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世界が広がっていく感じ

 一つのコンテンツを好きになると、世界ががあっと広がっていく感じが好きだ。
 TBSのラジオ『アフター6ジャンクション』で一時期『コンテンツライダーAmazon』というコーナーをやっていた。Amazon提供(協賛?)で、プライムビデオやAmazonミュージックに限らず、好きな「コンテンツ」について投稿していく。一つのコンテンツをきっかけに次への道が開ける、それを乗りこなしていく「コンテンツライダー」なのだ!
 これはまさに、本や映画を観ていると常に感じることである。芋づる式というのか数珠つなぎというのか、どんどんコンテンツが連鎖し好きなものが増えていくのだ。

 私は、去年まさに「コンテンツライダー」だった。きっかけはサンキュータツオ・春日太一『ボクたちのBL論』(河出書房新社)。去年落ち込んでいた時に手に取り、サンキュータツオが語るBLの面白さに俄然興味を惹かれた。これが果たしてどう転がったのか。読み終えてからしばらくすると、「そういえば知人が『BANANA FISH』がどうのと言ってたな」と思い出し、アマゾンプライムビデオで『BANANA FISH』を観た。射貫かれた。BLではなかったけれど、主人公2人(男子)の間にあるものはもう愛としか形容できなかった(ファンコミュニティではBLとした二次創作もたくさんある)。そして『BANANA FISH』が諸々の扉を開いたのである。

 まずはアニメ。アニメは殆ど観ていなかったのに、こんなに面白いものだったんだ!と開眼した。アニメを観たあとに原作も読みオフィシャルブックも購入し、アニメがどのように吉田秋生のマンガ『BANANA FISH』を演出していたのかを知る。映像、音楽、声優、全部が美しく組み合わさっている。それから監督の内海紘子の作品を全部観た。『SK-8』(スケボー少年の話)『Free!』(言わずとしれた水泳部の青春)。内海監督の描く男性像、男性同士の友情は本当に素晴らしい。それから、内海監督以外にも『ユーリ!!! on ICE』や『No.6』など怒涛のようにアニメを観始めた。もう止まらない。声優のラジオ(内田雄馬…『BANANA FISH』のアッシュ・リンクス役)だって聴いている。ファンクラブ入りたい。想像できなかったアニメ漬けの日々だ。

 そしてアメリカ文学。アニメ『BANANA FISH』の各エピソードにはアメリカ文学から取ったタイトルがつけられている。作中で言及されている作品はじめ、フィッツジェラルドやサリンジャーの作品がタイトルになっているのだ。これが大変格好良い。アメリカ文学はさして好きじゃないと思っていたのに、『BANANA FISH』が終わったのが哀しいあまり、関連するのはなんでも読もうという気になった。やっぱりそれほど好きにならなかったが、フィッツジェラルドの『氷の宮殿』が良かった。それから、『BANANAFISH』とは関係ないが『グレート・ギャツビー』の映画(バズ・ラーマン監督版)を観た。これが語り手の男性ニックとギャツビーの間に恋愛感情があったと読めるような翻案がされており、また良かった。というか、私が男性同士の恋愛や友情にやたらフォーカスするようになったのかもしれない。

 そう、友情・恋愛(特に男性同士の)である。もっといえばBLである。『BANANA FISH』は、これぞ自分が求めていたラブストーリーだ!と思ったからだ。その理由は別に書くとして、とにかく恋愛….というか「ソウルメイト」的な関係に強く惹かれるのだと分かった。そして、吉田秋生のマンガにはほぼその要素がある。当然、吉田秋生作品にハマる。
 そして今、私のなかでは三浦しをんブームである。どう三浦しをんに行き着いたかというと、溝口彰子『BL進化論』(大変面白かった)を読み、確かそこで引用されていた三浦しをんのエッセイを読んだ。エッセイがとにかく面白い。そして三浦しをんはマンガ好きである。BLのことも語るし、小説にも要素がある(『格闘する者に〇』の谷沢を参照)。エッセイを読んでいるとマンガを読みたくてたまらなくなり、初めて「まんだらけ」に足を踏み入れた。

….サンキュータツオに始まり、「まんだらけ」にたどり着いた。サンキュータツオ→内海紘子→フィッツジェラルド→吉田秋生→溝口彰子→三浦しをん。ライディングしまくりである。ぐいぐいと引き寄せられている気がする。
3年前、私の頭の中はゴシックとヴァンパイアでいっぱいだった。それが、去年を境に急速にアニメへと舵を切っている。自分のことだが、面白いな~と思う。ゴシックへの興味を失ったわけではない。むしろ、興味の幅が広がりどんどん面白くなっていくのだ。
そして、好きになったことで世界の見え方が変わる。泣くほど一つのアニメシリーズを好きになる人に会ったことなんてなかったし、ツイッターひとつ見ても、自分が知らないだけでこんなに盛り上がっていたのかと驚いた。ローソンとBANANA FISHのコラボのときなんてお祭り騒ぎだった。興味がないと気が付きすらしない。当たり前のことを体験したとき、あまりの広さに恐れ入った。
 こんなことで2000字近くも書いてしまった。いつ何を好きになるか分からない。これを読んでいるあなたも『BANANA FISH』にハマるかもしれないし(そうだと嬉しい)ボードゲームに凝り出すかもしれないし、バンド・デシネを買い漁るかもしれない。沼の入り口なんて一歩先にある。コンテンツライダーは本当に面白くて仕方ないのだ。

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