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少子高齢化・人口減少とローカルビジネスの関係性と成功事例

今月は、ローカル発ビジネスの成功例をテーマに考えます。

前回は、地元三重県四日市市のビジネスについて考え、少子高齢化 / 人口減少が地方ビジネスの課題となっていることが分かりました。

今回は、少子高齢化 / 人口減少という課題を起点に、ローカルのビジネスについて考えたいと思います。

1. 少子高齢化 / 人口減少とビジネスの関係

私たちが日常生活を送るために必要な様々なサービスは、一定の人口規模のうえに成り立っています。それは、地域に住む人の数が、消費者数(マーケット)や労働者数に繋がるからです。

もちろん、その数はビジネスによって異なります。
下の表は、人口規模とサービスの種類の分布図です。

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人口規模とサービス施設の立地(三大都市圏を除く)

一番上の小売をみてみると、日々の生活に関わる飲食小売業は、人口が少ない地域でもビジネスが成り立ちますが、ペットショップや外車のディーラーなど、購入する機会が少ない小売業は、ある程度の人口規模がなければ成り立ちません

図の全体を見てみると、人口規模が小さく、左側になればなるほど、サービスが少なく、人口規模が大きく、右側になればなるほど、サービスは多いことが分かります。

この地域のサービス(利便性)は、インターネットショッピングやテレワークが普及してもなお、重要視されています。

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20代 住みたい環境

つまり、人口が減少→サービスが減る→利便性を求める人々は他の地域へ移住→さらに人口が減少するという悪循環が起こります。

その他にも、
・税収減による行政サービス水準の低下
・地域公共交通の撤退・縮小
・空き家、空き店舗、工場跡地、耕作放棄地等の増加
・地域コミュニティの機能低下
など様々な問題が起きていきます。

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人口減少の悪循環のイメージ図

このような、悪循環から地域が回復していくために、どのようなビジネスができるのでしょうか。

2. 少子高齢化 / 人口減少でも成功しているローカルビジネス

ここでは、少子高齢化 / 人口減少が起こす、悪循環から回復しているローカル発ビジネスについてご紹介します。

① 急傾斜地を整備、シニア層でも働きやすいみかん農家「農業法人かねひろ」/ 佐賀県太良町

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肥前グローカル株式会社

佐賀県の西南端に位置する太良町は、ミカンの栽培が盛んで、県内有数の産地でした。しかし、ミカンの消費の減少や価格低下などにより、ミカン産業は低迷。それに加えて、少子高齢化による「後継者不足」が深刻な問題となっています。そこで、町では長期的視点からこの問題に取り組むことを決め、目標とすべき戦略人口を設定。また「農地基盤整備事業」を始め、みかん農地のある急傾斜地をなだらかに整備し、収穫しやすい畑に作り変えて、高齢になっても働けるように改良しました。整備は、国や県の予算で行われることが多いのですが、それを待っていては間に合わないので、町独自で制度を作り、スタート。今では70代、80代のベテラン女性13人が、ミカンの摘果や収穫の作業を担っています。2015年9月からは、町がふるさと納税にお礼の品を導入し、またたく間にその味のよさが口コミで評判を呼び「ふるさとチョイス」お礼の品・果物類部門全国1位を3年連続で獲得。それまで赤字だった経営も黒字に転換し、太良町の大きな収入源となっています
【地域活性化】少子高齢化の進む町が長期的視点で対応

戦略設定→農地整備→シニアの活用→商品の製造→ふるさと納税の販路開拓→注文増加→「もっと畑を広げよう」→農業振興→特産品のブランド力向上→税収増加と好循環を生み出している成功事例です。

この事例で注目すべき点は、
・町の目標とする戦略人口を設定
・高齢化している町のシニア層の活用
町自らで農地の整備
をしていることだと思います。

少子高齢化 / 人口減少の現状から、どれくらいの人口になればよいかという目標を戦略的に設定し、現状町にいるシニア層を活用できるように、働ける土壌を早急に整備し、今できる範囲でビジネスを始めて成長したことにより、利益が子育て支援に充てられたり、若手就農者の呼び込みに繋がったりしています。

少子高齢化 / 人口減少の課題を抱える地域は、まずどれくらいの人口になれば良いかという戦略人口を設定することから始め、その上で、今あるリソースでできるビジネスを考え、スモールスタートでも実行していくということが必要であると分かりました。

② 外から集める、新たな商店街「油津商店街」 / 宮崎県日南市

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油津商店街

古いものを変えようではなく、新しい空気をどんどん商店街の中に送り込んでいこうと、ITベンチャー、宿泊施設、飲食店など4年間で29店舗を誘致しました。そして、100人規模の雇用を生み出し、「地元で働きたいけれども都会に出ざるを得ない」と思っていた方々に、地元で働ける環境をつくりました。100人が新しく商店街で働くことによって、新しいニーズが生まれ、商店街のど真ん中に保育園ができ、他にも、そのオフィスで働く若者がお昼を食べるための飲食店など、新たな消費が生まれています。「商店街の再生」というと「昔の商店街の復元」を期待していた方々が多かったからこそ、「これは再生ではない」と思っている人もたくさんいらっしゃいます。しかし、私たちとしては、今のマーケットニーズに合うテナントを誘致して、地域の経済が持続的に回っていくようにしなければ、かえって地元の皆さんをがっかりさせかねません。
「危機感」と「応援」がシャッター商店街を変えた。宮崎県日南市 油津商店街の再生物語

企業を外から誘致→雇用を生み出す→若者が地域に残る→生活する人が増加しマーケットができる→新たなビジネスの創出と好循環を生み出している成功事例です。

この事例で注目すべき点は、
町を客観的に見て、どんなマーケットからニーズがあるかを把握
・企業の誘致
地元で働ける環境を整える
をしていることだと思います。

そして最も成功しているのは、商店街が再生されたことではなく、若者が地元で働けるようになったことです。

前回の記事でも記載したとおり、地元で働きたいと思う若者は増加傾向にあります。しかし地元に働く環境がないため、地元から出ざるを得ないという現状があります。

少子高齢化 / 人口減少の課題を抱える地域は、まず町にどのような魅力があるのか、どんな会社からニーズがあるかを客観的に考えること、そしてニーズに対してアプローチ、誘致を行い新たな雇用を生み出すことが必要であると分かりました。

まとめ

今回は、少子高齢化 / 人口減少の課題を起点として、
1. 少子高齢化 / 人口減少は、ビジネスにどのように影響を及ぼすのか
2. 少子高齢化 / 人口減少でも成功しているビジネスモデル
について考えました。

人口が減少することで、サービスも減少し、他地域への人口流出を引き起こし、さらに人口が減少するという悪循環を引き起こす。

しかし、町にいるシニア層が働きやすい環境を整えることでビジネスを成長させたり、町のニーズを考え、外から企業を誘致することで新たな雇用を生み出すことができたり、様々なビジネスモデルがあると分かりました。

次回は、東京一極集中の課題と地方分散型への取り組み、ビジネスについて考えたいと思います。

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