スケッチ

広い美術館
青い海の前に
提げられた
一枚の絵画
筆はいつか
のたうちまわり
黒いつぶてが
キャンバスに食い込んでいる
一枚の柳
川面に反射する
柳から下げられた腕
水面を飛び回る光
筆だけが知っていた
画家さえもわからない
自然を描くということは
森の中の
ある生命に対しては
目を開いて
ある生命に対しては
目を閉じることだ
暗い闇の中を
進む蛇
鋭い牙の
奥のはらわたに
いなくなったものは何か
胎動を描かなければならない
画家は黒く
キャンバスを塗りつぶした

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