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仄かな明かり


明日はどんな日になるかな、生きていたいと思う自分が明日にいるからご飯が美味しいんだ。祈り方を忘れた人間たちは、電車の中吊り広告を眺めながら、プラットフォームを超えていく。照らされる、線より内側でお待ちください。今日と明日との曖昧な境界線。帰った家には窓がないから、いつ今日が明日になるのか分からない。見えない月はくるくる回り、太陽はどこかで命を焚いている。洞穴で生きていた系人類の僕らは、見えない光を占って信じるよりも、篝火を作ることにした。神様はお空にいるんじゃなくって、僕らのことだとさ。それから歩き方も忘れて、祈り方も忘れて、何もない。だんだん人間はおさなごに帰っていくし、最後は命になって、煙になる。泣いてしまった小学生のあの日。月は丸くて大きくて、暗い夜は月を支えていた、遠くへ行ってしまうような、どこにも僕は行けないし、月もどこにもいかない、揺るがない万有引力、月が落とす白いカーテンは、僕が泣いている車に落ちて、さらさらと瞼を撫でた。光だよ、生きるために必要なのは。発光する月は、囁き、裏側に隠しているしんじつ(信じられること)の端を僕に見せた。見えないことは不在ではなく、見えていないから在る。そして僕は明日への境界をまたいで、赤く腫れた目を閉じた。


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