夢から痛みを持ってくる
どこか分からない駅の改札で、偶然懐かしい人に会った。
偶然のくせに、それが中学の頃の部活の先輩だと気づくまで全く時間がかからなかった。
夢というのは、現実で起こりそうで起こりえない絶妙なラインをついてくる。
おー!とお互いが同じタイミングで認識しあった。
マスクを少し外して口元を見せながら名前を呼び合う。
先輩なのに、自然と呼び捨てで呼んでしまうのはあの頃と変わらなかった。
顔立ちの良さもあの頃から全く変わっていない。
イケメン・運動神経抜群・ヤンチャ
どれをとっても学校内で彼に勝る人はいなかった気がする。
彼が中学を卒業してから会うことは無くなったけど、やはりイケメンの噂はどこからでも回ってくるようで、
高校卒業してからは俳優を目指して上京したと聞いていた。
でもいつの間にか地元に帰っていて、今は向暑はるの同級生と同じ職場で働いている。
こんなこと本人の前では言えないけど、やっと同じ場所に立てている気がして内心よっしゃと思った。
せっかくだから遊びに行こうか。
別の用事がある気がしたけど、思い出せないので遊ぶことにした。
ここに違和感を持たないところも夢らしくて面白い。
電車で数駅超えた後、見たこともない川沿いにやってきた。
どうやら川を境に国境が引かれているらしい。
彼は、川を飛び越えて違法入国をしようと提案した。
突然意味の分からないことを言い出したけど、
気がつけば、ひとっ飛びで無邪気に川を飛び越えていた。
彼が反対の川沿いに着地したタイミングで、向暑はるの目が覚めた。
途端に身体の寒気と怠さと、左腕の痛みが襲う。
そういえば数時間前に”3回目”を打ったことを思い出した。
因果関係があるのかは分からないけど、変な夢を見ていたことになんとなく合点した。
夢の中で、まだ彼に追い付けていないことを暗示されてしまっているような気がして、ちょっとだけ心が痛くなった。
時刻は夜中の2時だった。
この痛みはもう少しだけ続きそうだ。
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