventeen」。その歴史は古く、1968年に「週刊セブンティーン」として創刊され、通巻1000号となる1988年に「SEVENTEEN」と表記をアルファベットに変更し刊行ペースも隔週(2週間に1回)に。そして創刊40周年の2008年にタイトルを現在の「Seventeen」に変更し、月刊化。雑誌の中でもかなりの長寿雑誌といえる。長寿雑誌になればなるほど休刊という判断を出しにくくなるというのが出版社あるある。今回の休刊という判断もおそらく断腸の思いであったと思われる。

女優への登竜門!!

「Seventeen」は何と言っても元専属モデルの豪華さが特徴。筆者世代でいうと北川景子や榮倉奈々などが筆頭だが、波留や桐谷美玲、広瀬アリス・すず姉妹に中条あやみなど、とにかく元Seventeenモデルの現女優がすごいことになっている。

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雑誌をちゃんと読んだことはないが女優さんの紹介文で「元Seventeenモデル」という言葉は聞いたことがある人も多いのではないだろうか。

読者ターゲットと広告

これだけ人気モデルをその時代毎に抱えながら、今回なぜ休刊という結末を迎えてしまったのか。それは良くも悪くも雑誌のメインの読者層が「女子中高生」だったことに起因している。ちなみに現在の「Seventeen」の発行部数は約9万部。以前の「JJ」の記事の時にも書いたが、9万部というのは雑誌業界の中ではかなり良い方の雑誌である。1万部や2万部で成立させている雑誌が山ほどある中で9万分も印刷されている雑誌は本当に優秀な部類である。ではなぜ休刊となったのか。

簡潔に申し上げて広告収入の減少

「Seventeen」の休刊に関してはこの一言に尽きるといってもいいかもしれない。広告収入の減少。元々女子中高生でも手に入れやすい500円という定価設定をしている「Seventeen」。つまり雑誌が売れて入ってくる利益は他の雑誌よりも少ない。それ故広告頼みの経営体質であったことは否めない。コロナの影響によりアパレル不況が叫ばれ、アパレルブランドからの広告が減少した結果、雑誌単体の経営を圧迫した。と、書くと簡単なのだが、先に挙げた通り、ここにメインターゲットが女子中高生だったことに深く関わってくる。もちろん若い世代になればなるほど情報を雑誌よりもSNSから得ている為、雑誌が売れなくなったといった要因も「JJ」の休刊の時よりは影響していることだろう。しかし、ターゲットが若いからこその広告クライアントの難しさがそこにはあったのだろう。

アパレルの中でもコロナの影響が一番直撃したアパレルブランド

「Seventeen」は再三申し上げているように、女子中高生をターゲットにしたファッション誌である。言い換えると女子中高生でも手の届く情報がそこにはあった。つまり20代や30代をターゲットにするよりも安価な商品の情報が雑誌内のメインコンテンツとなる。そういった商品を提供しているブランドは安価な商品で稼ぐためには数量を多く売る必要があり、そのためには製造の拠点を海外に移し安い人件費で大量生産し安く仕入れ、商品の定価を安く抑える。薄利多売の基本的な原理がそこには働いている。しかし世界的なコロナウイルスの影響によりこういった海外に製造拠点を移して大量生産していたブランドの商品提供が一時期ストップした。安いものをたくさん売って、また作ってまた売って...というサイクルをテンポよく続ける必要があるブランドにとっては致命的な事態に陥ったのである。ファッション系のメディアに関わる知人にいろいろ話を聞いたが、メイドインジャパンに拘っているブランドや、量産系でないブランドは致命傷を受けるほどのダメージは受けていないというのがホントのところ。コロナにより不況に追い込まれた会社は数知れない。その中でもアパレルが受けた打撃は大きいといえるが、そのアパレルの中でも若年層をターゲットにした、所謂「Seventeen」がメインターゲットであったアパレルブランドが一番の被害者と言えるだろう。ターゲットが若いことでそういったブランドの広告に頼らざるを得なかった「Seventeen」。必然的にこの1年で広告が厳しくなっていってしまったことは想像に難くない。「ルイ・ヴィトン」や「ブルガリ」「エルメス」などのハイブランドに頼れない若年層ターゲットの雑誌にとってコロナの影響は本当に苦難であったのだろう。

まだまだこれからに期待できる雑誌だった

昔は「Seventeen」のように雑誌の売れっ子モデルがタレントや女優になっていくという流れは多かったが、最近は坂道系アイドルやインスタグラマーやYouTuberなどが、莫大なフォロワーを抱えて雑誌の専属モデルに逆輸入されるパターンが増えている。そんな中で「Seventeen」の新人発掘力は令和の時代にも群を抜いて先見の明をもっていたと言える。情報を発信するメディアとしてテレビ・新聞・雑誌問わず先見の明はとても大事なこと。先見の明があるからこそ流行りや時代の流れにあった情報を50年以上提供し続けてこれたのだろう。そして今後「元Seventeenモデル」という肩書の容姿端麗で才能に溢れた女優に出会うことができなくなるという一抹の悲しさ・切なさを感じているのはきっと筆者だけではないのではないだろうか。雑誌業界における「休刊」というワードは「廃刊」とほぼ同義語と捉えられる。おそらく「Seventeen」が定期刊行誌として復活することはほぼありえないのだろう。しかし、様々な状況や環境を乗り越えて、是非一流女優生産工場としての復活を強く希望したい。

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