従妹は、これがないと眠れないのだと、わざわざ持ってきた大きなぬいぐるみを示して、恥ずかしそうにした

 家の前で写真撮ろう、と誰ともなくつぶやいた。母だったか、叔母さんだったか。
 お寺で祖父の7回忌供養、その後でお墓参りを終え、祖母の家に親戚一同戻ってきていた。
 福島の秋は雪は降らないまでも、東京よりもずっと肌寒い。おまけに雨の一日だった。祖母は「お父さんが泣いてるみたい」とうそぶいていた。
 その日のうちに僕と母などが東京に帰るため、その前に写真を撮っておこうとなるのは、まあ自然なこと。
 僕、社会人一年目の従弟、大学三年生の従妹が玄関の前に整列させられた。三人の並びはなんだか不思議な感じがしたが、同じ水源から流れてきたという血のつながりを思うと、この世界で、他にはないつながりだ。
 おばあちゃんも入りなよ、と撮影していた母が呼びかける。祖母も真ん中に加えて、撮り直した。体が小さくなり、髪の毛も真っ白になったその姿を捉えると、長生きしてほしいと願いたくなる。ひ孫を見せてあげられるか微妙な線だけど。
 小雨になって、鉛色の空を見るともなく眺める。水源から流れ着いてきた末の僕も、いつか、誰かと同じ空を見られたらいいかもなぁ。

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