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広島風お好み焼きが心から大好きだ

広島風のお好み焼きが好きです。もはや愛おしい。もし僕が一軒家を買うなら広島風のお好み焼き屋さんがある街にしたい。キャベツが甘くて、薄焼きの卵にソースがこってりとしていて、うどんもおそばももっちりしていて、それはもう美味しい。

それに食べる前ですら、もはや美味しい。
目の前の鉄板の上でくるくると、お好み焼きが作られているのを見ているだけで、それは一つのエンターテイメントです。目で楽しむだけじゃなくて、香りでも楽しめる。これが巷で噂の4DXってやつですよね。しかも問答無用のS席です。僕のためだけに僕のためのお好み焼きを店員さんが目の前で専属で焼いてくれる。これはもう食べることの最上の行いなのではないかと思うわけです。ああ、広島風お好み焼き。と思いながら、じっくりとヘラがすっすと鉄板の上で流れるのに見惚れている。
「ねえ、そこのね。そばとうどんがどっちも入ってるやつね。僕のお好み焼きなんですよ。心なしか、キャベツも盛りが良いような気がしませんかねえ」なんて自慢をしたくなるものです。入学式では我が子が一番可愛く見えますもの。それと原理は一緒だとね思うんです。

はあ、広島風お好み焼き。それはもはや食べる芸術。
まあるくクレープのように焼いたモチモチの生地の上にキャベツがどっさりどっさりと(あら、あらいいんですかそんなに、ねえ)積まれ、お好みの具を乗せていく。何を乗せるのがいいか?それはお好み焼きですから、お好みです。スタンダードに豚の旨味、ピリリと明太子、さっぱりしそ、海のほくほく海老にホタテ。個人的にはおもちを忍ばせておくと、記事を割って頬張った時になんだかお得感があっていいです。

さあここからが見所ですよ、鉄板から目を逸らさないでくださいね。あらお客さん、身を乗り出しすぎて椅子からお尻が浮いちゃってますよ。いや御気持ちはとってもよく分かります。もう見るだけで美味しいんですから、仕方ないです。え、私も乗り出しすぎですって?いやはやそれは失敬。

うどんが鉄板にさっと流れ込んできます。麺は蒸し麺の場合と茹で麺の場合がありますね。どっちも違う美味しさがある。どっちもとても美味しい。僕は茹でのうどんの方が少しだけ好きかな。麺用のソースを絡めて炒めていきます。ここまでの麺単品でメインに匹敵する食べ物力を誇ります。多分ですよ、僕思うんですけど、広島風お好み焼きの中のうどん一本で飲食店を経営することはできます。僕には分かります、今この鉄板の前で確信しました。もうここから手を伸ばしてそのうどんをですね、食べたいですものね。しかし末恐ろしいことに、それはお好み焼きという全体のごくごく一部でしかないと、なんと、すごいことですねそれは。どうなってしまうんですかね。はあーそれはそれは、なんて考えていると今度はおそばが流れ込んできます。僕は、お店が許すなら、そばもうどんもどっちも1玉入れてもらう「ちゃんぽん」(ミックスとも)にしてもらうことにしています。なんでかですって?どっちも美味しいからです。

さあ、もう後半に差し掛かります。卵がやってきました。鉄板で焼く卵が美味しくないわけがない。自明の理。ヘラを使ってくるりとまあるく卵を焼く。そして、その上に、ここまで重ねてきた、生地にキャベツにネタに、うどんに、そばを乗っけるんです!合体です!個々でも、美味しいものが、ついに合わさってしまった。どうなるんだ。どうなってしまうんだ!お客さんは完全に鉄板に身を乗り出しています、こちら頭上のカメラからの映像です、ああ、これはもう肩まで鉄板に入ってます、オフサイド。もうお好み焼きのネタになる寸前。さあ、客席のボルテージも最高潮のところで、本日のハイライト、お客さんに渡されるヘラよりもひと回り大きな、ヘラ(お好み焼きを焼きし者しか持つことのできないという…)を、生地の下に滑り込ませて、「くるん」とひっくり返します。返りました!成功です!キャベツが少し鉄板に散るのはご愛嬌です。それだけたっぷりのキャベツが入っている証明なのですから。さあ、どうぞと言われるかと思いきや、最後の仕上げが待っています。もう少し座って、待っていてくださいね。待ちきれない気持ちは分かりますが、待った方がですね、絶対にいいです。あ、頰にキャベツついてますよ。熱くなかったですか?

仕上げをしましょう。刷毛でたっぷりとソースをお好み焼きに塗ります。これはファンデーションですね。いやファンデーションにしては相当の厚化粧ですか。しかしお好み焼き界ではですねそのほうがもっぱらモテるらしい。ソースは「おたふく」と「カープ」が二大勢力ですかね。ぽってり甘めのおたふくはよく使われていますが、カープソースはそれよりもっと酸味とコクが強いソースですね。どっちが美味しいですかって?どっちも美味しいに決まってます。
そして、青海苔をその上にふぁささとかけて、これはチークですね。鰹節をふふふと降らせて。はい。完成です。最後だけ雑ですって?早く食べたいんですよ。はい、これヘラです。

ここでやっと、ずいっとお好み焼きが目の前に差し出される「はい、どうぞ」と。嬉しい。料理を出されただけなのに。そうです、お好み焼きが作られている時には、僕たちは観客でしかなかった。でも、最後に差し出されて、さあ、あなたが食べることでこの芸術が完成するのです、と言わんばかりに。おやっさん、分かりました。あなたの気持ちは、この僕が引き継ぎます。ここまでじっくりとですね、見させてもらいました。もう任せてください。もう間接的にですね、鉄板を介してですね、おやっさん、いや師匠と呼ばせてください、僕らはですね師弟関係だと思うんです。鉄板を介した絆がですね…さあ、へらで切り分けたお好み焼きを箸で少し崩して、ソースを、かけます。追い、ソースです。そして、マヨネーズ!細く白い線で、とろりとしたソースの上に、まろやかな白いソースをかけて、これで完成です。師匠!どうですか!ああ、師匠は、笑っていらっしゃる!鉄板の向こうで!ああ、ああ、それではいただきます。

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