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「ストーリー・オブ・マイライフ」感想

久しぶりの映画館。
また一つ日常が帰ってきた気がします。

ということで、今回は「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

一言で言えば「本当に素敵な映画」。
「レディ・バード」も大好きな映画なんですが、グレタ・ガーウィグは本当に才能のある監督だと思う。
あと、何と言ってもシアーシャ・ローナン。
彼女の演技力というか雰囲気が本当に抜群。
一番好きな若手俳優かもしれない。さらに言えば、一番上手じゃないかとも思っていたりする。

どこか懐かしくて、何か新しい

まずは映画としての評価、というか全体を通じて映画として自分の目にどう映ったか。

自分自身、映画評論家どころか映画通とも言えない程度にしか過去の作品を見ていないので少しおこがましいのだけれど、この作品からは何となく懐かしい映画の匂いを感じた。
勿論、若草物語という古典的な原作を採用されているから、というのはあるのだろうけど、丁寧に登場人物の心情を追いかけていくところ、画面の作り方なんかにそういう物を感じたのだと思う。

同時に現代的と感じる要素があって、それが時系列の扱い方で。
所謂、過去と未来を説明なしに行き来する構成はとても今っぽい。
少しずつ見ている人が頭の中でピースを組み立てて、最後にパチッと嵌る瞬間はやはり物語を見るものにとって気持ちが良い。

この2つが融合していたことで、登場人物達をより立体的に捉えられ、魅力的に映していたように感じる。

自分らしく生きるということ

次に、いつもの感想文のように何となく自分の思った切り口で。

四姉妹は決して思うがまま、我がままには生きていないし生きられない。
そこには、経済的な苦境や女性として社会に出ていくことの壁やもっとシンプルに病魔という枷がある。
でも彼女たちはそれぞれが自分らしく生きていると思う。
それは、時に悩み時に怒り時に涙することはあれど、その生き方を選択したことに後悔するのではなく、前向きだから。

そんな生き方を僕は尊いと思う。

別に生きていく上で、制約があった方が良いと言いたい訳ではない。
というよりも、時代や性別や生まれた国によって異なれど、誰だって人生の選択においての枷というものはある。
現代を生きるのにだって物理的にも社会的にも様々な要因があって、全てが思い通りになんてならないのだ。
スヌーピーの有名な言葉を引用すれば「配られたカードで勝負するっきゃないのさ」ということ。

僕は、貴方は、皆は、世の人々は必至で勝負しているだろうか?
配られたカードだけを武器に闘っていくのは案外しんどくて、貫き通すのは難しい。
少なくとも、自省したら「どう考えてもできてないよー」という感じはある。

繰り返しになるが、四人の儘ならない現実を自分の行動と才能でいつも精一杯に折り合いをつけて、進んでいく。
しかも、その彼女たちは才能のある若者ではあるけれども、ごくごく決一握りのスペシャルではない。(と僕は思った。ここは見方が割れるかもしれないけど)

地続きの人物に思えるから、余計に彼女たちの「自分らしく生きる」姿が羨ましいし、眩しくて、美しい。
同時に、全てが上手くいくわけではないことにも共感できてしまう。そんな葛藤し悩む姿は少し切ない。

「善良で一生懸命で優しい人々の美しくて少し切ない日々」の風景、それが僕にとって「本当に素敵な映画」の正体だった。


最後に蛇足。
今年、アカデミー賞に絡んだ作品は、どれも他の年ならもっと受賞してもおかしくないような映画で、まさに当たり年と言えそう。
見る側としては嬉しい事です。

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