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ドSな彼女 9


 僕は里緒菜さんが好きだ。この感情は恋愛感情だ。ずっと一緒に居たいし、結婚して二人の子供を作って家庭を持ちたい。そういう感情だ。
 では里緒菜さんの僕を好きという感情が、どういう感情かが問題なわけだ。
 ペット愛だとしたら。お互いの感情がすれ違うことになる。
 ペットと結婚したいって人はいないだろうから。
 だとしたら、里緒菜さんの気持ちを確かめることは簡単だ。
 結婚してほしいと言う僕に、何と答えるかですぐわかる。
 もちろん結婚は今すぐできないから、僕が大人になって就職してからと条件付けしてのプロポーズになるわけだけど。

「結婚してください。もちろん今すぐじゃなくて、僕が成人して就職した時でいいんです。その気持ちを確かめたいんです」
 僕は里緒菜さんの目を見つめてそう言った。バイト先のバーガーショップの客席で。
 他に客はいなくてガラリとした店内には、クラシカルなBGMが流れていた。
 ベートーヴェンの第五交響曲だなんて、あまりに適切な選曲だ。
 すると、座っていた里緒菜さんが立ち上がって、いきなり笑い出した。
「きゃはは、面白い冗談。ペット君が何言ってるの? 犬と結婚する人なんていないでしょ。まあ、よほどの変態女だったら、そういう人いるかもしれないけど、あたしそうじゃないから。彼氏だっていますよもちろん。あなたは私のかわいい犬コロなのよ。馬鹿なこと言ってないで、早く裸になって両手を後ろに回しなさい」
 きつい言い方をされて僕はショックを受ける。
 でも、泣きながら僕は全裸になると後ろに手を回した。
 ペットとしてでも、僕は里緒菜さんと一緒に居たいのだ。

 涙で濡れた目で僕は目を覚ました。夢だったのだ。悪夢なのか、正夢なのか?
 正夢なような気がするな。僕は今日のバイトの予定を憂鬱に感じてしまった。
 バイトに行くのを憂鬱に思うなんて初めてだった。
 いつもだったら、射精してから三日目だと、すでにムラムラしてエッチな事ばかり考えてしまう僕なのだけど、そういえば今朝は朝立ちでの痛い思いもしていなかった。
 やはり気分が落ち込んでるから性欲も沈んでるのかな。
 今日のバイトのシフトは昼食時だけだ。11時に入って、15時終わり。
 十時半に家を出て、僕は自転車をこぎだした。
 最初は貞操具はめたまま自転車乗るのは違和感あったけど、サドルの前の方に座るようにしたら案外普通に乗ることができた。蝉の声がうるさく耳につき、耳鳴りみたいに思えた。

 バイト先のバーガーショップに着いた僕は、自転車を店の横のスペースにあるポールにフレームロックして停めた後、オレンジ色のドアを開いた。カランカランとドアのベルが鳴る。
 客が数人、ボックス席に居たけど、昨日会った遠藤さんらではなかった。
 昨夜、トイレの中に三人で入ったことを思い出す。
 あの時、遠藤さんのおっぱいを見せられたけど、結局僕は触りもしなかった。
 会話の内容がショックで、そんな気も起きなかったのだ。
 カウンターの奥から、里緒菜さんが優しい笑みを送ってくれた。
 今日は絶対里緒菜さんの気持ちを確認するぞ。
 僕は心の中でそう決心すると、関係者専用のドアを開けた。
 昨日と同じように、僕が着替えていると里緒菜さんが顔を見せた。
 里緒菜さんの持っている鍵で、チンコロックを外してもらわないと、股間がかさばって制服のスラックスは履けないのだ。
「今日も異常ないみたいね。あれ? でも昨日と比べておちんちん、元気ないよ」
 里緒菜さんはCB6000を外したあと、僕の物を握って不思議そうに言う。
「もしかして、夢精とかした?」
 しゃがんだ里緒菜さんが僕を見上げて訊いてくる。
「いえ、そんなことないです。自転車こいで急いできたから、ちょっと疲れて……」
 適当にごまかした。
 里緒菜さんの気持ちをすぐにでも聞きたかったけど、怖い気もするし、今は時間がない。
 じゃあ、バイト頑張ろうね、そう言って里緒菜さんが先に控室から出て行った。

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