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【あつ森】World's End Happy Birthday【0章 いつかお伽噺の王子様が】

あつ森ファンタジームービー『春はどこへ行った?』の続編『World's End Happy Birthday〜君に贈る物語〜』の原作版です。
映像版にない董子の短編です✨

時系列は、ワドハピの1年前と第2章のラストに当たります。

四季咲 董子は、お伽噺の王子様を夢見ていた。
董子の幼なじみ、桜庭 泉が語る、董子と王子様のおはなし。
※動画版と時間経過、一部展開が異なります。

YouTube映像版、3章の原作はこちらです✨


0章 いつかお伽噺の王子様が

1.
お伽噺の王子様なんて実在しない。

四季咲 董子(しきざき とーこ)の幼なじみである私、桜庭 泉(さくらば いずみ)は、そう思っていた。

董子が幼い頃からずっと待ち続けていたのに、17歳になる今まで、王子様は一向に現れなかったのだから。

四季咲 董子は、昔からほんわかした不思議な女の子で「私には前世の記憶があるんだよー。」って話していた。

董子が前世で助けてもらい、一緒に旅をした男の子「トーカ」。

お別れしてからも、ずっと「トーコ」のために絵を描き続けてくれた、その人のことが大好きなのだという。


「トーカは私にとって、王子様なんだよ!私の名前もトーカが名付けてくれたんだー。」って、
瞳をキラキラさせた董子に小さい頃から何度聞かされたことか。


それがいつになるかは分からないけれど、この島の美術館にある、画家「トーカ」の描いたオーロラの絵の前で再会できるらしい。


有名な画家「トーカ」は、魔法時代末期の謎の多い人物だった。

世界が長い冬になり、大混乱の時代だったからか、出生年月日も出自も不明。


まるで世界に恋するかのような、たくさんの優しい色の美しい風景画を遺し、今も人々に愛されている。

仮に前世というものが存在するのなら…大昔の世界を生きたトーカもまた、この世界に生まれ変わっているのかもしれない。

だけど…

董子の名前だって、実際には、董子のお姉さんの氷華さんが名付け親だと聞いた。

前世の記憶云々は、単にトーカの絵が好きな董子が、こうだったらいいなと夢見ているだけなのではないか…。

私は大きくなるにつれ、そう思うようになってしまったのだった。

2.

1年前、高校2年生の4月ー。始業式の朝のことだった。

桜が満開の通学路で、今朝も董子と待ち合わせていた。


「泉ちゃんおはよう!
2年生も同じクラスになれるといいね!」

「おはよう、董子。
また一緒になれたらいいよね。」

春休みに何をしたとか、どこへ行ったとか、学校に向かいながら喋っていると、

董子が急に、はっと後ろを振り返った。


桜並木の通学路を2人の少年が歩いていた。

うちの学校の制服だけど、見覚えがない。

手前の少年の美しさに目を奪われた。

春の朝日に煌めくさらさらの白い髪に、長い睫毛、涼やかなアイスグリーンの瞳。

空に輝く一等星が、目の前に落ちてきたかのようだった。

となりの茶髪がぴょんぴょん跳ねている男の子と兄弟なのだろうか、顔がとても良く似ている。

董子も隣で釘付けになっていた。大きな青い瞳が見開かれている。


2人は、立ち止まって見つめる私たちの数メートル横を、喋りながら通り過ぎて行った。

「トーカ…」

ちいさな声でそう呟くと、董子は地面にへたりこんだ。

「だ、大丈夫!?董子!」


「泉ちゃん!あれ、トーカだったよ!!
 やっと会えた……。
 すっごくかっこいい!!」

えっ、あれがトーコがずっと言っていた「トーカ」なの!?

あれは…確かに絵に描いたようなお伽噺の王子様だ…。

実在したんだ、王子様……。


私と董子は、2年生も無事同じクラスになれた。

そして、今朝の王子様は、私たちのクラスの転校生だった。


「天野 雪(あまの ゆき)です。
双子の弟の灯火と一緒に転校してきました。
よろしくお願いします。」

見た目通りの、涼やかで澄んだ声だった。

新しいクラスの子たちがその姿に見惚れる中、私だけが驚いていた。

えっ…!名前が違う!?

じゃあ、茶髪のほんわかした子の方が、董子の王子様のトーカなの!?


その日の始業式が終わった後のことだった。

「四季咲 董子さん、だよね。」

私と並んで廊下を歩いていた董子に、天野 雪が話しかけてきた。

「は、はい。」
突然すぎて、董子もびっくりしている。

天野 雪が董子の耳元でささやいた。
「四季咲さん。灯火のこと、よろしくね。」

それだけ言って、天野 雪は去って言った。

どうして…。今日が初対面のはずじゃ…。

前世に、王子様に、謎めく美しい転校生…。

御伽噺の世界が、私の前で現実になろうとしていた。


3.
あれから1年。

天野 灯火は、裏表のない、穏やかで物腰柔らかな男の子だった。

とても昔から董子と一緒にいたような、和やかであたたかな雰囲気。

子猫みたいに活発な董子を、いつも優しく見守っていた。


董子の親友の私も、董子の王子様と認めざるをえない。

側から見ても両想いなんだから、そろそろはっきり告白すればいいのに…!


対する兄の天野 雪は、初対面の王子様の印象とは違い、なんだか得体が知れなかった。

王子様というより魔王…みたいな。


こんなことを考えていたら、絶対零度の微笑みを浮かべて、真後ろに立っていそうで怖い…のでもうやめよう。


明日は董子の誕生日、私のプレゼントも喜んでくれるといいな。

天野 灯火は、一体何をプレゼントすることにしたんだろう。

想いのこもった、ロマンティックなものだといいな。

董子の王子様、ちゃんと董子をハッピーエンドに連れていってね。


第0章 いつか、お伽噺の王子様が おわり。
第3章 影と鳥籠 はこちらです✨



🌟読んでくださりありがとうございます🥰
ワドハピ初期案で登場を考えていた、董子の親友、泉ちゃん視点のお話でした。

初期案では、1章の氷華さんの「本当に董子のことが好きなの?」をこの子に言ってもらおうと思っていました。
泉=spring=春で、董子とは昔から仲のいい友達です。

🌟ワドハピYouTube版はこちらです✨

🌟共同制作 ゆりーなちゃん

🌟撮影&島提供協力 fumikaちゃん ちゅーぺっ島

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