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第十章:小人村は大騒ぎ!?12 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

つまり、マボのわずかなのぞみは完全に絶たれたのでした。ですが、マボはキッチュの助けもなしにトロルとの対面にのぞむことなど考えたくないことでした。マボは「きっと、キッチュに僕の声が届いているよ、明日にはきっと来てくれるはずだ」そう自分に言い聞かせました。そして、なかなか寝付けずに何度も寝返りをうっていましたが、いつのまにか眠ったのでした。

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次の日の早朝、楽しげに小鳥がおはようの歌を外で歌い始めました。マボが目を覚ますと、ベットの横に誰かがいる気配がします。マボは思わず、キッチュが来てくれたのかと思って飛び起きました。しかし、そこにいたのはチャッピでした。チャッピはマボに憧れをいだき、少しでも長く妖精の騎士を見ようと思って、じっと見つめていたのです。

「マボさん、おはよう! 良く眠れたかい?」
「う、うん…」
マボは目をこすりながら、がっかりしつつ言いました。
「どうしたの、元気がないみたい?」
「だ、大丈夫だよ…」
マボは本当に小さい声で言いました。
「ねえ、マボさん。一つ質問があるんだけれど…聞いてもいい」
マボがうなずきます。
「妖精の騎士は、白いカイトだとか、鷹の目のレリアスとか、金剛力のシーボットだとか、みんなそれぞれ呼ばれているよね。マボさんは何て呼ばれているの…?」
マボはまだ完全に目を覚ましていませんでした。思わず自宅の裏にある樫の木が頭に浮かんだので、あまり考えずに答えました。
「僕はね…樫の木庵のマボだよ」
「樫の木庵のマボか…かっこいいなあ!」
チャッピはそういうと屋根裏部屋の階段をさっとおりて、下にいる家族にこのことを伝えたのです。

すると、下からこんな会話が聞こえてきます。
「樫の木庵のマボか、強そうな名前だねえ」
「ええ、そうですとも、きっと悪いトロル兄弟なんて、あっというまにやっつけてしまうでしょうねえ」
「そうだとも、おそらく右手一本あれば十分じゃないかな!?」
「いやいや、人差し指でちょちょいのちょいだよ!」
「ひょっとしたらマボさんがひとにらみしたら、トロルも逃げ出しちゃうかもね!?」
「うーん、とにかく、マボさんに任せておけば、ミィちゃんも安心だね!」
「そうですよ、私たちはこの日を樫の木庵のマボの日にするように長老に頼まないといけないですね!」
「本当にねえ。マボさんのおかげで、小人村も平和が訪れるねえ」
マボはこれを聞いて、さらに心に重たい石がドスンと落ちるような気持になったのでした。マボはよろよろと階段を下りました。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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